<figure id="attachment_299088" aria-describedby="caption-attachment-299088" style="width: 400px" class="wp-caption aligncenter"><a href="#" data-ident_hash="6c817dd9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/3d0e7aa61e70ebdac34e2e3eb4a440af.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299088" class="wp-caption-text">ツイッターで「手押し　野菜」と検索すると大量の投稿がヒット。直接取引で大麻を売買するという意味だ（写真は一部加工しています）</figcaption></figure>
「俺はただの売人。もちろん現役(ヤクザ)ともズブズブだけど、俺はスジを通せない半端な人間だから……。だから、こうして電話で話していて……」
電話口の声は時々上ずり、よれた。「ちょっと今、大麻でキマっちゃってて」と、悪びれる素振りもなく筆者との通話に応じる男性は、麻薬密売グループの一員だと明かす。通話の最中に、不自然なタイミングで「ひひっ」と乾いた笑い声を上げるーー。
いわゆる「ルフィグループ」による特殊詐欺グループを皮切りに連日、犯罪組織に関与する「闇バイト」の実態が報道されている。ターゲットに電話をかけて巧妙に個人情報を引き出す「かけ子」、現金やキャッシュカードを騙し取る「受け子」、強盗に押し入る「タタキ」など、高額な報酬をエサに、一般人に犯罪の片棒を担がせる闇バイトは枚挙に暇がない。
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闇バイトは麻薬の受け取りや運び、購入者の斡旋などにも及んでいる。冒頭のX氏(30代)も、麻薬密売グループの一員として闇バイトを募集しながら、自身でもブツを捌き、売人として生計を立てている。
強盗などの闇バイトがSNSで募集されていたのは既報の通りだが、これは麻薬関連も同じ。例えば、ツイッターで「手押し 野菜」と検索すると、大量の関連ツイートが見つかる。「手押し」とは「売人と直接取引すること」、「野菜」は「大麻」の隠語だ。つまり「手押し 野菜」は「手渡しで大麻を販売する」という意味。ちなみに大麻の見た目がブロッコリーに似ていることから、ブロッコリーの絵文字が使われることもある。
こうした売買のツイートに混じって、売り手や運び手を募集するツイートも散見される。「月100」「単発300」など、3桁万円単位の高額な報酬が用意されているようだ。
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当事者とのやり取りはツイッターのDMではなく、「テレグラム」というチャットアプリを使用するよう指示されることが多い。「ルフィ事件」の報道で存在を知った人も多いだろうが、テレグラムは秘匿性が高く、運営すらメッセージのやりとりを見ることができず、自動的に履歴を削除できる機能も備わっている。SNSで人員を募り、それ以降の個別なやりとりはテレグラムで行うというのが一般的になっている。
筆者は麻薬関連の闇バイト募集者数人にメッセージを送った。取材に応じたのが、電話越しにも薬物を摂取しているのがわかったX氏(30代・仮名)だった。取材時は土曜深夜で「今日は盛況でしたね」とご満悦の様子だった。
X氏が麻薬の売人を始めたのは、中学を卒業した直後からだという。時折、だらしない笑い声を上げながらこう語った。
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「中学の世話になってる先輩がヤクザと繋がっていて、その流れで高校生の頃から大麻を捌いてた。深い理由はないっすけど、おっかない先輩には従うしかないじゃないすか。そしたらパクられちゃって。少年院から出てきたところで他に就職するアテもないし、そのまま今の今まで売人を続けている感じ」
通話の最中、ところどころで「ひゃはは」と甲高い笑い声が入る。
十数年の「生業」で出来たのは、仕入れのツテだ。ヤクザや知人、「ダークウェブ（通常ではアクセスできない、秘匿性の高いウェブ）」などから麻薬を仕入れているというX氏。仕入れを終えた段階で必要になるのが闇バイトだという。
「少しでもパクられるリスクを減らしたいので、仕入れが大量にある時は『キャッチと運び』を募集。“キャッチ”とは海外から仕入れたチャリンコ（コカイン）を受け取る仕事。“運び”とは受け取ったブツを事務所まで運んでもらう仕事ですね。
あらかじめこちら側で、海外から仕入れたブツが足のつかない場所に届くよう手配しておく。よく使うのはエアビー（AirBnB）などの民泊予約サイト。バイトにはブツが届く日に予約した宿に待機させて、チャリンコを受け取らせる。その後、中身が本物かどうかを確認するため、宿から自分らの拠点まで持ってこさせるというのが一連の流れ。バイトに払う報酬は1回あたり50万円ですね」
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バイト側からすれば、指定された民泊施設に行き、時間指定便を受けとってまた指定された場所に行くだけ。休日の雑用程度の仕事で50万円ももらえることになる。その川上は、もっと儲けているということだろう。
「仕入れ先にもよるけど、大麻は1グラム売れるごとに純利益は大体3000円弱。2～3日で100グラムぐらい捌けるので純利益は30万円弱。いい商売っすよね。普通に顧客は40~50代のサラリーマンとかが多い。土日あたりは客が増えるから」
具体的な数字は詳（つまびらか）にしなかったが、闇バイトにはキロ単位のブツを運ばせているようだ。
X氏は常連客を多数抱えているという。シノギの規模が大きくなれば、逮捕されるリスクは高まる。それは闇バイトも同じだ。
「闇バイトを雇う時は必ず見張りをつける。仕入れ先の一部はヤクザだから、ヘマこいたら何されるかわからないんすよ。バイトがブツを持って逃げたり、運び中にバイトが襲われてブツを盗まれたりとか。売人もそれなりに気を使うんすよ。普通の仕事で稼ぎたいと思う時もあるけど……」
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闇バイトをスカウトするX氏も、組織の上層部からすれば闇バイトの一人にすぎないのかもしれない。件の「ルフィ」にもさらなるバックがいると噂されるように、彼も巨大な犯罪組織の歯車として裏社会を渡り続けなければならない。
「まあ俺がムショ入ったら面会来てくださいよ。そしたらパクられた時の話でも聞かせてあげますから。ひひっ」
そう言い残して、X氏は電話を切った。前述のとおり、彼が薬物の売買に手を染めたのはここ最近の話ではない。だが、最近になって薬物の快楽と金欲のスパイラルに飲み込まれ、X氏のような人物の誘いに乗るしかなくなった人間もいる。
本稿後編〈<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/299049">「生活保護でシャブを買っていた」40代男性が「闇バイト」に手を染めた泥沼人生</a>〉では、薬物中毒の果てに闇バイトから抜け出せなくなった40代男性の、地獄のような現状を詳報する。

林英雄

ツイッターで「手押し　野菜」と検索すると大量の投稿がヒット。直接取引で大麻を売買するという意味だ（写真は一部加工しています） 「俺はただの売人。もちろん現役(ヤクザ)ともズブズブだけど、俺はスジを通せ

「ブツを民泊施設に……」大麻売買の「闇バイト」スカウトが明かした生々しい手口

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