WBC戦士も経験したプロ野球のリアル…『グラゼニ』が描く「カネから見るプロの現実」 | FRIDAYデジタル

WBC戦士も経験したプロ野球のリアル…『グラゼニ』が描く「カネから見るプロの現実」

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『グラゼニ』 原作:森高夕次、漫画:足立金太郎

4年に一度の“野球の祭典”である第5回ワールド・ベースボール・クラシック(以下WBC)が開幕した。大谷翔平(28)、ダルビッシュ有(36)といった現役メジャーリーガーから、令和の三冠王・村上宗隆(23)ら有名選手などが並び、歴代最強とも称される侍ジャパンは1次リーグで勝利を積み重ねているが、悲願の優勝を勝ち取ることができるのか。日本中がその熱闘に注目している。

しかし、WBCに出場する選手は当然ながら超一流ばかり。いわば、プロ野球界の“おもて”の選手ばかりだ。だが、大半のプロ野球選手はWBCに出場することもないし、華々しいスポットライトが当たるわけでもない。そんなプロ野球界のウラの選手を主人公にした漫画がある。それが『グラゼニ』だ。

『グラゼニ』第1巻より。作品のテーマを象徴する一場面。「カネ」を軸に、プロ野球を徹底してリアルに描き切っている

本作は’11年から『週刊モーニング』にて不定期連載されている野球漫画(原作:森高夕次、漫画:足立金太郎)。’12年には『このマンガがすごい!』でオトコ編第2位を獲得し、第37回講談社漫画賞も受賞するなど、漫画読みをうならせてきた作品である。

野球漫画と聞くと、1966年に連載が始まった『巨人の星』に始まり、数多くの名作が思い浮かぶが、本作のすごいところは、従来の野球漫画で描かれてこなかった「金」という現実的な切り口からプロ野球界を描いた点だ。プロ野球選手といえば、何億円もの年俸をもらって、外車に乗り、高級マンションに住んでなどとイメージしがちだが、そんな選手は一握り。本作がスポットを当てるのは、下は年俸240万円から上は数億円までという「超格差社会」という点だ。

タイトルにもなっているグラゼニは「グラウンドにはゼニが落ちている」という言葉を略したものであり、かつて南海ホークスの名将だった鶴岡一人の名言から取られている。主人公は、高卒プロ入り8年目で年俸1800万円、決して“一流投手”とは言えない待遇のプロ野球球団神宮スパイダースに所属する中継ぎ投手の凡田夏之介。特技は「全球団の1軍選手の年俸をソラで言える」こと。

同じく『グラゼニ』第1巻より。主人公の夏之介は年俸を気にするあまり、自分自身の年俸より上の選手には強く出られないという欠点を持つ

世間一般から見れば華やかなプロ野球選手の中でも地味なポジションで、必殺技や、斬新なプレーが描かれるわけではない。「30超えたらあと何年できるか分からない」「引退後は年収100万円台になる人もいる」「引退後にコーチや解説者になれる人はほんの一握り」などといった厳しい現実に立ち向かう姿が描かれる。だからといって主人公は卑屈になることはない。グラウンドにはゼニが眠っていると信じて、目の前の現実と向き合いプロの世界で戦っているのだ。その姿はまさに、サラリーマン。

本作を読めば、WBCのようなスポットライトが当たっているところだけではないプロ野球界の「現実」を知ることができ、違った視点でWBCが楽しめること間違いなしだ。また、日々会社員として現実と戦っている方々は是非、本作を手に取って、凡田の地味だけれど、現実的な戦いを応援してみてほしい。

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  • 取材・文味道苑

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