今年の暑~い夏休みは「大人の社会科見学」に行こう!

ジェット機の整備工場に入れるJAL、試飲ができるサントリー、生産ラインに入れるトヨタ他 無料で参加できるモノや、見学会でしか口にできない非売品が楽しめるツアーも!

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羽田空港の「M2ハンガー」(「ハンガー」とは格納庫のこと)。「ツアーは内容が充実していて100分間は短く感じると、参加者の方々から好評をいただいております」(杉原さん)

暗い廊下を抜けると、そこにはサッカーフィールド3面分(約2万500㎡)の広大な格納庫が広がっていた。駐機しているのは日本航空のボーイング737―800、2機の767―300、777―200の4機。いずれも全長約40〜60mの巨大ジェット機だ。整備士が忙しそうに点検している。

案内役の元客室乗務員、杉原久乃さんが笑顔で記者に話しかける。

「格納庫に4機もいるのは珍しいです。お客様はラッキーですよ。機体には7mほどの距離まで近づけるので、大きさを実感できます。主翼についているエンジンだけでも、直径約3mありますから。羽田空港(東京都大田区)での見学会は’50年代から実施していますが、航空会社の格納庫を見られるのは世界的にもレアなことらしく、外国からのお客様も大勢いらっしゃいます。中には50回以上参加されている方もいるんです」

有名企業の工場や、貨幣や勲章の製造現場の舞台裏が見られる「大人の社会科見学」が大人気だ。中には無料で参加できるモノや、ビールやお菓子、見学会でしか口にできない非売品が楽しめるツアーもある(一覧表参照)。

300以上の施設をめぐった『オトナのための社会見学ガイドブック』(学びやぶっく)の著者、群青洋介氏が話す。

「よく乗る車や飛行機、有名な商品でもどういう過程で作られているのか、一般的にはあまり知られていません。その一部始終を見られるのが、工場見学の最大の魅力です。例えばビールでも、作り手や管理者の顔がわかれば味わいがだいぶ違ってきます。そこでしか飲めないお酒が味わえたり、ツアーでしかもらえないお土産が充実しているなど、各企業も工夫をこらしている。大半の見学会は1〜2時間で、費用も1000円以内とお手頃です。家族連れでも十分楽しめます」

本誌記者が実際に体験した社会科見学の魅力を紹介しよう。

サントリー「山崎蒸溜所」(大阪府三島郡)。シングルモルトウイスキーのテイスティングができる

トヨタ自動車の生産ラインを見学(写真の車種はプリウス)。電気配線などの部品を組み付ける様子

有名企業の工場はお得なサービス満載!

「こちらは、実際にパイロットが訓練用に使っていたコックピットです。元々は『スーパー80』の愛称で親しまれた、163人乗りのジェット機『DC9―81型機』に使われていました」

前出の日本航空の元客室乗務員、杉原久乃さんの説明を受けて入ったコックピットは2m四方ほどの広さだった(下の写真)。圧倒されるのが、ボタンやレバーなど装置の多さ。実際に操縦するとなると相当戸惑いそうだが、飛行機好きの記者としては機長席に座っているだけでワクワクする。

「見学ツアーは1日5回、無料で行っております。1回の参加者は100人ほどです。昨年は13万8565人の方が見学されました。年代は、小学生から90代の方までさまざまです。案内係は50人ほどいますが、みな元パイロットや整備士、客室乗務員など現場経験者ですよ。ツアーは日本の航空の歴史を学んでいただく『航空教室』が約30分、コックピットなどが見られる『展示エリア見学』が約20分、『格納庫見学』が50分ほどのタイムスケジュールです。大人の方に人気なのは歴代の制服展示コーナーや、パイロットや整備士の服を試着できる制服体験コーナーですね」(杉原さん

お酒を楽しめるツアーも人気だ。サントリーの「山崎蒸溜所」(大阪府三島郡)では、シングルモルトウイスキー「山崎」の仕込みから発酵、蒸溜、熟成など製造工程を見学できるだけでなく、実際にテイスティングもできる。参加費用は一人1000円だ。

「年間約13万人の方に参加していただいております。温度などにより刻々と変化するウイスキーの濃厚な香りを、80分ほどの見学会で楽しめます。また『山崎ウイスキー館』には、サントリーの創業期から作られた約6000本のウイスキーが展示されている。蒸溜所でしか味わえない原酒(非売品)を飲むこともできます。参加者の方々からは『テイスティングの仕方がわかった。ウイスキーの香りをより楽しめるようになった』と好評です」(広報部・藤沢潤氏)

キリンビールの代表的ブランド「一番搾り」の主要拠点「横浜工場」(神奈川県横浜市)へは、年間16万人のツアー参加者が来場している。工場敷地内には2つのビアレストランがあり、見学後に食事も可能なのだ(食事は別会計)。

「参加費は無料です。1回の見学で参加できるのは35人。所要時間は80分ほどです。工場ではホップや麦芽に実際に触っていただけます。見学後には3種類の『一番搾り』(一番搾り、同プレミアム、同黒生)の飲み比べもできる。また別に麦汁の仕込み作業を実習していただき、オリジナルのビールを作る体験教室もあります」(キリン広報担当・畠山智子さん)

工場の内部を見られるだけでなく、お酒も飲めるお得なツアーだ。

日本航空「SKY MUSEUM」

実際に使われていたコックピットに試乗する。

制服体験コーナーでは現在使用されているパイロットなどの服を着て記念撮影ができる

サントリー「山崎蒸溜所」

博物館にはウイスキーや原酒の入った約6000本のボトルが並ぶ。

シングルモルトの香りが満ちている貯蔵庫。様々な樽が置いてある

キリンビール「横浜工場」

麦芽を湯で濾過(ろか)。検査と洗浄を終えパッケージングするまでの過程を見られる。

ビールの上に座っているように見えるトリック撮影も

地下500mでニッポンの未来を考える

子どもの頃に行った公的機関やエネルギー関連施設などへの社会科見学を、大人になって体験するのも興味深い。

向かったのは埼玉県さいたま市の造幣局「さいたま支局」だ。祝日を除く毎週月曜から金曜日に、無料で貨幣が作られる様子を見学できる。同局総務課広報室の岩崎光男氏が解説する。

「さいたま支局では、『プルーフ貨幣』(特殊な処理をほどこしたコイン。『天皇陛下御在位20年記念貨幣』など。通常の硬貨としても使える)を中心に製造しています。’16年10月の開局からの来場者数は10万人を超えました。所要時間は90分ほど。コイン収集家や、地方からのお客様の申し込みも多いんです」

瑞宝中綬章などの勲章製造過程も見られる。記念貨幣は機械によって作られるが、勲章はほとんどが手作業。熟練の職人が顕微鏡のような器具を使い、装飾をほどこしているのだ。

次に参加したのが、岐阜県瑞浪(みずなみ)市にある日本原子力研究開発機構「瑞浪超深地層研究所」だ。原発から出る放射性廃棄物の地層処分について研究している施設で、無料で地下約500mにある研究坑道を見学することもできる。

「入坑前にヘルメットや軍手などで安全な装備をしていただいた後、排水処理施設や換気設備についての説明を受けてもらいます。10人乗りのエレベーターで一気に地下へ行きます。全長417mの坑道のうち、150mほどを見ていただきます。見学時間は約1時間です」(総務・共生課の今村光晴氏)

地下に降りると意外と気温が高い。地熱の影響で、100m下がるごとに気温は2〜3℃上がるのだそうだ。

「外気が送りこまれているので、温度調整はされています。放射性廃棄物を安全に地層処分する研究は、40年以上続けられているんです」(前出・今村氏)

小泉純一郎元首相はフィンランドにある核廃棄物の最終処分場「オンカロ」を見て、脱原発の必要性を確信したという。夏休みに社会科見学をして、ニッポンの未来を考える――。そんな休暇の過ごし方もたまにはいいかもしれない。

造幣局「さいたま支局」

瑞宝中綬章などの勲章に細かい絵を描き入れる職人。博物館では日本最初の流通貨幣「和同開弥(わどうかいちん)」や江戸時代の大判小判も見られる

日本原子力研究開発機構「瑞浪超深地層研究所」

坑道は最大で高さ5m、幅は4.5mほど。原発から出る放射性物質の地層処分を実施するため、岩盤や地下水などの調査が行われている

撮影:会田 園 川柳まさ裕

Photo Gallary12

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