<h2>東日本大震災の現場で感じた支援の&#8221;コントラスト&#8221;</h2>
「多くの人が死に、見捨てられている紛争地を対岸の火事とは思えず、『救える命があるなら俺が救う』と思い、この仕事に就きました」 
そう話すのはテロ・紛争解決に取り組む国際NGO団体『アクセプト・インターナショナル』代表・永井陽右(ようすけ)氏(31)だ。彼は、東アフリカに位置するソマリアを中心とする紛争地域で、テロ組織の投降兵や受刑者の脱過激化、及び社会復帰支援活動などに取り組んでいる。
<figure id="attachment_303137" aria-describedby="caption-attachment-303137" style="width: 1672px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f9213450"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/image_6483441.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-303137" class="wp-caption-text">NGO団体『アクセプト・インターナショナル』の代表を務める永井陽右氏(31)(濱﨑慎治/撮影)</figcaption></figure>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
ソマリアは30年以上内戦状態が続いており、&#8221;地球で一番危ない場所&#8221;と呼ばれることもある。ウクライナやシリアなどに比べると「国際社会的な優先順位が低い」と事実上みなされており、国際団体や人道支援の手がほとんど行き届いていない。そんな誰も足を踏み入れようとしない地で、紛争解決に向けた活動を始めたキッカケはなんだったのだろうか。
「’11年4月に早稲田大学に入学したての頃、大震災をうけて、東日本大震災で被災した気仙沼や陸前高田へ、瓦礫撤去のボランティアに行きました。東北のために各地の人々が活動をする姿や、世界中から集まってくる支援を目の当たりにして私が感じたのは、同じ’11年に年間26万人も死者が出ているソマリアには誰も注目していないという&#8221;コントラスト&#8221;でした。
私は早速、ソマリアで人道支援活動をするべく、大人たちの知恵を借りようと実際に人道支援に関するNGOで働く人々に話を聞きに行きました。しかし、みな口を揃えて『ソマリアは危なすぎるからやめておけ』と私を諭すだけでした。今、地球上で苦しんでいる人間がいるのに、支援がしやすい地域の人々を助けるだけでいいのか……いいワケがない。そんな、大人への失望と怒りとが自分のエネルギー源になり、『何ができるかわからない。けれど、やるべき問題はわかっている。俺が命を救うんだ』と活動を始めました」
<figure id="attachment_302025" aria-describedby="caption-attachment-302025" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="af756ac1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2025/03/a03c2e177155b6af1cdb7f8e1390dce9.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302025" class="wp-caption-text">永井氏と現地政府軍のメンバー。政府軍と協働で活動に取り組んでいる</figcaption></figure>
永井氏は大学在学中にNGO団体『日本ソマリア青年機構』を設立。’17年の春からは同機構をNPO法人化し、現在の『アクセプト・インターナショナル』に名称を変更。代表理事に就任したのち、現在の活動に従事している。
<div data-friday-nextpage-lead="護衛が全員即死した…！　決死のソマリア和平活動"></div>
<h2>護衛が全員即死…「怖くないと言ったら嘘になります」</h2>
前述の通り、ソマリアは非常に治安が悪く、いつ命を失ってもおかしくはない。実際に、行動を共にしていた人々や、仕事で連携していた軍の人々が死んでいくのを幾度となく目にしてきた。
「怖くないと言ったら嘘になります。自分もいつ死ぬかわからないですし。実際、路上に爆発物が仕掛けられていて、私の護衛が5人全員即死するということもありました。違う車両で私も同じ道を通過しており、たまたま私の車が爆発物に接触しなかったため助かりました。
現場ではずっと緊張感が漂っていますし、恐怖に慣れることはないです。ただ、自分ひとりの仕事ではなく、多くの人の想いや意思を乗せて働いているので、止まっているわけにいかないのです」 
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<figure id="attachment_302026" aria-describedby="caption-attachment-302026" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1640a7d1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2025/03/08ec6159d0d139a67ccebffe24e70c49.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302026" class="wp-caption-text">現地を移動する際は装甲車を使用している。装甲車内部の様子(右：永井氏)</figcaption></figure>
<h2>テロ組織の人間でも、現地人でもないからこそ、できることがある</h2>
NGO団体の名前、『アクセプト・インターナショナル』は、永井氏の活動理念である「受け止める、受け入れる」に由来している。過去に人をどれだけ殺していようが、テロを起こしていようが、まずは「受け止める」。この姿勢こそが、誰も介入したがらない紛争地域でテロリストの脱過激化を進める支柱となっている。
「『まず受け止める』というのは、第三者的立場だからこそ可能な態度なのですが、紛争解決には必要な要素だと思っています。身近な人を殺されたら、多くの人は感情が前面に出て、加害者(テロ組織やギャング)を許せなくなります。彼らを支援するなんてもってのほか。それって当然の話ですよね。
だからこそ、自分みたいな第三者が紛争を解決する上で重要なのです。究極、自分なんて部外者です。テロ組織の人間でもなければ、現地の人でもない。だからこそ、複雑な感情を意識的に押し殺して、紛争解決のプロとして、冷静に最善の選択を追求することができる。また、そうするよう努めています。結果として、武装勢力から抜けたい構成員に投降・武装解除を促し、社会復帰への支援をするという、困難な活動を進めています」
<figure id="attachment_302029" aria-describedby="caption-attachment-302029" style="width: 750px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="03447f22"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2025/03/ef44144d61e5684cf1a398dc1a1048fa.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302029" class="wp-caption-text">テロ組織からの投降兵を迎えている様子。投降の後は、社会復帰プログラムを受けることができる</figcaption></figure>
命をかけて多くの若者を救ってきた永井氏だが、救えなかった命もあり、挫折もあった。だた、世界を変える&#8221;ある目標&#8221;のために走り続けるという。
「ほとんどの人ができない最前線での活動は増やし続けます。ただ、目の前の現場レベルのことだけをやっていてもテロや紛争のない世界は実現することができない。根本的に状況を変えるために、国際規範を作ることを目指しています。10年はかかると思うし、国際法の枠組みを変えるのは大変だと思います。しかし、誰かがやらないとテロと武力紛争は終わらない。誰かがやらないといけないことを誰もできていないのなら、自分がやるだけです」
<figure id="attachment_302032" aria-describedby="caption-attachment-302032" style="width: 5184px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="cd3d029a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2025/03/SH542552.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302032" class="wp-caption-text">国際規範の作成に向けた道筋を語る永井氏(濱﨑慎治/撮影)</figcaption></figure>
人の命を救うため、自らの命を懸ける。今日も永井氏は異国の地で紛争解決に奔走している。
<figure id="attachment_302028" aria-describedby="caption-attachment-302028" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9c37f4a4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2025/03/0fa859d6ba6fcae0be26ac9ca07aa9c3.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302028" class="wp-caption-text">投降兵たちが社会復帰に向けた座学のプログラムを受けている様子</figcaption></figure>
<figure id="attachment_302027" aria-describedby="caption-attachment-302027" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="08ac503a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2025/03/638eeb1a262d83656d5476c7127eb2b5.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302027" class="wp-caption-text">座学以外にも、具体的なリスキリングのプログラムもある</figcaption></figure>
<figure id="attachment_302024" aria-describedby="caption-attachment-302024" style="width: 1200px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f96dc0f8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2025/03/e5cf61f3b15e905e69177d3230cb2dcc.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-302024" class="wp-caption-text">現地の食事の様子。ミートソースのパスタにバナナを加えて食べるのが一般的</figcaption></figure>

東日本大震災の現場で感じた支援の&#8221;コントラスト&#8221; 「多くの人が死に、見捨てられている紛争地を対岸の火事とは思えず、『救える命があるなら俺が救う』と思い、この仕事に就きました」 

護衛が全員即死した…！31歳の紛争解決人が異国の地ソマリアで命を懸けるワケ

あなたへのオススメ

関連記事