<figure id="attachment_299759" aria-describedby="caption-attachment-299759" style="width: 8192px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a77a9420"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/maru_K5R7617re.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299759" class="wp-caption-text">『オープンハウス』銀座オフィスにて（撮影：小松寛之）</figcaption></figure>
「目の前に大塚範一さん（74）、小島奈津子さん（54）、吉田恵さん（46）がいらして、『テレビの中の人たちだ！』『顔ちっちゃ！』って（笑）。これからこちらの世界に行くんだと、あのワクワクがいまも蘇ります」
そう言って『めざましテレビ』（フジテレビ系）出演者との初顔合わせの場面を振り返るのは、2002年春、同番組でお天気キャスターとしてデビューし、フリーアナウンサーとして活躍していた高樹（旧姓）千佳子さん（43）。当時と変わらぬ愛らしい笑顔を浮かべ、「その後、いろんなところに行かせていただきましたし、スーパースターともお仕事させていただきましたが、それも慣れるというか、あの顔合わせを凌ぐ興奮はなかったですね」と語る。
“千佳ちゃん”の愛称で、朝の顔として多くの人に親しまれていた彼女の現在の肩書は、「OPEN HOUSE GROUP マーケティング本部　広報宣伝部　係長　多田千佳子」。横浜国立大学在学中にスカウトされ、多くの番組で活躍していた彼女は、結婚・出産を経て芸能界を引退し、美人広報ウーマンに転身していた。
最近はテレビ局に所属する、いわゆる局アナの退社やキャリアチェンジがニュースになることも多い。人気の局アナですらポジションが安泰ではないアナウンサー業界にあって、フリーアナの生き残りはさらに熾烈だ。
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「フリーアナウンサーは星の数ほどいますが、結婚・出産しても第一線で続けていけるのは、人気と実力を兼ね備えたほんの一握りの方だけ。40代になって20〜30代と同じペースで仕事が入ってくることは望めないですし、子育てしながら不規則なアナウンサーの仕事をするのは、自分の環境では物理的に難しいと思ったんです」
人気番組で華々しいスタートを切り、キャリアを重ねていた彼女が、転身を図ったのは39歳の時。世代交代が早く競争の激しい職種で、これ以上の成長は見込めないと感じた。子育てで仕事をセーブするのは一時的なことでも、40代・50代と長い目で考えた時、キャリアアップする姿が思い描けない。組織の一員として企業で働く経験もしてみたかった。
芸能界引退という一大事だが、「何ヵ月も思い悩んだり、葛藤したりはなかったですね」と、意外にスパッと決断。転職先を考える際もあれこれ目移りせず、不動産業界一本に絞った。
「独りで決めました。気持ちを固めてから家族に伝えたので、とくに反対もされませんでした。豪胆!?　そんなに意外ですか？（笑）。メディア以外で働くなら不動産業界と決めていました。ヨーロッパの建築や防災に興味があって、大学は建築学科だったんです。そうは言っても40歳目前、子供がいて残業もできない人を『誰が雇うんだ？』と思いますよね。だからせめて資格くらいはと、事前に宅建（宅地建物取引士）の資格を取りました」
宅地建物取引士の合格率は15〜17％という狭き門。「学生の時みたいに、頭に入ってこないんですよ。ひたすら憶えるのに、苦労して……大学受験以来、久しぶりに頭をフル回転させて脳が痺（しび）れました（笑）。宅建って、試験が年に１回しかないんですよ。落ちるとまた来年になってしまう。資格が取れないと、先へ進めないと思ったので必死でした」と笑って話すが、当時は娘が１歳。子育てしながらの勉強は大変。試験本番の１ヵ月前からは睡眠を削り、最後は家族の手も借りて図書館に行く時間を確保し、なんとか一発合格を果たす。
<div data-friday-nextpage-lead="「はじめての経験」だらけの転職と会社員生活"></div>
資格は取れても、そこがゴールではない。「大学時代に結婚式場の配膳のアルバイトをしたくらいで、一般企業で働いたことがない。履歴書を書くのもはじめてで、転職活動というより就職活動でしたね」と、明るく当時を振り返る。
<figure id="attachment_299761" aria-describedby="caption-attachment-299761" style="width: 8192px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5588e9de"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/maru_K5R7672re.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299761" class="wp-caption-text">この笑顔で本誌スタッフをお迎えしてくれた（撮影：小松寛之）</figcaption></figure>
はじめての転職であると同時に、はじめての就職活動で『リクナビ』に登録。「40手前、子育て中の未経験人材なんて、エージェントさんが本当に大変だったと思います」と言うが、登録して３ヵ月ほどで２社から内定を獲得した。抜群の知名度と好感度があるとはいえ、未経験や年齢、子育て中といった諸条件を考えれば、かなりのスピード決着といえるだろう。
それにしても一般企業の面接に、全国区のアナウンサーが来たら、「テレビ、観てましたよ！」と、さぞ盛り上がったことだろうが……。
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「ないです（笑）。普通に自己紹介から始まって、転職理由や志望動機を聞かれて。『前職を活かして、御社に貢献したいと思っています』みたいな、ごく普通の面接でしたよ。超大手広告代理店と超有名外資系コンサル会社から転職してきた方が面接官だったときには、私から転職理由を逆質問してしまいました(笑)」
’19年５月に入社した『オープンハウスグループ』での会社員生活は、はじめてのことだらけ。定期券を自分で買う、出退勤を打刻する、経費精算や各種の手続き……全てが未知の経験だった。
事務処理など全てを自分でこなすフリーアナもいるが、セント・フォース所属の人気アナともなれば、担当マネージャーがつき、本人が意識していないような雑事まで片付けてくれる。現場に入れば、アナウンサーの仕事に集中できるよう、制作スタッフやスタイリスト、ヘアメイクなど、多くのサポート役に囲まれる。学生時代にデビューしてから、ずっとそういう環境にいたのだ。
「この年齢になっても初めてのことがたくさんあって、楽しかったし、とにかく夢中でした。同時に、いかに恵まれた環境にいたのか、どれほど周りに助けられていたのか、身に沁（し）みましたね。就職活動したからこそ、気付けたことです。フリーアナウンサーだとパソコンを使うことがほとんどなく、送られてきた原稿や台本を見るとか、ブログの更新をするくらいでした。だからWordやExcelも、ほぼ使ったことがありません。『これPDFにして送って』と言われても、『PDFって、なんですか？』というレベル。近くの席の人に聞きまくりました。思い返すと本当に恥ずかしいし、『この人、何も知らないんだな』と引かれていたと思います（笑）」
<div data-friday-nextpage-lead="自身の成長と子育てを両立できる環境"></div>
<figure id="attachment_299763" aria-describedby="caption-attachment-299763" style="width: 5464px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6914949e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/maru_K5R7660re-rotated.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299763" class="wp-caption-text">余計なものは置かず、すっきり整頓された“千佳ちゃんデスク”（撮影：小松寛之）</figcaption></figure>
新たな環境に飛び込むには勇気がいる。その場所として『オープンハウスグループ』を選んだ決め手は、仕事を通じて得たい「自分自身の成長」と家庭との両立。今年小学生になる娘を持つ母であることも重視した。
「『オープンハウスグループ』は子育てや家庭を優先することに理解がある会社で、ここ数年の育児休業復帰率は100％です。運動会など、子供の行事も優先させてくれます。上司も『中途半端になるより、やりきって！』と言ってくれる。入社の決め手は、“年々成長し続けている会社なら、自分も早く成長できるのでは”と思えたからですが、一次面接の面接官が子育て中のママで『この会社なら、働きながら子育てもできる』と感じたことも大きかったです」
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去年は娘の受験があり、有給休暇を使い切る勢いで準備に追われたが、周囲のサポートに助けられた。だが、今度はいわゆる「小１の壁」が迫っている。延長保育などがある保育園を卒業して小学校へ入学することで、預けられる時間が短くなってしまうのだ。
「学童に預けることができたとしても、通学のためにもっと早寝早起きの生活になりますし、勉強や友達関係など心配は尽きないです。しばらくは、これまで以上に娘との時間が必要になると思うので、時短勤務を考えています。家庭の状況によって、時短やリモートなど、その都度相談できる会社なので本当に助かっています。申し訳ないなと思うこともありますが、今はやはり娘との時間が大事。そこは割り切って、その分できる時に集中して頑張ろうと思っています」
そう言って頬を緩め、彼女は母親の顔になった。
パソコン操作にも苦戦した“超ド新人”期を乗り越え、今や中間管理職として多くの仕事をこなす。同じ広報宣伝部の計屋（はかりや）晴香氏が、その活躍ぶりを教えてくれた。
<figure id="attachment_299764" aria-describedby="caption-attachment-299764" style="width: 259px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4719b3a8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/hyouhyouhyouhyou.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299764" class="wp-caption-text">社内表彰式で司会を務めた際の一コマ。貴重な「ピーチ姫」のコスプレ姿だ</figcaption></figure>
「メディア向けのプレスリリース作成や媒体関係者へのアプローチ、取材対応、SNS運用、社内報の作成といった一般的な広報業務全般に加え、記者発表会や社内イベントの司会、自社が提供するラジオ番組のパーソナリティなど、前職のスキルも活かされています。成績優秀者の表彰式の司会を多田が務めることもあり、そこで同僚に『めざましテレビ、観ていました！』と声をかけられることもありますね」
「まだまだ周りに助けられながら、階段を上っている途中です」と本人は謙遜するが、司会やパーソナリティといったアナウンススキル以外にも、思いがけずメディアの“中の人”だった経験が、今の仕事に役立つシーンがあるという。
「不動産企業でアナウンサー時代の経験がどこまで役立つか未知数でしたが、例えばテレビなどの取材では、企画をお聞きして『ここは映したいと言われるだろうから、準備した方がいいな。こっちの画（え）は、必要なさそうだな』と、ある程度は予想できます。また、時間をかけて準備してタップリ撮影に時間をかけても、オンエアされるのは数分だったりすると『あんなに時間をかけたのに、これだけ？』と感じてしまう人もいます。そういう番組内での“尺（放送時間）”の感覚はテレビ出身者として説明できますし、大きなニュースが飛び込んで来たら、放送予定が変わってオンエアそのものが飛ぶこともある。それも経験者として説明できる。前職が活きている部分だと思います」
会社が拡大を続け、チームの人員も増加する状況下、中間管理職としてのスキルが目下の課題だと話す。
「育成を考えたら、仕事を振ったり、任せたりして、若い子に経験を積ませることが大切。でも、フリーアナウンサー時代の一人で抱えて、仕事を積み上げてしまうクセが染みついていて……。自分ではなく、部下が結果を出せるようにするのが、組織に貢献することに繋がります。そうした環境を上手に作れる、マネジメント力を身につけたいですね」
プライベートでは、「今はストレッチくらいしかできていないので、運動がしたいですね。ピラティスやヨガなど、40を過ぎてケアしないと体力面が不安なので、体のケアはしたいです」という。運動以外にも、英語の勉強のほか「余裕があれば、あれもこれもやりたい（笑）。でも、まだまだ“やるべきこと”の方が多いので」と、高い向上心と大人の冷静さを併せ持つ姿勢が素晴らしい。
慌ただしい朝にホッとするような、癒し効果抜群の“千佳ちゃん”スマイルは変わらない。だが、自身が成長できないと感じたら、慣れ親しんだ華やかな場所を離れ、新たなフィールドに飛び込む大胆さを内に秘めているとわかった。これからも柔らかな笑顔のまま、しなやかに変化し続けていきそうだ。
<figure id="attachment_299765" aria-describedby="caption-attachment-299765" style="width: 334px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="72c76e5e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/radioradiofradio.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-299765" class="wp-caption-text">『オープンハウスグループ』提供のラジオ番組でメインパーソナリティーを務める。前職のスキルが活きている</figcaption></figure>

鍬田美穂

本誌インタビュー完全版。“千佳ちゃん”スマイルに隠された大胆さと、迫る娘の「小1の壁」。メディアの“中の人”経験を活かした活躍と今後の展望

オープンハウス広報に！元『めざまし』高樹千佳子アナ「初体験ばかり」

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