<figure id="attachment_301863" aria-describedby="caption-attachment-301863" style="width: 1263px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8e224864"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/56627abcf1eb0a87a38ac9bb9d38ce57.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-301863" class="wp-caption-text">2008年、塩崎氏はニューヨーク出張の際、坂本龍一氏の自宅にも訪問した（写真：前衆議院議員・塩崎やすひさの公式ホームページより抜粋）</figcaption></figure>
&#8217;21年１月に直腸がんの手術を受け、闘病中であることを公表した作曲家でピアニストの坂本龍一氏が死去したことがわかった。71歳だった。
今年１月に約６年ぶりのオリジナルアルバム『12』を発売。３月17日には小池百合子・東京都知事が定例会見で「神宮再開発を見直すべき」という趣旨の手紙を坂本氏から受け取っていたことを明かしていた。そんな坂本氏と、昨年７月に銃弾に倒れた安倍晋三内閣の下で官房長官、厚労大臣をつとめた塩崎恭久氏が中学時代からの友人関係にあり、都立新宿高校時代には２人が中心となって校長室を占拠してストライキを行っていたことはあまり知られていない。
２月末、塩崎氏が坂本氏との学生時代から最近に至るまでの思い出話や坂本氏の素顔を「FRIDAYデジタル」に語っていた。政治家を引退した今も社会の課題解決のために世界を飛び回る塩崎氏と音楽を通して困っている人を助けようとした坂本龍一氏は深いところでつながっていた。３月22日に公開した記事を再録する。
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<h3>「生意気で憎たらしい後輩（苦笑）」</h3>
「坂本君とは長い間、一緒にいて空気のようだけど、一緒にいると心地よいし、刺激を受ける。ピアノの蓋を閉める音も演奏の一部だ、と彼の口から聞いて、ああ面白い発想だな、と刺激を受けた時から何も変わっていないですよ」
そう明かす塩崎氏が坂本氏と出会ったのは57年前の世田谷区立千歳中学校のブラスバンド部だった。部長だった塩崎氏は部活をサボりがちな一学年下の大柄な少年に手を焼いた。「ちゃんと来いよ」と釘を刺すと、愛想笑いをしながら頷くもまた部活をサボった。それでいて発表日にはしっかり音を合わせてきた後輩が不思議でならなかったーー。
部長が内閣官房長官や厚労大臣を歴任した塩崎恭久前衆議院議員（72）。後輩が『教授』『世界のサカモト』と呼ばれる作曲家でピアニストの坂本龍一氏（71）だ。塩崎氏は虚空を見つめ、こう振り返る。
「その時は坂本君が芸大の先生からピアノと作曲を習っていると知らなかったし、もう大人の身体をしていたので顧問と相談し、金管楽器のバス・チューバを割り振った。部長の立場からすると、生意気で憎たらしい後輩でした（苦笑）」
２人は都立新宿高校へ進学した。塩崎氏はアメリカ留学のために一年休学し、帰国して復学すると二年生で同じクラスとなった。
「サンフランシスコ郊外で有意義な一年を過ごしました。’67、’68年当時はロックの最盛期で、フィルモア・ウエストやウィンターランドといった会場に通ったんです。ジミー・ヘンドリックスが舌ベラでギターを弾くのも見てしびれた。ホストブラザーがバンドマンで、エリック・クラプトンがいたクリームやジャニス・ジョプリンなどをライブで聴いていました。日本からジャッキー吉川とブルーコメッツのドーナツ盤を持っていって聞かせたけど、反応は薄かったかな。
帰国して、その時に買ったレコードを同級生となった坂本君に聴いてもらった。当時のサンフランシスコでは会場に椅子がなく、ヒッピーに囲まれて、地べたに座って聴いていたことを伝えながらですよ」
音楽を通してつながった２人だが、学校の試験が終わると新宿の伊勢丹のそばの小さな映画館に足を運んだ。２人ともヤクザ映画が好きで、よく観に行き、その他幅広く映画や演劇を見たという。
「’69年、アートシアター新宿文化で、蜷川幸雄さん演出の『真情あふるる軽薄さ』を坂本君と観に行った。南平台の稽古場で蜷川さんが役者たちをしごきまくっているのも２人で見ている。初日の舞台に行ったけど、客席も舞台の一部という演出で感動していたね」
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２人の体内に流れていた熱い血が、のちに高校でストライキを起こす原動力になった。
アメリカで主体性や多様性を肌で感じて帰国した塩崎氏は校則でがんじがらめな学校生活に嫌気が差し、学校全体を変えるために生徒会長に立候補した。
「サンフランシスコでは国語、体育、アメリカ史だけが必須で皆で受けたけど、あとは自由に選択できた。全盲の子も一緒に授業を受けていたし、その時は先生も一切、板書をしない。次の科目が一緒の人が全盲の人を当たり前のように次の教室まで連れて行った。私を担当してくれたスクールカウンセラーは車椅子で障害を持った方だったが、健常者とを区分けせず、彼らが日常に溶け込んでいました」
<div data-friday-nextpage-lead="２人が高校でストライキを行った時の中心だった"></div>
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<figure id="attachment_304257" aria-describedby="caption-attachment-304257" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6bdcbf03"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/1c45b513fb88928e146ec5ac51fa6022-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-304257" class="wp-caption-text">政治家は引退したが、インタビュー直前まで、省庁の関係者が塩崎氏のもとに相談に訪れていた（撮影：吉場正和）</figcaption></figure>
<h3>「忸怩たる思い、葛藤があると思う」</h3>
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高３の秋、校長室を占拠してストライキを行った。塩崎氏を筆頭に坂本氏、後にカメラマンで『アクションカメラ術』の著書で、石川さゆり氏と結婚する馬場憲治氏もいた。下級生も含めて数十人で生徒会長時に廃止となった制帽に加え制服や旧来型の試験、評価方法の見直しなど７項目を訴え、校長室を占拠した。
「学校の先生たちもその要求に真摯に向き合ってくれて、制帽がなくなりました。坂本君とは２人で東大の安田講堂にも行きましたね。ちょうど機動隊が突入する前日で、ビリビリとした雰囲気でした。
やはり学生時代に起きていたベトナム戦争が底流にありました。私がアメリカに留学中に戦争で兄貴を亡くし、呆然とした友人の姿をいまでも覚えています。モハメド・アリがサンフランシスコのシビックセンターで行った反戦集会でスピーチする姿も現地で見ているのです。反戦であり、平和のありがたみを高校生ながら必死になって考えていた結果が、ストライキを起こすことにつながったのです」
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交流は続き、’80年代、テクノミュージックで一世を風靡した坂本氏が誇らしくもあったが、寂しさも去来したという。
「&#8217;80年から’82年まで私は日銀マンとしてハーバード大学大学院で学んでいた。そこの生協にYMOのアルバムが置いてあった。置いてあるだけでなくコーナーまであった。『坂本は世界に羽ばたいな』と嬉しい反面、『俺には何もないな……。肩を並べられないな』と強い出遅れ感はあった」
それで’93年、塩崎氏は衆院選で初当選。「政策新人類」と呼ばれ、安倍晋三元総理らと永田町で頭角を現していった。
一方の坂本氏は’87年の『ラストエンペラー』でアカデミー作曲賞やグラミー賞などを受賞。その名を不動のものとした。
「ちょっとした行き違いで何年か関係が切れていたけど、海外の大きな賞を取ったので馬場君と２人で花を贈りました。しばらくして坂本君から連絡があって何事もなかったように関係は戻ったよ。ニューヨークから帰国すると、港区のイタリア料理のアッピアでよく食べた。選挙区の愛媛まで来てくれて私が企画したトークイベントにも参加してくれた。自民党のことは決して好きではないと思うけど（苦笑）」
永田町では「猿は木から落ちても猿だが、政治家は選挙に落ちたらただの人」といわれている。塩崎氏はバッジが外れた今も、１月英国、２月カリブ海のバルバドス、３月インドと国際会議で発信を続けている。また’21年の引退直後、愛媛県の児童相談所に出向き、里親制度の申請をし、夫婦で研修を受け、’22年２月、里親名簿に登録。現在、不定期ながら２人の子の里親となっている。
「政治家はバッジがあろうがなかろうが社会のために働くべきもの。困っている人がいたら、お手伝いをすることはないですか、と声をかけるのが政治家の役割だと思っています。政治家として培ったノウハウや人脈を生かして、里親を支援するNPOも応援している」
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一方の坂本氏は’21年１月に直腸がんの手術を受け、「ステージ４」であることを公表した。
「９.11や東日本大震災、コロナ、坂本君個人としてもガンとの闘病で、やりたいけれど状況がそれを許さないことも続き、忸怩たる思いがあると思う。曲を作るのも昔のようにできないはずで、葛藤があると思う。それでも東日本の被災地でコーラス活動を行っている。困っている人に手を差し伸べられる姿は昔のままです。戦争はしてはならない。自由を奪ってはいけない、人の生き方には手をつっ込まない、だとか青臭いことを言っていた時から変わっていません」
塩崎氏は闘病中の坂本氏のお見舞いに行くことも考えたが、あえてやめた。ただ顔はあわせなくても、古希まで続いた友情は、深いところで今もつながっている。
<figure id="attachment_301871" aria-describedby="caption-attachment-301871" style="width: 1000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="21c6ace5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/c96c049b55fa1873c22db8d1d706d25b-1.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-301871" class="wp-caption-text">1999年、日本武道館で行われた公演後のパーティーにて（写真：前衆議院議員・塩崎やすひさの公式ホームページより抜粋）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_301868" aria-describedby="caption-attachment-301868" style="width: 683px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="760cb852"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/005.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-301868" class="wp-caption-text">先日はインドに海外出張。今でも各国の首脳クラスの人に直接会い、意見交換している（撮影：吉場正和）</figcaption></figure>

岩崎大輔

吉場正和（インタビュー）

2008年、塩崎氏はニューヨーク出張の際、坂本龍一氏の自宅にも訪問した（写真：前衆議院議員・塩崎やすひさの公式ホームページより抜粋） &#8217;21年１月に直腸がんの手術を受け、闘病中であることを

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