東京への流入人口が再び増加…コロナ禍で進んだ「テレワークをして地方で暮らす」はどうなったのか? | FRIDAYデジタル

東京への流入人口が再び増加…コロナ禍で進んだ「テレワークをして地方で暮らす」はどうなったのか?

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「リモートワーク」⇒「地方移住」…そんな単純な話じゃなかった

コロナ禍でテレワークが進み、東京から地方へ転出する人が増えたと言われているが…。

「コロナ禍のときも東京で転出超過になったのは2021年だけで、それ以外はずっと東京への転入超過が続いています。これからもリモートワークによって、東京圏の一極集中が解消するということには、私はちょっと懐疑的です」

こう言うのは、中央大学経済学部准教授の松浦司先生。

政府は昨年12月、5ヵ年総合戦略として「デジタル田園都市国家構想」を策定し、2027年度までに東京圏から地方へ移住する人を1万人とする目標を定めたが…(写真:アフロ)
政府は昨年12月、5ヵ年総合戦略として「デジタル田園都市国家構想」を策定し、2027年度までに東京圏から地方へ移住する人を1万人とする目標を定めたが…(写真:アフロ)

総務省統計局の「基本台帳人口移動報告 2021年」と「同報告 2022年」によると、東京23区から区外や他県へ転出する人が転入してきた人より1万4828人多かった。これで東京一極集中は解消するのかと思ったが、2022年は一転して、転入超過。23区には2万1420人が転入し、全国でいちばん転入超過数が多くなっている。

2022年に転入超過となっているのは、東京都、大阪府、福岡県などの11都府県。東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)に至っては、9万9519人の転入超過となり、2021年より1万7820人増えている。

現在でもリモートワークを推奨している企業も多いと聞くが、

「リモートワークが可能な企業も都市に集中しています。それに地方移住といっても、その土地になじめるかどうかという問題もあります」

実際、福井県池田町では広報誌に「池田暮らしの七か条」というものが掲載され、そこには「今までの自己価値観を押し付けないこと」「プライバシーが無いと感じるお節介があること、また多くの人々の注目と品定めがなされていることを自覚してください」などが書かれ、SNSで話題となった。

自然の中で伸び伸び暮らせると思ったら、雪下ろしがたいへんだったり、離島に移住すると、生活必需品が船で運ばれてくるため、その分価格が高くなり、「予想以上に物価が高い。これでは暮らせない」という声もある。

テレワークの廃止や削減を決めた企業も増えてきた
テレワークの廃止や削減を決めた企業も増えてきた

就職⇒結婚⇒子どもを産むもの…20代女性に立ちはだかる地方の「多様な生き方を認めない」現実 

松浦司先生は転入者の年齢にも注目している。 

「女性では2000年以降、15~19歳はほとんど変化がありませんが、20~24歳の転入超過数が増えています。それ以前は10代後半が東京圏に転入超過だったのですが、20~24歳は転出していました。 

これは、東京圏の大学に進んでも、就職は地元に帰っていることを示していますが、最近は大学を卒業して、そのまま東京圏で就職する、あるいは地方の大学を卒業して東京圏に就職することを意味しています」

20代の中でも、男性より女性が東京に残る割合が多いのだとか。実際、コロナ禍で転出超過になった2021年も女性は6777人の転入超過だった。

「その理由として考えられるのは、やりたい仕事が地方では見つからないということが一つ。また、最近はさかんに“多様性”と言われていますが、地方ではまだ就職したら、結婚し、子どもを産むものだという考え方が残っているところもあります。 

多様な生き方を認めるのは大事なことですが、価値観が急激に変わるのはむずかしいと思います」 

今しきりに少子化対策が言われているが、女性の負担感をなんとかしないと、出生率は上がらないし、結婚したいという人も減ってしまう。事実、松浦先生の調査によると、結婚したことが幸福度に与えるプラスの効果は女性の方が男性よりも低いとか。

コロナ禍2年目の転入超過数を男女別にみると、男性は1344人の転出超過に転じたが、女性は6777人の転入超過だった(グローバル都市不動産研究所のプレスリリースより)
コロナ禍2年目の転入超過数を男女別にみると、男性は1344人の転出超過に転じたが、女性は6777人の転入超過だった(グローバル都市不動産研究所のプレスリリースより)

政府は昨年12月、5ヵ年総合戦略として「デジタル田園都市国家構想」を策定し、2027年度までに東京圏から地方へ移住する人を1万人とする目標を定めた。リモートワークするための「サテライトオフィス」も全国で増やす方針だ。しかし、

「コロナ禍でリモートワークが続いた結果、顔を合わせることの重要性も再認識されました。実際、私が勤めている大学も、今は原則的にはすべての授業が対面で行われる方針になっています。対面でなければできない仕事も多く、政府の方針がどこまで実現可能か疑問です」

松浦司 中央大学経済学部准教授。専門は人口経済学。甲南大学経済学部非常勤講師、京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター研究員を経て現職。高齢者の単身世帯化が貧困と幸福度に与える影響、子ども数が夫婦の幸福に与える効果の理論・計量分析などを研究。著書に『現代人口経済学』(日本評論社)、『SDGsの人口学』(原書房)など。

  • 取材・文中川いづみ

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