<figure id="attachment_302360" aria-describedby="caption-attachment-302360" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b292aa2d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/edb68a67e6ddfef47fcd81440dfda499.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302360" class="wp-caption-text">「ようやく父のことについて、語ることができる心境になりました」と陽子さん</figcaption></figure>
１月30日にすい臓がんのため74歳でこの世を去ったロックバンド『シーナ&amp;ロケッツ』のボーカル＆ギター・鮎川誠さん。２月４日に行われた葬儀には彼の死を惜しむ4000人のファンが詰めかけた。70年代から日本のロック界を牽引し、最後まで走り続けたレジェンドの最期、そして父親としての素顔を長女の鮎川陽子さん(46)が語る──。
「最初は、父は病院嫌いだったこともあり、体調不良程度に考えていて、病院に行こうとはしなかったんです。でも徐々に吐き気が出てきたり、体重が少し減り始めて異変を感じていました。それでツアーの合間に娘３人で父を説得してむりやり病院に連れて行ったら、血液検査で大変な状況だということがわかり、緊急入院を勧められたんです。３日間、検査入院をして調べたら、すい臓がんでした。
最初は初期の状態だという話だったのですが、すぐに余命５ヵ月と言われました。11月ぐらいまでは胃が少しだけ痛むくらいで、そんなに痛みもなくて、自覚症状はほとんどありませんでした。いつも父はライブになると若者になるというか(笑) 、本当にこれまで通りのエネルギーで演っていて、歌いづらいとか弾きづらいとかそういう姿を見たことはありません。だから病気だということが信じられないほどで、本当は大丈夫なんじゃないかなという気もしていたんです」
陽子さんの言葉通り、鮎川さんが昨年こなしたライブの数はここ数年でも最多の43本。全国を飛び回り、11月には沖縄、宮古島でもライブをするなどいつにも増して精力的に活動していた。
「ここ２～３年、コロナ禍でまともにライブができなかった。だから父の意向もあって、昨年はライブをたくさん入れていたんです。正直、もっと安静にしていたほうがいいのでは、と思ったこともあります。もともと74歳だし、それなのに本当にハードなスケジュールを毎回こなしていました。ライブでは３時間のステージをやることもあります。だから、あまり無理しないでほしいと思うこともありました。いまライブをやって寿命を縮めることはないんじゃないかと。
でも父は『全然大丈夫よ』ってまったく取り合ってくれません。双子の妹の純子はマネージャー、一番下の妹のルーシーはボーカルなので二人はずっとツアーに同行しています。その二人が言うには、『ライブが生きがいだからやりたい』ってお父さんも言っているし、ファンの方たちにも元気になってもらえるから、やらせてあげたほうがいいよ、って」
鮎川さんの病気のことを知っていたのは陽子さんら家族だけで、バンドのメンバーにさえ、知らせなかったという。それは鮎川さんたっての希望だった。
「父は病気のことは誰にも言いたくなかったんです。自分はお客さんを元気にする存在だから、お客さんには心配かけたくないって。死ぬまでロックをし続けるって言っていました。治療も抗がん剤はやらなかった。病気のことを知った時点で、半分は覚悟していたんだと思います」
ステージの舞台袖で、マネージャーの純子さんは鮎川さんの無事を天国のシーナさんに向けて祈り、ルーシーさんも、もしもステージで何かあったときにはすぐに駆け付けて身体を支えられるよう、常に準備をしていたという。そんな周囲の支えもあり、12月19日まで、鮎川さんはいつも通りのステージを演り切った。
「12月31日の大晦日ライブに出られなくなったのは、突然のことでした。当日、本人は出るつもりでいたんですけど、病院で診てもらったら思ったよりも状況が悪くなっていて、『無理をすると何が起こるかわからない』と、ドクターストップがかかってしまったんです。在宅で先生に来ていただけることがわかったので、自宅で療養生活に入りました。２月にも大きなライブが控えているし、それまでに回復したいと父は思っていたようです。
そのときの父は普通に生活できていて、先生の言葉が大げさな心配のようにも思えました。それでも心配でしたから、姉妹３人で８時間ずつローテーションを組んで、24時間ずっと父のそばについて過ごすことに決めました。できるだけ身体にいいものを食べてほしくて、食事について皆で考えたり……」
<figure id="attachment_302361" aria-describedby="caption-attachment-302361" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ddc0932c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/e236185c1b82ee8127f52ee0acc77a5d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302361" class="wp-caption-text">「いまでも父がすぐそばにいるような気がしています」</figcaption></figure>
だが、大丈夫そうに見えても、やはり病魔は鮎川さんの身体を蝕んでいた。亡くなる少し前まではパソコンで選曲をしたり、ギターを弾くこともできた鮎川さんだが、強い痛み止めを使うようになってからは、意識がボーッとした状態になる時間が多くなっていったという。そんな中で陽子さんは最後に交わした会話を覚えている。
「ちょうどその時期に、私は自分の絵の個展の準備をしなければならなかったのですが、ただ、父に見られたら気を使わせてしまうので、台所でこっそり絵を描いていたんです。でも、気づいたら、寝ていたはずの父が近くに立っていて、急に『ワォ！』と声を上げた。驚いて何も言えずにいたら、父は『みんなを幸せにする絵を描いてね』って言ってくれて……。嬉しかった。それが父との最後の会話になりました」
そして最後の瞬間が訪れる。
「父がベッドで朦朧とした状態になり、どんどん死が迫ってきているときに、シナロケ（『シーナ&amp;ロケッツ』、以下同）のＣＤをかけていたんです。昔のライブ盤で、ちょうど母のシーナがメンバー紹介をしているシーンでした。父は目を瞑っていたんですが、よく見ると左手がギターのネックを持つような形になっていて、右手でかき鳴らすようにこう……それを何度も繰り返してやっていた。父は最後の瞬間までライブでギターを弾いていたんです。大勢のお客さんの前で、きっと母も近くにいて、幸せな気持ちで……」
<div data-friday-nextpage-lead="家庭では…"></div>
<figure style="width: 2592px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="de3b6bdb"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/DT_1251.jpg" alt=""></a><figcaption class="wp-caption-text">１月29日に亡くなった鮎川誠さんの「ロック葬」</figcaption></figure>
陽子さんにとって家族とはイコール『シーナ&amp;ロケッツ』そのものだったという。小さい頃は北九州のシーナさんの実家に預けられており、小学校に上がるときに東京で両親と暮らすことになった。当時『シーナ&amp;ロケッツ』はすでにスターだった。
「両親と外出すると、人に囲まれたりジロジロ見られたりするし、ちょっと緊張して歩いているようなところはありました(笑) 。でも、一緒に海外アーティストのライブに出かけたり、いつもそれがすごく楽しかったりもして。地方のライブのときは留守番でしたけど、東京でのシナロケのライブには欠かさず行っていました。ライブがないときは、ごく普通の家庭と同じでしたよ。母は料理が好きだったんですが、いつも量がすごく多くて、おでんのときなど学校給食みたいに大きい鍋で作るんです。家に招かれた人たちは、たいてい量にびっくりしていましたね。でもすごく美味しかったですよ。
父はいつも考え事をしている感じで、自分からはあまり話しかけてきたりしない人でした。こちらから話しかけると喋ってくれるんですけど、自分があまり興味ない話だと『ふーん』くらいで終わっちゃって会話にならないんです。音楽の話だと、話し始めたら止まらないくらいいっぱい喋るのに(笑)」
普段は両親との仲はよかったが、躾は厳しく、反抗期の時期など、時にはぶつかることもあった。だが、それでも両親のことは大好きだったと陽子さんは言う。
「門限もあって、私が部活で遅くなり６時半を過ぎても帰ってこないと、学校に電話をするほどでした。また、学校に行くときにスカートを短くしたりするのを見つかると大変で、すごく怒られました。父は『外には魔物がおるけ』って言ったりして(笑)。高校生くらいのときには、それでぶつかったりすることもありました。相手はたいてい母ですけど、父も必ず母に味方するんです。でも、それで両親を嫌いになったりすることはなかったですね(笑)」
<figure id="attachment_302364" aria-describedby="caption-attachment-302364" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="16f8f3a6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/83f72ee75a8ffc636f8b8379bde5d33c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302364" class="wp-caption-text">「娘たちに見守られながら、旅立って……幸せだったと思います」</figcaption></figure>
「両親を支えないと」という気持ちは小さい頃からあったそうだ。地方のライブで両親が不在のことも多いため、料理を覚えたのも早いという。それは幼い頃に両親を応援していた祖父母の影響だった。
「友達がビックリするくらい両親には気を使う子供だったと思います。『そんなに気を使うの？』ってよく言われました。幼い頃から二人を応援している祖父母の姿を見ていたので、東京で両親と一緒に暮らし始めたときも、ずっと近くで応援している気持ちだったんですよね。両親も、『今度レコーディングがあるんよ』とか、『こんな曲作ったよ』など、仕事のことも全部話してくれたし、できあがったばかりの曲を皆で聴くこともありました。友達みたいな、兄弟みたいな関係でもあったんです」
デビュー以来、休むことなく活動を続けてきた『シーナ&amp;ロケッツ』にひとつの転機が訪れたのは2015年のこと。シーナさんが子宮頸がんのため亡くなったのだ。
「娘としてはとにかく父が寂しい思いにかられてしまうのが心配だったんです。でも父は『シーナ&amp;ロケッツ』を続けていくと決意していて、メンバー３人になったシナロケで１年かけて日本全国をまわることにした！って言ったんです。47都道府県だからちょうど47（シーナ）。長年応援してくれた全国のファンに直接お礼を言いたいし、ステージに立っていると母と一緒にいられる感じがすると、言っていました。
そんな父を娘全員で応援しました。そして徐々に、三女のルーシーがシナロケのゲストボーカルとして参加するライブの本数が増えていき、19年には正式なバンドメンバーとなって、ボーカリストとしてステージを支えていました。新しい曲や長年ライブではやらなかった曲まで演奏したり、毎回進化していくようなステージが繰り広げられていました。本当にかっこよかったです」
最後までロックを貫いて前に進みつづけた人生だった──。
<figure id="attachment_302363" aria-describedby="caption-attachment-302363" style="width: 1680px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a8f1584f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/55ead211ce22e7c2748300ff9e414757.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302363" class="wp-caption-text">あゆかわようこ／76年、北九州市生まれ。モデル、画家。ファッションモデルとして、パリコレクションなどで活躍。現在は画家として活動中。 鮎川誠さんの誕生日にあたる５月２日には、東京『下北沢シャングリラ』で、追悼ライブが開催される予定</figcaption></figure>

「ようやく父のことについて、語ることができる心境になりました」と陽子さん １月30日にすい臓がんのため74歳でこの世を去ったロックバンド『シーナ&amp;ロケッツ』のボーカル＆ギター・鮎川誠さん。２月

「意識朦朧とする中でもギターを弾く仕草を…」娘・陽子さんが語った『シナロケ』鮎川誠さんの壮絶最期

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