<p>４年前となる’19年の春先、佐々木朗希の出身校である岩手県の大船渡市立第一中学のグラウンドで、120㎞ほどの球速ながら、なんとも美しいフォームで軟式球を投じる13歳の左腕と出会った。スライダーを始めとする変化球は捕手の近くでギュッと曲がり、数年後の甲子園でのブレイクを予感したものだ。少年の名は、仁田陽翔(にたはると)といった。</p>
<p>仙台育英に進学した彼は昨夏、東北勢として初めてとなる全国制覇に貢献した。球速はすでに147㎞に達している。</p>
<h2>仙台育英</h2>
<h3>湯田統真(ゆた とうま) ３年･投手 (右)<br>
仁田陽翔(にた はると) ３年･投手 (中)<br>
高橋煌稀 (こうき)３年･投手 (左)<br>
昨夏を制した最強の三本柱がセンバツで夏春連覇の偉業に挑む</h3>
<figure id="attachment_299828" aria-describedby="caption-attachment-299828" style="width: 2037px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b30fcb68"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/302_8645.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299828" class="wp-caption-text">３者とも直球のMAXは140㎞中盤を誇る。エースナンバーの高橋は冬に下半身を徹底的に鍛え、体重が３㎏増加。安定感も増した。 高橋：183㎝87㎏右投右打、 仁田：175㎝74㎏左投左打、 湯田：181㎝84㎏右投左打</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「自分は瞬発力に自信がある。それが球速がアップした要因かな、と。現時点ではプロ志望ですが、プロに進めるかどうかはセンバツの結果次第で決まってくると思う。ベストパフォーマンスが発揮できるように準備したいです」</span></p>
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<p>昨秋は調子の波が激しく、誰も手が付けられないボールを放ったかと思えば、ある日には縦横にボールが暴れてしまう。</p>
<p><span class="strongInContent">「（投球の）再現性を高めて、いつも同じパフォーマンスができることを課題に取り組んできました。センバツでは、チームが掲げる『２度目の初優勝』という目標を達成したい」</span></p>
<p>豪速球を投げる左腕は全国的にも稀少だ。が、仙台育英で仁田が背負う番号は「１」ではない。140㎞を超える投手がチーム内に７人おり、今大会一、いや甲子園史においても随一の強力投手陣にあって、エースは昨夏の胴上げ投手である高橋煌稀(こうき)となる。</p>
<p><span class="strongInContent">「投手じゃなくても140㎞を投げる選手はいます（笑）。ただ、まだまだ日本一にはほど遠い。仁田だけじゃなく、競争の激しい投手陣全員をライバル視して、切磋琢磨するなかで、高め合ってきた。（昨秋の明治神宮大会で敗れた）大阪桐蔭を倒して優勝したい」</span></p>
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<p>仙台育英にはさらにもう一人、投手の柱がいる。宮城大会、東北大会で先発を任されることの多かったＭＡＸ146㎞右腕の湯田統真(ゆだとうま)は、「後ろに高橋と仁田が控えていることで心に余裕ができる」と語る。この三本柱を中心に、仙台育英は&#8221;夏春&#8221;連覇を狙う。</p>
<p>しかし、センバツの大本命となると、やはり大阪桐蔭だ。強力打線は例年通り。加えて今年は前田悠伍がエースと主将の二役を担って中心に立つ。</p>
<p>前田と対戦経験のある打者が口にするのが「失投の少なさ」と「制球力」。右打者の膝元へ食い込むクロスファイヤーもあれば、外へ沈むチェンジアップも高校生レベルではない。</p>
<p>そんな前田も昨秋の大阪大会決勝・履正社戦以降、近畿大会や神宮大会でコントロールを乱して四球を連発するシーンが目立ち、本調子には遠かった。筆者が得た情報によると、履正社戦で右の脇腹を痛め、十分な練習が積めないなかで、マウンドに上がり続けていたというのだ。１月、センバツ出場が決まった日、前田に質問をぶつけた。</p>
<p><span class="strongInContent">「履正社戦以降、秋はごまかしながら投げていました。（ケガを公言しなかったのは）弱いところを見せたくなかった。ケガをしても良い選手はたくさんいますが、故障はしないほうが絶対に良い。あえて自分から言う必要はないかなと（笑）」</span></p>
<h2>大阪桐蔭</h2>
<h3>前田悠伍 ３年・投手<br>
昨夏の雪辱を誓う最強軍団の絶対エース</h3>
<figure id="attachment_299831" aria-describedby="caption-attachment-299831" style="width: 1930px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f29585dd"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/10000000000000090963_20230306140956034013_P221124000186.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299831" class="wp-caption-text">帽子の「華」の文字には華麗な投球で勝利に貢献するという意味が込められている。180㎝80㎏左投左打</figcaption></figure>
<h2>&#8220;ボンズ&#8221;に&#8221;おかわり君&#8221;</h2>
<p>大阪桐蔭の西谷浩一監督は兵庫の伝統校・報徳学園のＯＢ。同校もまた近畿大会の決勝で敗れた大阪桐蔭への雪辱を期してセンバツに臨む。要となるのは１年生の秋から正捕手を務めてきた堀柊那(しゅうな)だ。&#8221;爆肩&#8221;と呼ばれ、二塁送球タイムはプロへの合格ラインとされる1.8秒だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「捕ってからのスピードを昨年から意識していました。ただ、速ければ走者を刺せるというものでもない。この冬は送球の安定性にも取り組みました。小学４年生の頃に指導者から『上を見据えるなら、なり手の少ないキャッチャーのほうが試合に出やすい』とアドバイスをもらい、ずっと捕手でやってきた」</span></p>
<p>昨秋までは細身（179㎝・75㎏）の印象が拭えなかったが、一冬を越えて体重は５㎏増し、一回り筋肉が分厚くなった。憧れは侍ジャパンの正捕手である甲斐拓也。昨春の近畿大会に出場した時には、大阪桐蔭の１学年上の松尾汐恩(しおん)（現・横浜ＤｅＮＡ）を手本にしていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「松尾さんにはまだまだ及びません。バッティングでは飛距離も打率も安定させないとダメ。守備では投手にとっていかに投げやすい捕手になるかという点でもぜんぜんです」</span></p>
<p>座右の銘は「積小為大(せきしょういだい)」。小さなことをコツコツと積み重ねることで、偉業を成し遂げられるという意味だ。堀は、高校卒業後の道は「プロ一本」と決めている。</p>
<p><span class="strongInContent">「行けるのであればドラフト１位で。大角（健二）監督からは常に『プロを意識して練習に取り組め』と言われています」</span></p>
<p>95回目の記念大会となる今年のセンバツの主役に躍り出そうなスラッガーが広陵（広島）の&#8221;ボンズ&#8221;こと真鍋慧(けいた)。また、清原和博氏を父に持つ慶應義塾（神奈川）の清原勝児(かつじ)も、神奈川大会や関東大会の勝負所で一発を放ち、父譲りのお祭り男ぶりを発揮してきた。留年により２度目の１年生を送ってきた勝児は言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「がむしゃらに、元気良く。それが自分の持ち味です。父の果たせなかったセンバツ優勝を実現させたい」</span></p>
<p>勝児のユニフォームには、父が愛用したヘルメットの背番号部分が御守りとして縫い付けられている。</p>
<p>新２年生にもホームランアーティストがいる。昨夏の甲子園で放った一発が記憶に残る二松学舎大附の一塁手・片井海斗(かいと)だ。175㎝・97㎏の肉体は育ち盛りで、言うならば&#8221;令和のおかわり君&#8221;。</p>
<p><span class="strongInContent">「逆方向にも大きな当たりを打てる巨人の岡本（和真）さんに少しでも近づけるように最近はウエイトを頑張っています」</span></p>
<p>近年は東北勢や近畿勢に好投手が集まる傾向があるが、’23年が明けて早々、監督の解任騒動が報じられた東海大菅生（東京）の日當(ひなた)直喜も期待の大型右腕だ。３月上旬の取材日、同校のブルペンを独占していた日當は、直球で爽快な音を響かせ、フォーク、シンカー、カット、シュート、スライダーとあらゆる変化球を投じていった。190㎝・105㎏という巨漢だが、繊細さも併せ持つ。</p>
<p><span class="strongInContent">「手先が器用で、中学校の家庭科で習った裁縫が得意なんです。自分でクッションを作ったりします（笑）。武器は（ＭＡＸ150㎞の）直球とフォーク。特にフォークは、縦に落としたり、右や左に曲げて落としたりしています。研究された時に、同じ球種でも曲がり方や球速に変化をつけられれば打者は打ちづらい」</span></p>
<p>仲間から呼ばれるニックネームは「ダチョウ」。異様な回復力がその由来だという。そういえば、疲労蓄積によって初回で降板した神宮大会１回戦の試合後に取材をした時に、「もう治りました」と言われて唖然とさせられたことがあった。</p>
<p>７人兄姉の５番目に生まれた日當は、中学時代は軟式野球の鐘ヶ淵イーグルス（墨田区）に所属した。</p>
<p><span class="strongInContent">「硬式野球をやろうと思ったんですけど、家庭の経済的な事情もあったので、軟式でプレーしたいと思いました」</span></p>
<p>プロ野球選手になって家族を楽にさせたい――その一心で野球に励んできた。一方で、学業はどうだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「スランプです……野球にはスランプはないんですが（笑）」</span></p>
<p>大豊作といわれる世代だけに、聖地で活躍し、スターダムを一気に駆け上がる選手が次々と現れても不思議ではない。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="ドラ１確実強肩捕手など…まだまだいるぞ！"></div>
<h2>報徳学園</h2>
<h3>堀 柊那(しゅうな) ３年・捕手<br>
ドラフト１位候補の好捕手 &#8220;爆肩&#8221;でセンバツを沸かせるか</h3>
<figure id="attachment_299829" aria-describedby="caption-attachment-299829" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ffa06cad"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/564A6348.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299829" class="wp-caption-text">二塁への送球速度は驚異の1.8秒。センバツでは課題の打撃面でも成長を見せたい。179㎝80㎏右投右打</figcaption></figure>
<h2>広陵</h2>
<h3>真鍋 慧(けいた) ３年・内野手<br>
広陵の&#8221;ボンズ&#8221;の異名をとる超大型スラッガー</h3>
<figure id="attachment_299830" aria-describedby="caption-attachment-299830" style="width: 2105px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="07418e86"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/10000000000000090963_20230306140912023964_P220320000070.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299830" class="wp-caption-text">世代屈指の強打者。昨夏は甲子園を逃したが、神宮大会では大暴れして準優勝に貢献。189㎝95㎏右投左打</figcaption></figure>
<h2>慶應義塾</h2>
<h3>清原勝児 ２年・内野手<br>
父は父、自分は自分 注目度抜群の清原ジュニア</h3>
<figure id="attachment_299832" aria-describedby="caption-attachment-299832" style="width: 1839px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="612380b0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/CC2C9644.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299832" class="wp-caption-text">父ほどの長打力はないがバッティングセンスは本物。明るい性格でチームを牽引。174㎝80㎏右投右打</figcaption></figure>
<figure id="attachment_299833" aria-describedby="caption-attachment-299833" style="width: 1846px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6edba83e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/CC2C9844.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299833" class="wp-caption-text">次男・勝児を応援するため、清原氏もたびたび球場へ駆けつける。甲子園でもその姿を見られるかもしれない</figcaption></figure>
<h2>二松学舎</h2>
<h3>片井海斗(かいと)２年・内野手<br>
鋭いスイングと強心臓を武器に２度目の聖地で快音を響かせる</h3>
<figure id="attachment_299826" aria-describedby="caption-attachment-299826" style="width: 1924px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8cc4b6b0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/K5R6279re.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299826" class="wp-caption-text">白米を１日約３㎏食べるという。昨夏は初の甲子園で本塁打を放つなど勝負強さも一級品。175㎝97㎏右投右打</figcaption></figure>
<h2>東海大菅生</h2>
<h3>日當(ひなた)直喜 ３年・投手<br>
好物は母親が作るミートソース ＭＡＸ150㎞の剛腕投手</h3>
<figure id="attachment_299827" aria-describedby="caption-attachment-299827" style="width: 1845px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e19efa39"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/K5R8996re.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299827" class="wp-caption-text">威力のあるストレートが注目されるが、器用な面もあり、多彩な変化球を操る。190㎝105㎏右投右打</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2023年3月24日号より</p>


松橋隆樹（仙台育英）　加藤 慶（報徳）　小松寛之（菅生、二松学舎）　足立百合（慶應）

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