デビュー35周年記念インタビュー”天才漫画家”藤田和日郎が明かす「正義のヒーローの描き方」 | FRIDAYデジタル

デビュー35周年記念インタビュー”天才漫画家”藤田和日郎が明かす「正義のヒーローの描き方」

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『うしおととら』『からくりサーカス』に
少年たちは誰もが胸を熱くした
「『マッチ売りの少女』が僕の作品の核なんです」

「なりたかった漫画家になれて、描きたいものを描けていることが嬉しい。辛いことは予想内」と語る藤田氏
「なりたかった漫画家になれて、描きたいものを描けていることが嬉しい。辛いことは予想内」と語る藤田氏

「『マッチ売りの少女』が嫌いでね。かわいそうな子がかわいそうなまま終わるって、エンターテインメントとしてどうなんだと。だから僕は、『うしおととら』を描き始めて3年くらい経った折り返しの頃、『月光条例』という作品の中で童話を修正する話……マッチ売りの少女を助けるような話を描いた。そしたら空っぽになって、作品のストーリーが浮かばなくなった。あんな経験は初めてでしたよ。つまり、僕にとって『マッチ売りの少女』は創作の起爆剤。嫌いなものを違う形で描く、それが僕の”核”なのです」

’88年の『連絡船奇譚』でデビューしてから、今年で画業35周年を迎えた漫画家・藤田和日郎(58)。代表作『うしおととら』は、主人公の少年うしおと妖怪″とら″が大妖怪″白面の者″を倒すまでの物語を描き、累計3000万部以上を売り上げた。藤田氏にとって、35年間は「あっという間だった」という。

「司馬遼太郎先生も著書で仰っていましたが、″描きたい世界の体″にならないといい作品は描けない。今、『モーニング』で連載中の『黒博物館シリーズ』は19世紀のロンドンが舞台。だから19世紀の世界に入り込むために本を読んだり、当時を描いた映画を観たり、史跡へ出向いたり……やることがあり過ぎて、あっという間に時間が過ぎるんですよ」

入念な取材をもとに描かれる妖怪やオカルト、ホラーなど日常から切り離された世界観が多くの読者を魅了してきた。

「テーマが独創的と言われるけど、僕はシンプルに描きたいものを描いているだけ。『からくりサーカス』だったら、小さい男の子がグラマラスな女性に操り人形の操り方を習っている絵。描いていくうちに人間関係などの話が展開していき、あたかも最初から考えていたテーマがあったかのように物語を支配しちゃっていることはありますけどね。

35年間、走り続けてこられた理由は単純なんです。僕は自分が喜んでいたものを読者にも見てほしい。受験勉強や親に叱られた時、人生の重大な局面に立った時……綺麗事じゃなくて、漫画に救われることって多いんですよ。そういう面白い作品を僕は描きたい。その際のハードルになるのが、小さい頃の自分です。『お前ちょっと楽してない?』『俺はこういう絵が見たい』って自分に言い聞かせながら描いてきましたが、その作業が楽しくてね」

ほぼ少年漫画一筋35年。過去に一度だけ少女漫画を描いた経験があるという。

「いがらしゆみこ先生の『キャンディ・キャンディ』世代なので、少女漫画の男性作家枠に憧れていたことがあるんですよ。当時は少女漫画のほうがサスペンスやアクション、恋愛など幅広いジャンルを自由に描けるような気がしていたんです。ただ、今まで描いてきた作品を振り返れば、当時の理想は実現できた気がします。描きたいものはまだある。僕のゴールはまだまだ先なんでしょうね」

″小さい頃の自分″はどこまでも、漫画に貪欲なのだろう。

本誌未掲載カット 藤田和日郎・唯一無二の天才漫画家 が明かす「正義のヒーローの描き方」
本誌未掲載カット 藤田和日郎・唯一無二の天才漫画家 が明かす「正義のヒーローの描き方」
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本誌未掲載カット 藤田和日郎・唯一無二の天才漫画家 が明かす「正義のヒーローの描き方」

『FRIDAY』’23年3月31日・4月7日合併号より

  • PHOTO小檜山毅彦

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