<p>〈「動画シェア」と「アルバムコレクション」。日常的に利用しているプラットフォームで提供されていたこのアプリで、性的な写真や動画が取り引きされている。それらは盗撮やハッキング、リベンジポルノの一環で集められ、本人が知らない間に拡散される…。</p>
<p>ジャーナリズム組織NPO法人Tansaの辻記者が追及する性的画像拡散の実態は、FRIDAYデジタルでも記事<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/296088">【知らぬ間に自分の写真と動画が “性的商品”に…巨大プラットフォームが支える「地獄の構図」】</a>で報じた。</p>
<p>辻記者は、昨年12月に性的画像拡散の加害者グループのTwitterアカウントをTansaのウェブサイト上に公開した。〉</p>
<figure id="attachment_300604" aria-describedby="caption-attachment-300604" style="width: 3500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3f7f125c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/1_aflo_147230549.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300604" class="wp-caption-text">「僕らとしてはあの記事がね、バズったりとかなんかして、社会問題になって、警察も動かざるを得ない状況になるのがいちばん最悪やとは思うんで…」（加害者グループのスペースで行われた作戦会議の音声より）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">加害者グループのTwitterアカウントを公表…そして「作戦会議」の全容入手</span></h3>
<p>Googleでは「動画シェア」が10万回以上ダウンロードされ、Appleではどちらのアプリも人気ダウンロードランキングに入った。</p>
<p>だが警察は捜査に乗り出さない。GoogleとAppleはいくら私が質問状を送っても無視する。</p>
<p>私は新たな手段に出た。両アプリで写真や動画を投稿したり拡散していた加害者たちの、300超のTwitterアカウントをTansaで掲載したのだ。彼らは自分が投稿した写真や動画を宣伝するためTwitterを使っていた。</p>
<p>焦ったのはアカウントの持ち主たちだ。急遽、Twitterで音声配信ができるスペース機能を使い「作戦会議」を開いた。</p>
<p>私は潜入取材の過程で、その会議をライブで聞いた。</p>
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<h3><span class="strongInContent">「警察が動かざるを得なくなったら最悪」</span></h3>
<p>加害者グループのTwitterのスペースでの会議は、22年12月14日正午過ぎから開かれた。タイトルは「界隈大かくれんぼ」。参加者は47人だ。主催者は私が公開したもののうち「弁財天」というアカウントを持つ関西弁の男だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「僕らのプロフィールをスクショしてるっていうことを書かれてたんですね、あの記事に。だから、それをもう台無しにしようっていう作戦」</span></p>
<p>弁財天は、参加者にTwitterの名前やID、プロフィール情報を全て変えるよう訴えた。Tansaで公開したアカウントに、読者がたどり着けないようにするためだ。<span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">「通報したろって人が検索しても、もう僕らがないよ、みたいな。そんな名前の人出ないよ。え、じゃあなんやねんこの記事みたいな。でたらめか、みたいな」</span></p>
<p>弁財天は私がTansaで2022年11月から発信している記事について言った。</p>
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<p><span class="strongInContent">「自分の顔も堂々とサムネイルに載せている」</span></p>
<p><span class="strongInContent">「記事自体、あの人らは結構力入れて作ってる」</span></p>
<p>一方の弁財天は、自分の身元が判明することに怯えている。</p>
<p><span class="strongInContent">「僕らとしてはあの記事がね、バズったりとかなんかして、社会問題になって、警察も動かざるを得ない状況になるのがいちばん最悪やとは思うんで」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_300612" aria-describedby="caption-attachment-300612" style="width: 3500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b085cbcc"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/aflo_26177505.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300612" class="wp-caption-text">「僕らのプロフィールをスクショしてるっていうことを書かれてたんですね、あの記事に。だから、それをもう台無しにしようっていう作戦」（加害者グループのスペースで行われた作戦会議の音声より）</figcaption></figure>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-start"></div>
<h4><span class="strongInContent">■加害者グループたちの打ち合わせ音声</span></h4>
<p><iframe title="加害者グループのTwitterスペース音声を公開：シリーズ「誰が私を拡散したのか」" width="500" height="281" src="https://www.youtube.com/embed/e7skzPXEhQ4?feature=oembed" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture; web-share" allowfullscreen></iframe></p>
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<div data-friday-nextpage-lead="Tansaの「スペース」にやってきた加害者たち"></div>
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<h3><span class="strongInContent">Tansaの「スペース」にやってきた加害者たち</span></h3>
<p>ちょうどこの日、Tansaも21時30分からTwitterでスペースを開く予定だった。テーマは韓国の「N番部屋事件」。10代～20代の犯人を中心とした集団が、被害者を脅して性的にリンチし、その写真や動画をメッセージアプリで売買していた事件だ。26万人が閲覧や取引に加わり、3億円を儲けていた男もいた。2020年に発覚すると、厳罰を求める国民の怒りが沸騰し、警察は3757人を逮捕した。国会では再発防止のために6つの法律が改正された。</p>
<figure id="attachment_300606" aria-describedby="caption-attachment-300606" style="width: 5000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="75190b3d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/2_aflo_124725863.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-300606" class="wp-caption-text">韓国史上、最悪のデジタル性犯罪事件と言われた「N番部屋事件」。写真の主犯チョ・ジュビンには、懲役42年の実刑が言い渡された</figcaption></figure>
<p>TansaはN番部屋事件を引き合いに出して、動画シェアとアルバムコレクションを舞台にした事件の類似点を説明するのが狙いだった。</p>
<p>弁財天は、このTansaのスペースについても語った。</p>
<p><span class="strongInContent">「今日の21時30分から、（Tansaが）スペースをやるって。何について話すかっていうと、N番部屋とかいう韓国の有名なデジタル犯罪。要はアルバムコレクションや動画シェア（を使う自分たち）に似てるみたいな」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>弁財天は、N番事件の犯人のような末路を辿るのが心配なのか、自分を安心させるように言った。</p>
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<p><span class="strongInContent">「向こうも要は母体が警察とかそんなんじゃなくて、ジャーナリスト集団なんですよね。記者なんすよ。だからネタがなくなったら困るし、なんなら僕らに直で取材したいくらいちゃうんかなーって」</span></p>
<p>さらに弁財天は、「えろすけさん」という仲間とTansaのスペースに参加して、質問するぞと張り切る。参加できない仲間のためには画面収録するという。</p>
<p>宣言通り、弁財天とえろすけはTansaのスペースに参加してきた。最初はこれまでの記事に対してTansa側に反発してきて、「今はやっていない」などと弁明した。だが同意のない性的な写真や動画を投稿・拡散することは違法行為であることや、今はやっていなくても時効にはなっていない点をこちらが伝えると、矛を収めた。</p>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-start"></div>
<p><a href="https://twitter.com/Tansa_jp/status/1602992272374923266?s=20" target="_blank" rel="noopener noreferrer">■その際のやりとりはこちらから視聴可能だ。</a></p>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-end"></div>
<h3><span class="strongInContent">モグラ叩き</span></h3>
<p>Tansa主催のスペースが終わった直後、再び弁財天が加害者グループに向けてTwitterスペースを開いた。反省会のようなものだ。このやりとりも私は聞いた。</p>
<p><span class="strongInContent">「（Tansaの）言ってることは正しいから、なんとも言えん」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">「（違法というのは）みんなわかってやってたことやし。質問とかで、逮捕とかそういうの大丈夫なんですかねって聞かれることあったけど、もうずーっとそんなん心配だったら辞めといたほうがいいですって言ってた」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>弁財天は数日後、Twitterのアカウントを削除した。えろすけも今後は投稿の拡散に一切関わらないと宣言した。</p>
<p>そのほかの加害者が運営していたTwitterアカウントも、いくつかは削除されている。動画シェアやアルバムコレクションで稼ぐ方法を指南していたチャットグループも閉鎖された。</p>
<p>しかし、外からは分からないように工夫しながら、今も投稿を続けるものがいる。アカウントを非公開に設定し、数万人のフォロワー相手に投稿を続けたり、「入場料」を支払った利用者のみを、性的商品を配る招待制のチャットルームに案内したりしているのだ。</p>
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<p>新たな投稿者のTwitterアカウントも次々と登場している。被害はなくなっていない。叩いても出てくるモグラ叩きのようだ。</p>
<p>N番部屋事件の犯人たちにはこれまでの韓国国内の性犯罪と比べ、厳罰が科された。その背景には、国民の怒りがあった。</p>
<p>事件発覚後の2020年3月、大統領府には加害者の身元の公開と、記者団の前でインタビューに応じることを求める「国民請願」が行われた。この請願にはわずか4日間で200万人以上が賛同。過去最多となる賛同者数を記録した。</p>
<p><span class="strongInContent">私は徹底取材を続けるが、記事の力だけでは事態を変えられないと思う。</span></p>
<p><span class="strongInContent">読者の方々には、現状に怒りの声を上げてほしい。記事をSNSで誰かに共有したり、自分の意見を発信したりしてほしい。</span></p>
<p><span class="strongInContent">それが加害者たちを追い詰める力になる。</span></p>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-start"></div>
<p><a href="https://tansajp.org/investigativejournal_category/kakusan/" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="strongInContent">■Tansa「誰が私を拡散したのか」</span>はコチラ</a></p>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-end"></div>
<p>&nbsp;</p>


早稲田大学在籍中にワセダクロニクル（現Tansa）のメンバーになる。2019年6月から2022年6月まで東洋経済の記者も兼ね、児童虐待や精神医療、生殖ビジネスなどをテーマに執筆。Tansaでは、製薬マネーデータベースの作成、コロナ地方創生臨時交付金の無駄遣いの検証などを報じている。共著に『ルポ・収容所列島』。

辻麻梨子

アフロ

盗撮やハッキングした写真や動画を投稿拡散していた加害者たち。300超の彼らのTwitterアカウントをウェブサイトに掲載したTansaの辻記者。焦ったアカウントの持ち主たちが開いた「作戦会議」とは…。

「警察が動かざるを得なくなったら最悪」性的画像拡散の加害者グループ「作戦会議」に潜入してみたら…

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