「治療を受けたら出っ歯になった」有名歯科クリニック デンタルオフィスXの宣伝に利用された芸能人 | FRIDAYデジタル

「治療を受けたら出っ歯になった」有名歯科クリニック デンタルオフィスXの宣伝に利用された芸能人

患者153人が損害賠償2億円を求めて提訴

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デンタルオフィスXのマウスピース矯正で、「噛み合わせが悪くなった上、出っ歯にもなった」と語る上野さん
デンタルオフィスXのマウスピース矯正で、「噛み合わせが悪くなった上、出っ歯にもなった」と語る上野さん

「上顎の骨が左にズレてしまって、奥歯が噛み合わず、口も上手く閉じられなくなりました。私は新婚なんですが、結婚式も挙げられていません。こんな歯並びで一生残る写真は撮りたくないので……」

全国に4店舗を展開する歯科クリニック「デンタルオフィスX」(以下・X)を相手に、今年1月26日、患者153人が約2億円の損害賠償を求める集団訴訟を起こした。冒頭のように嘆く上野由香里さん(仮名・30代)は、その原告団の一人だ。

Xは「マウスピース矯正の『モニター』になれば治療費が実質無料」と謳い、SNSを通じて多数の患者を集めたが、実態はまったく違うものだったという。

「医療ローンを組み、毎月その返済額と同額をモニター報酬として振り込むというのが『実質無料』の仕組みでした。幼い頃から歯並びに悩んできた私は、この話に乗ってしまった。187万円のローンを2年半払いで組み、’21年7月にXの銀座院で治療を開始しました」(上野さん)

しかし、モニター報酬の支払いは、わずか8ヵ月で停止。昨年10月からは診療の予約も取れなくなり、今年1月には銀座院が閉院した。上野さんが続ける。

「矯正開始直後から、噛み合わせの不具合を訴えていましたが、Xでは歯科衛生士が対応するだけで歯科医は一度も診てくれなかった。不信感が募り、別の歯科医院で診てもらったところ、矯正前より出っ歯になっていることもわかりました」

新たな治療を受けたいが、「Xから返金がない現状では経済的に厳しい」と上野さんは語る。彼女のように、健康被害が出た患者は数多くいるという。

Xが多くのモニターを集められた背景には、「実質無料」以外のカラクリもあるようだ。原告団の別の患者が明かす。

「モニターへの参加を勧めてきた営業担当者は、『Xで治療を統括するのはI先生というスゴ腕の歯科医。患者には芸能人も多い』などと言いながら、I医師が撮ったタレントの熊田曜子さんや森下悠里さんとのツーショット画像を見せてきました。他の患者にも同じ誘い方をしており、『芸能人御用達なら』とモニターになってしまった人は少なくありません」

本誌が確認したところ、確かに森下はブログにI医師との写真をあげており、熊田もSNSに「#I先生」などとハッシュタグをつけた投稿をしている。また、I医師が関わる別のクリニックのSNSには、森下からX銀座院に届いた祝花や、熊田とのツーショットがアップされている。これらの写真が、Xの宣伝に利用されていたようだ。

本誌が熊田、森下の所属事務所に取材を申し込んだところ、それぞれ次のような回答があった。

「熊田氏が『デンタルオフィスX』もしくはI氏から宣伝を依頼されたことはありません。仮に肖像等が無断使用され患者集めに利用されていたとすれば、パブリシティ権侵害等に基づき法的措置を講ずる所存です」(熊田の代理人弁護士)

「昔から知っているI医師が新しい歯科医院(X銀座院)を開業すると聞き、祝花を出したそうです。宣伝ということではなく、お金ももらっていません」(森下の所属事務所代表)

一方、Xの運営会社は代理人を通じて本誌の取材にこう回答した。

「モニター顧客と締結した責任のある契約については支払い、疑義のある契約については今後慎重に対応を検討していく方針です。タレントについては、I医師によるものと思われますが、内容を全く把握しておりません。(運営会社として)タレント等有名人に(宣伝を)依頼した事実はありません」

原告側の代理人を務める加藤・浅川法律事務所の加藤博太郎弁護士は、「被害者は全体で1500人以上、被害総額は20億円以上に上る」と語る。民事だけでなく、近く刑事告訴にも踏み切る構えだ。

「調査の中で、X側が早い段階から経営破綻を認識しながらモニターを集め続けていた実態が浮かび上がってきた。詐欺および特定商取引法違反など、刑事的責任を問われるべき事案と判断しました」(加藤弁護士)

被害を受けた患者が、歯を見せて笑える日はいつになるのだろうか。

上野さんが交わした「モニター」の契約書。2年半で返済の予定で、187万円の医療ローンを組まされた
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集団訴訟の会見を開く患者と代理人弁護士。原告団は153人だが、全国にはさらに被害者がいるという
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SNSに投稿されたXの看板医師・I医師と熊田曜子のツーショット写真。これが患者集めに利用されていた
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自身のインスタグラムでマウスピース矯正を勧めていた森下悠里。この投稿も、Xの宣伝に利用されていた
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『FRIDAY』2023年3月17日号より

  • PHOTO結束武郎(上野さん) 共同通信社(集団訴訟の会見)

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