「これって去年の売れ残り?」ユニクロ&ジーユーの「製造年」「投入シーズン」を簡単に見分ける方法
ユニクロといえば「定番商品」が多いイメージがあるけど、実は…
数年前からアパレル企業の売れ残り在庫量の多さが問題となり、不良在庫を削減するために仕入れ・生産数量の厳格化が叫ばれてきました。しかし、必要な物を必要な量だけ仕入れる・作るということはアパレル業の理想ではあるのですが、実はこの作業が最も難しく、どんなベテランの凄腕マーチャンダイザー(MD)でも百発百中で完売させることは実現できません。
そういう現状を鑑みて、業界の中からは「ベーシックな定番アイテムを設定して長い年月販売すれば良い」というアイデアが提案されることになりました。そのモデルケースと捉えられた一つにユニクロがあります。
ユニクロの商品、特にメンズは「定番」と呼ばれるアイテムが多く存在します。例えば半袖Tシャツ、ストレートジーンズ、スエット(トレーナー)、スエットパーカなどなどです。一部で新色・新柄の投入はありますが、基本的には何年間もさほど違いが見えず、ずっと同じ物を売り続けているようにも見えます。
しかし、それは「見えるだけ」です。まず、ユニクロは定番アイテムであっても毎シーズンどこかしらの部分に細かい改良が加えられています。また改良ではなく、単に生産の関係上、少し変化する場合もあります。ユニクロが「何年間も同じ物を売り続けている」というのは大いなる誤解で、毎シーズン少しずつ変化している・させているのが実態です。
値下げしても売れ残った商品は…
次にユニクロの商品には必ず「年度番号」と「季節番号」が付与されています。業界外の人からすると「なんのこっちゃ?」でしょうが、これは、ユニクロは全アイテムを年度と季節によって管理していて「基本的には」その年度内での売り切りを理想としているということの証明となります。何年間にもわたって売り続けるつもりであるなら「年度番号」は必要ありません。
仮に1型あたりの生産枚数が1000~3000枚程度であれば、ユニクロの店舗数と売れ行きから考えると単年度内で売り切ることは余裕で可能ですが、1型あたり何十万枚・何百万枚という大量生産ですから、商品によってはユニクロでさえ売り切ることができない物もあります。
もちろん売れ行きが鈍い商品は値下げを繰り返してなるべく売り切る努力をユニクロはしますが、それでも売れ残ることはあります。そうなると、シーズン末には一旦格納しておいて、また半年後に店頭に値下げしたままの価格で並ぶことになります。例えば、春夏物なら夏の終わりには格納して、冬が終わった後の来年の春先に値下げした状態で店頭に並ぶというわけです。
デザインに特徴のある商品なら「これは昨年の物だ」と判別できますが、デザインに特徴が無いベーシックな商品の場合、昨季物と今季物の区別ができない人が多いことでしょう。
冒頭で書いたようにユニクロの全商品には必ず年度番号と季節番号があり、値札と製品の内側の洗濯表示タグにそれが印刷されています。今回はその判別方法をお伝えしたいと思います。
「年度番号」と「季節番号」
たまたま自宅に残っていた21年の秋の終わりに買ったスエットパーカの値札を例にとります。
値段のバーコードの上に2行の数字が並んでいます。
- 341-443822
- 02-006-000(13-14)
と並んでいます。この数字の()の部分に年度番号と季節番号があります。
この値札ですと、(13-14)ですが、このうち、ハイフンの前の13が年度番号と季節番号になります。
13のうち、1が年度番号で21年を表しています。そして3は季節番号で秋を表しています。ですので、13で21年秋物という意味になります。
年度番号は0~9まであり、季節番号は1が春、2が夏、3が秋、4が冬となっています。例えば、2020年だと0、21年だと1、22年は2、23年が3ということになります。そして2029年が9となり、2030年はまた0に戻ります。
「じゃあ2010年商品と2020年商品の区別ができないじゃん?」
という疑問を持たれる方もおられるかもしれませんが、それについては全くもって問題ありません。なぜなら、単年度で売り切ることを理想としているユニクロですから、1年前か1年半前くらいの売れ残りはありますが、10年前の在庫が残っていることはあり得ません。ですから、2010年商品と2020年商品と2030年商品が判別できないということは無いのです。
ちなみにジーユーの商品も同じ年度番号と季節番号制度になっています。たまたま自宅に残っていた22年夏物の値札には、バーコード部分の上に
18-0004-000 341-344035(22-01)
と並んでいますが、()内の22が年度番号と季節番号です。22年の夏物を表しています。
値札を捨ててしまっても…
値札だけでなく服の裏に縫い付けられている洗濯ネームにもこの番号は印刷されていますから、値札を捨ててしまっても洗濯ネームの番号さえ見れば、いつの商品なのか分かるというわけです(2010年代に買ったのか、2020年代に買ったのかという記憶だけは必要ですが)。
これを知っていても特に役立つ場面はほとんどありませんが(笑)、ユニクロとジーユーの服を何年間か着て過ごし「そういえば、この服は一体何年間くらい着ているのだろうか??」と疑問を持った時に解決できることだけは間違いありません。
洋服の傷み具合は着用回数と洗濯回数の多さに比例するのですが、仮にそれが多かったとしてもユニクロとジーユーの服はどれくらいの耐久性があるのかという正確な判断基準とすることができます。
そんなわけで、一度、手持ちのユニクロ服、ジーユー服がいつ作られた物なのかを調べてみるのも面白いかもしれません。
- 取材・文:南充浩(みなみみつひろ)
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。