岡崎体育が語るブレークの舞台裏「実家から音楽界に革命を起こす」
「引きこもり」だったミュージシャンが大ブレーク!
「今も実家で曲作ってます。すごく幸せです。夢がどんどん形になっていって」
岡崎体育、29歳。音楽ビデオあるあるを大胆に集めた『MUSIC VIDEO』や、英語にしか聞こえない日本語ラップの『Natural Lips』など、ひねりの効いた楽曲で大ブレーク中のアーティストだ。2018年は、夏の大型フェスに13本も出演。『MUSIC VIDEO』は、YouTube再生回数が3400万回を超えた。京都府宇治市の実家で暮らしている。
「大学を卒業して、IT系企業に就職したんですが、音楽がやりたくて半年で辞めました。そこからひたすら引きこもってましたね。デビューするにはとにかく曲作らなあかんと思って、小学生のときから使っている学習机で100曲作りました。親と、4年間やってメジャーデビューできなかったら一般企業に就職する、と約束して。のちのちデビューすることは想定していたので、構成を考えたりしながら、ずっと曲ばかり作ってました」
実家にこもり、ひたすらパソコンに向かう日々。
「ライブではお客さんぜんぜん呼べなかったので、出演ノルマをバイトで稼いで。ライブハウスにお客さん2~3人しかいないんですよ。でもその時点で、30歳までにさいたまスーパーアリーナでワンマンライブをやると目標を決めて、ことあるごとに言ってました」
自宅とバイト先のスーパーを往復しながら、一心不乱に音楽を作る。そんな生活が2年続いた。
「奈良で、初めてワンマンライブをすることになって。お客さん100人呼ぶと宣言して、見境なくSNSで告知して、チケット手売りしてやっと100人集めたんです。そうしたら当日、大きな台風がきて。在来線全部止まって。誰もこないだろうと思ってステージに出たら70人くらいきてくれてた。めちゃくちゃ嬉しかった」
約束の「4年」を半分過ぎたころ、大阪で新人発掘をしていたメジャーレーベルからようやく声がかかった。
2016年。地元京都にちなんだ架空の音楽ジャンル「盆地テクノ」と銘打ってついにメジャーデビューを果たす。
「目標を立てるのは簡単ですけど、いつまでにと期限つけたり、何回とか何枚とか数量決めるのが重要やと思う。なので僕はずっと、具体的な目標を立ててきました。子どものころから、夏休みの宿題は、あとで遊びたいからさっさとやるタイプ。でも、周りの友だち誰も終わってなくて、結局ひとりで遊ぶとか(笑)。デビューアルバムと2枚目では、笑ってもらえる曲、キャッチーな曲で、とにかく岡崎体育の名前を知ってもらおうと思った」
目標の通り、岡崎体育の名前はじわじわと広がる。『ポケモン』のOP(オープニング)曲、ED(エンデイング)曲を作ったり、NHK朝ドラ『まんぷく』で俳優デビューもした。
「3枚目のアルバムでは、奇をてらった曲を封印しました。ここからはもっと深い岡崎体育を知ってもらいたいんです」
「さいアリ」を満席にしたい
泣けるバラード『龍』、ぼっちの大学生活を仔細に描いた『弱者』や『なにをやってもあかんわ』でリアルな心情を歌い、『からだ』PVではキレキレに踊るなど、渾身のかっこいい音楽を詰め込んだ。
「6月9日に、さいたまスーパーアリーナでワンマンやります。1万6000なんとしても満席にしたいので、泥臭くチケット売らなあかんのです」
全国ホールツアーと全力営業活動のなか1月18日、ウイルス性胃腸炎とインフルエンザで倒れ、大阪公演がキャンセルになるという痛恨の事態に。が、ツアー最終の1月25日は、いつも通りひとりで、東京・NHKホールの舞台に立つ予定だ。
「ステージではいつも、PC1台、マイク1本と自分。身一つで音楽流してパフォーマンスします。『さいアリ』の大ステージでも、同じスタイルでやります。
僕が実家にいて田舎発信の音楽をすることで、地方でも音楽できる、なんでもできるって思ってほしい。日本の音楽が、もっと盛り上がったらいい。お金ないからとか、諦めるのはもったいないです。6月は実家から、さいたまに行くんです。それが夢だったから。親に感謝してます」
引きこもり時代に思い描いた「第1章」は、『さいアリ』で完結する。そして岡崎体育の夢は「第2章」へと続いていく。
- 撮影:福岡耕造