「夢はスポーツキャスター」引退発表の山本美憂 本誌が撮っていた「女子高生レスラー時代写真」

３月６日、『RIZIN.42』（５月６日東京・有明アリーナ）の対戦カード発表記者会見が都内で行われ、現RIZINスーパーアトム級王者・伊澤星花（フリー）と山本美憂（48・KRAZY BEE/SPIKE22）の対戦が決定した。コメントを求められた山本は、

「今回の試合でRIZIN、MMAを最後にしようと思っています。自分はレスリングの頃から気持ちで戦ってきたので、100%打ち込める時でないと試合に出ないというのが自分のルールでした。今回MMAの現役で戦っていく気持ちがもう100%の情熱がないと感じられたので、今回で最後にしようと思いました」

と引退を表明した。山本は2016年に女子レスリング競技でリオ五輪出場が叶わなかったことを機に総合格闘家へ転向。

「当時42歳での総合格闘家デビューは、女子レスリング界のレジェンドである山本でも無謀と言われました。初戦、２戦と一本負けを喫し、やはり年齢的に無理かと言われましたが、そこから５勝１敗とトップ戦線で結果を残してきました。最終戦を残して６勝７敗ですが年齢を考えると驚異的な勝率と言っていいでしょう。若い選手にも大いに影響を与えました」（格闘技雑誌編集者）

最後の試合を戦う伊澤は、

「大好きな山本美憂選手の引退試合の相手として選んでいただいて、本当に嬉しく思います。山本美憂選手と山本“KID”選手は凄く仲が良くて、私も弟の風我がいてすごく憧れていた選手です。そんな選手と最後の試合ができることは本当に嬉しいので、山本選手の格闘技人生の中で一番最高の試合を一緒に作っていきたいと思います」

と涙を流しながら2018年に41歳の若さで亡くなった山本の弟・山本“KID”徳郁さんの名前を出して、健闘を誓った。

13歳で全日本選手権優勝　17歳で世界選手権史上最年少優勝（1991年９月13日号）

ミュンヘン五輪で７位という結果を残した、日本体育大学名誉教授の山本郁榮氏（56、当時）から幼少の頃より英才教育を受けた山本は、13歳で出場した『第１回全日本女子選手権』に優勝。その後、全日本４連覇を達成したが、世界選手権へは年齢制限を理由に出場できなかった。そして、17歳になって初めて出場した世界選手権で史上最年少優勝を果たす。『FRIDAY』は当時の決勝戦を取材。優勝後のインタビューを行っていた。山本は、

「表彰式の時は、なんとか世界のトップに立ったという感じで、君が代と日の丸で余計に涙が出ちゃいました」

と喜びを爆発させた。マット上では世界に敵なしの山本だが、素顔は17歳の女の子。試合にのぞむ前は持ち込んだネコのぬいぐるみにキスをして、カメの彫り物を触ってからマットに上がるという。その理由は、

「中２の時、このぬいぐるみを買い、試合に持っていったら全部勝てたから」

だそうで、カメの彫り物に触るのはチームの「守り神」だから。この１ヵ月後には両親からの優勝プレゼントとして１年間のアメリカ留学が決まっていた。

「レスリングだけでなく、いろんな勉強がしたいんです。そして、世界選手権を何回も勝ち続けて、オリンピックでも金メダルを取りたいと思っています」

そう夢を語ってくれた山本だが、将来の夢を尋ねると意外な答えが返ってきた。

「スポーツキャスターになること」

17歳の大いなる好奇心はとどまるところを知らなかった。

その後、世界選手権連覇を果たすもオリンピック出場はならなかった山本。次なる夢は、スポーツキャスターか、それとも、後進の育成か。いずれにしろ５月６日の引退試合では、是非とも有終の美を飾ってほしい。