「これは冤罪です」言い訳を続けた被告に懲役9年判決…熊谷27歳女性絞殺事件 法廷で語られた全貌 | FRIDAYデジタル

「これは冤罪です」言い訳を続けた被告に懲役9年判決…熊谷27歳女性絞殺事件 法廷で語られた全貌

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「被告人を懲役9年に処する」

‘21年9月、埼玉県熊谷市の自宅アパートで当時27歳だった宮崎英美さんの遺体が発見された事件の裁判員裁判が、2月20日からさいたま地裁で開かれている。

傷害致死の容疑で犯人として逮捕された冨田賢(すぐる)被告(33)は、判決が言い渡されると下を向き、頭を小さく左右に振った。

宮崎さんの首を絞めて窒息死させた傷害致死の罪に問われている冨田被告は、逮捕時から一貫して犯行を否認していたが、検察の求刑10年に対しほぼ求刑通りの判決となった。

‘21年10月22日に送検のために移送される冨田被告。服などで顔を隠すことはなく、じっと前を見据えていた
‘21年10月22日に送検のために移送される冨田被告。服などで顔を隠すことはなく、じっと前を見据えていた

事件が発覚する3日前の朝から連絡が取れなくなったという被害者の宮崎さん。知人が心配してアパートを訪れたところ、そこにあったのは彼女の変わり果てた姿だった。

「ドアノブを回すと鍵がかかってなかったので驚きました。『ひでみ、いるの』と声をかけながら部屋の中に入ると、布団の上に英美が横たわっていました。肌が赤紫色になっていたので死んでいるんじゃないかと思い、腕をさわると冷たかった。慌てて110番通報しました」(知人男性)

宮崎さんは事件前、元交際相手からのDVを警察に相談したことがあったが、それ以降目立ったトラブルを抱えている様子はなかったという。
犯人への手がかりが少ないなか、遺体の発見から一か月半後の10月21日、SNSで被害者と知り合ったとされる冨田被告が逮捕された。冨田被告は当時、東京都東村山市に住んでおり、派遣社員として働いていた。

冨田被告と宮崎さんが出会ったのは‘21年の6月。『KoeTomo』というSNSアプリを通じて知り合った。何度かLINEで連絡を取りあったあと、宮崎さんの自宅でお酒を飲んだりするような関係になったという。

事件が起こったとされる9月3日、冨田被告は自宅近くで借りたレンタカーで宮崎さんのアパートに向かった。宮崎さんと会うのは3度目だった。宮崎さんの自宅に向かう冨田被告とのLINEのやり取りが、宮崎さんの最後の通信・通話記録とされている。

「部屋でタバコを吸いながら話していると、敷布団の上に座っていた宮崎さんが突然、奇声を上げ始めました。『ギャー』とか『グァー』とか怒り狂ってるような声です。『大丈夫?』と声をかけましたが、まったく反応がありません。そのうち、布団に顔を押し付けるようにして泣き始めました」(冨田被告)

そのとき、部屋のインターホンが鳴った。宮崎さんは精神的に不安定になることがあり、訪問看護師が定期的に様子を見に来ていた。その日は訪問看護の日だったのだ。

「ドアの外から『大丈夫?』『体調悪いんじゃないの?』という声が聞こえてきました。宮崎さんに『出なくていいの?』と聞いても反応がありませんでしたので、無視することにしました」(冨田被告)

しかし、訪問看護師の証言は冨田被告とは食い違う。

「宮崎さんの部屋に到着すると、悲鳴のような声が聞こえたんです。状態がよくないんだなと思って、インターホンを鳴らし、『大丈夫?』と声をかけました。ドアに耳をあてると、『ドンドン』という体をぶつけるような音が聞こえ、『オエ、オエ』という声が2回ほど聞こえました。さらにインターホンを鳴らし続けると、カチャッという金属音がして、ドアチェーンをかけられたと思いました」(訪問看護師)

これまでにもドアを開けてもらえないことがあったため、訪問伝票をドアポストに入れ、その日は帰ったという。ドアスコープを覗き、訪問看護師が帰ったことを確認した冨田被告。

「それからしばらく待っていましたが、まったく回復する様子もないので帰ることにしました。私が家を出るとき、宮崎さんは確かに生きていました。(家を出たあとに)この人に関わるのはやめようと思い、LINEのアカウントを削除しました」(冨田被告)

被害者の宮崎英美さん。同級生は「おとなしく真面目だった」と口をそろえる
被害者の宮崎英美さん。同級生は「おとなしく真面目だった」と口をそろえる

冨田被告は自宅に帰ったこの日、インターネットで「熊谷 ニュース」と検索していることが捜査で明らかになっている。また、宮崎さんが亡くなったことが報道されたあとも、「宮崎さん殺害」ニュースの続報にアクセスし続けた。その理由について冨田被告は「知っている方が亡くなったので事件の動向に興味がありました」と語った。

さらに冨田被告の不可解な検索は続く。9月3日以降、冨田被告は「LINEの捜査機関への対応」「殺人の刑期」「アイポッドタッチの位置情報の仕組み」などの文言をインターネットで検索している。冨田被告はアイポッドタッチを所有していない一方、宮崎さんはアイポッドタッチを利用していたと知人が証言している。冨田被告は自身が所持していないアイポッドタッチについて検索した理由を弁護人から聞かれると、「誰かの投稿でアイポッドタッチのことを読み、気になって検索した」と答えた。

検察側は、宮崎さんのパジャマの襟から宮崎さんと冨田被告のDNAが混ざったとみられるものが検出されているほか、事件後、犯人しかとらないであろう行動をとっていると指摘。その上で「窒息死するまで絞め続けた犯行態様は危険で悪質。不合理な供述に終始し、反省の情がない」として懲役10年を求刑した。

一方、弁護側は宮崎さんのパジャマの襟からは、冨田被告のものではない第三者のDNAが検出されているほか、冨田被告のDNAが付着する機会も首を絞めるときだけではないと反論。無罪を主張した。

現場となった埼玉県熊谷市のアパート
現場となった埼玉県熊谷市のアパート

そして3月10日の判決の日。

冨田被告が事件のあとLINEのアカウントを削除したり、帰り道では高速にのって群馬方面へ向かったこと。また、これまで調べたことのない事柄を突然ネットで検索し始めたこと。裁判長は、これらの行動が「犯人と推認される」と指摘した上で、宮崎さんのパジャマの襟から冨田被告のDNAが検出されたことは、「犯人であることを支える事実である」と述べた。

「冤罪です」と主張し続けた冨田被告の訴えを裁判長が認めることはなかった。しかし、宮崎さんの姉が涙ながらに訴えていた「被告人を殺人罪で裁いてほしかった」という声も届かないかたちでの判決となった。

  • 取材・文中平良写真蓮尾真司

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