洗足学園＆本郷が躍進、巣鴨＆桐朋が低迷…20年で激変「東大合格者ランキング」高校の盛衰記

開成（東京都荒川区）が146人で42年連続トップ、２位は86人の灘（兵庫県神戸市）、３位は14人増で昨年の９位から躍進した78人の麻布（東京都港区）――。

３月10日、日本の最難関・東京大学の合格者が判明した。大学通信と『サンデー毎日』、『週刊朝日』は、独自調査により恒例の「東大合格者高校別ランキング」を公表。今年の傾向について、受験に詳しい森上教育研究所の森上展安所長が解説する（以下、コメントは森上氏）。

「ここ数年は日比谷（東京都千代田区、47人）や横浜翠嵐（神奈川県横浜市、44人）、旭丘（愛知県名古屋市、25人）など公立校の復活が話題となりましたが、少し落ち着いた印象です。一方で中学受験の人気から、私立の中高一貫校が躍進しています。西大和学園（奈良県北葛城郡、73人）や駒場東邦（東京都世田谷区、72人）は、象徴的な学校でしょう」

かつてのスポーツ強豪校が

親世代からすると、上位には「聞いたことないな」「えっ、あそこが!?」と意外に思う学校もランキングされている。20年前の2003年の東大合格者は１人、翌年は０だった洗足学園（神奈川県川崎市）は、その典型だろう。今年の合格者は22人にのぼる。

「洗足学園音楽大学と同じ流れを組む、中高一貫の女子校です。約20年前から様々な学校改革に取り組み、（神奈川の女子名門）フェリスを抜くと意気込んでいます。偏差値40程度だった高校の募集を止め、音楽科を廃止。積極的に帰国子女を受け入れ、現在の偏差値は60ほどになります。改革のおかげで神奈川の田園都市地区の優秀な生徒が集まるようになり、東大合格者が激増。４年間で３倍以上に増えました（７人→10人→17人→22人）」

ラグビーやサッカーなどスポーツ強豪校のイメージがあった本郷（東京都豊島区）も、東大への実績を大きく伸ばした高校だ。2003年は０、翌年は２人だった合格者を、今年は14人に増やしている。

「現在は、２月２日の中学受験で最も多くの志願者が集まる人気の男子校です。かつては電子機械科やデザイン科のあったバンカラな学校でした。00年代から改革に乗り出し、校舎を新築して21年から高校募集を停止します。完全中高一貫校になり、開成や駒場東邦など難関校の受け皿としての地位が定着。東大合格者数が増えているんです（８人→９人→13人→14人）」

一方で低迷する学校もある。2003年に40人、翌年48人の合格者を出した巣鴨（東京都豊島区）だ。城北地区の名門校も、今年は３人まで減らしてしまった。

「ふんどしでの水泳大会や寒稽古など、かつてのスパルタな印象がマイナスとなっているようです。新校舎建設にともない、一時校舎を移転したことも受験生離れにつながりました。ただ最近は、21年から高校入試で５科目受験をとり入れ公立トップ校の併願先として再注目されています。もともと医学系には強い学校でもある。高校受験での人気により、３～４年後には復調すると思います」

2003年の合格者44人、翌年が43人も、今年は９人にとどまった桐朋（東京都国立市）も厳しい状況にある。

「中学受験の熱が高いのは都心です。桐朋のある多摩地区は、それほどでもありません。受験ブームに乗り切れず、場所的なデメリットを被っている形です。20年ほど前は20人前後の合格者を出していた暁星（東京都千代田区）も、最近は低迷しています（今年は５人）。130年以上の歴史を持つ伝統校ですが、学校の体質なのか受験生へのアピールが足りない気がします」

学校にも栄枯盛衰がある。東大合格者ランキングからは、各校の現状がうかがえるのだ。