加藤 久美子

<figure id="attachment_305464" aria-describedby="caption-attachment-305464" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="86c4a5c7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/75bccde57b49b7775fdcefc7273e84d2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305464" class="wp-caption-text">入り口が閉鎖された辰巳第一パーキングエリア（PA）。2020年に撮影した当時はここに一時停止してトイレを利用することができたが、撮影直後からトイレの利用も許されなくなった（撮影：加藤博人）</figcaption></figure>
<h3>「想像すらしたことがなかった」</h3>
上の写真は首都高速道路（以下、首都高）の辰巳第一パーキングエリア（以下、PA）の入り口の写真だ。夜間は頻繁に閉鎖される。この辰巳第一PAの出口付近でトラックが不可解な動きがたびたび見られる、との情報が寄せられた。
それは、今年1月22日に録画されたライブカメラに映像としてはっきり残されていた。記事の２ページ目に添付した動画を見るとよくわかるが、トラックが不可解な動きをしている。
本線上でハザードランプを出して停車し、そこからバックで「出口」から辰巳第一PAに入っている。横を通り過ぎる普通車も一瞬驚いたように減速した後、通過していったのだ。
ライブカメラを運営する湾岸Go さん（@wangan_go_live）も最初に気づいた時にはとても驚いたという。
「私もこの瞬間を見た時はまさか、辰巳第一PAに本線から逆走して入場するクルマがあるなんて想像すらしたことがなかったので、大変驚きました」
なぜ、普通に入り口から辰巳第一PAに入らないのか？　入ろうと思ったら行き過ぎて入り口を通過してしまったのか。首都高を走り慣れたプロドライバーなら行き過ぎることは考えにくく、逆に、不慣れなドライバーならそもそも、瞬時に「バックで入ろう」という考えは思い浮かばない。結局、理由は辰巳第一PAの「入り口が閉鎖されていたから」であろう。逆走で入ったことのあるトラックのドライバーはこう耳打ちする。
「辰巳第一PAは頻繁に閉鎖されますが、あそこは大型トラックの駐車台数も多く利用しやすい数少ないPAのひとつです。ルーレット族対策で閉鎖するなら、大型トラックは対象外ですよね？　私自身も、私の仲間たちもやむを得ず、バックで出口から進入したことはあります」
「ルーレット族」とは、首都高速都心環状線（C1）というまさに都心をぐるっと一周する約15kmを制限速度50km/hの2倍以上、100km/h以上で周回するクルマのことをいう。C1自体、アップダウンがあるビルの谷間を走るルートであるため、空いている夜間はドライブコースとしても人気がある。
ちょうど同じ時期の１月20日ごろ、辰巳第一PAに通称“辰巳ジャンプ台”が設置されたことも話題になった。出口付近に設置された高さが約10～11㎝ほどある凸型の段差のある路面。ここを通過するときはちょっとした登り坂のようになるため、車はおのずと減速する。しかし、本来は減速するべき場所でわざと加速してジャンプする車が続出。首都高の担当者に”辰巳ジャンプ台”を設置した目的を聞くとこんな返答があった。
「辰巳第一PAでは、ルーレット族などによる悪質な暴走行為や迷惑行為に対して、お客さまの安全な交通の確保と沿道にお住まいの皆さまへの騒音対策の観点からPA内の速度を抑制する施策として、路面に凸部を設けました」
首都高は危険な運転を繰り返すこの「ルーレット族」を取り締まる意味で、辰巳第一PAの入り口を夜間閉鎖し、さらには”ジャンプ台”まで作ったのだ。
しかし、辰巳第一PAの入り口を閉鎖されて困るのが、冒頭で紹介した大型車のドライバーである。トラックの運転手は厚生労働省の基準で4時間走ったら30分といったように、走行時間に応じて休憩をとることが義務付けられている。休憩をいつどれくらいとったのかということについて、トラックに装備された「デジタルタコグラフ」に細かく記録される。そのため、事前の告知なく首都高のPAが閉鎖されてしまうとやや困ったことになる。
首都高には合計20カ所のPAがあるが、警視庁高速道路交通警察隊がルーレット族対策として頻繁に閉鎖しているのは、辰巳第一PA、箱崎PA、芝浦PAの3か所。大型車が利用できるPAは限られており、箱崎PA２台、芝浦PAの５台に対し、辰巳第一PAでは17台の大型車を駐車することができる。しかも辰巳第一PAは屋根がないため、大型トラックドライバーにとっては利用しやすいのだ。
<div data-friday-nextpage-lead="首都高速閉鎖が本当にルーレット族対策になるのか"></div>
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<h3>警視庁広報課は「締め出していない」というが……</h3>
同じ首都高内にある大黒PAは58台の大型車が駐車できる。ここは週末の夜を中心にほぼ毎週閉鎖されているが、大型車は対象外なので問題なく利用できる。「辰巳が利用できなければ、大黒に行けばいい」という意見もあるかもしれないが、距離にして35㎞以上離れている。
それ以外に都内にある首都高PAで大型車を２ケタの台数で駐車できるのは辰巳第一PAを除くと大井PAのみで11台。つまり、冒頭の動画のように本線上で停車してハザードランプを点けてバックで進入…というのは、絶対にやってはいけない大変危険な行為であるが、当該のトラックドライバーにとっては苦し紛れの行為だったのかもしれない。
この状況を分かったうえで、警視庁高速道路交通警察は辰巳第一PAを頻繁に閉鎖しているのだろうか？そもそも、ルーレット族対策として首都高PAを閉鎖することに効果はあるのか？　警視庁広報課に尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「辰巳第一PAは、大型車を締め出していません。PA閉鎖時も、大型車の運転手から警視庁もしくは首都高速道路株式会社に休憩したい旨の申し出があれば対応しています。閉鎖しているのは、ルーレット族やギャラリーの対策です。
PA閉鎖については、平成14年（‘02年）から実施しており、当初は、苦情も数件ありましたが、継続して行っているため、昨今では大型車の運転手にも対策が浸透しており、出口からバックして入る等の行為をする者は、ごく一部の運転手であると思われます。当然、悪質危険なドライバーに対しては取り締まりを実施しております。
なお、労働基準法を遵守されている運転手の方々はご存じかと思いますが、首都高にはSA（サービスエリア）の設置はなく、全てPAとなっております。本来、PAの利用は、短時間での用便や休憩を取っていただくための施設であるため、長時間にわたる就寝を伴う休憩は、SAの利用をお願いしています」
さらに、警視庁広報課が明かす「休憩したい旨の申し出」のタイミングとはいつのことを指すのか、追加で質問すると「事前連絡等により休憩できるという趣旨ではなく、PAを閉鎖する際、すでにPA内で休憩中の大型車の運転手から申し出があった場合には休憩を継続してもらうという意味です」との返答だった。
警視庁広報課の返答は、辰巳第一PAについて夜間に休憩中の大型トラックを「締め出す」ことはしていないことを重ねて強調しているが、実際は今でも休憩をとるために、大型車が出口からバックで入場する状況は続いていることがわかる。つまり、警視庁が本来、目的としている「ルーレット族などに対して監視の目を光らせる取り締まり」の「監視」は実際は十分になされているのか、と言われても仕方がないだろう。
紹介した動画に見られたように、出口から逆走してPA内に入るような「あり得ない光景」を目撃した通常走行している別の車の運転手が、驚いて急ブレーキをかけてしまった場合、その車と別の車の追突事故を誘発してしまう可能性も否定できない。”深夜の悲劇”が起こる前に、「大型車」にだけは入り口を開放することを柔軟に考えてみるのはいかがだろうか。
<figure id="attachment_305512" aria-describedby="caption-attachment-305512" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="676a0944"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/f29943e12ecf666e0e56a73b64846378.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305512" class="wp-caption-text">閉鎖されていないときの辰巳第一PAの入り口付近</figcaption></figure>
<figure id="attachment_305513" aria-describedby="caption-attachment-305513" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7d86f3d4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/613c91db0b1d9740136e14d8d0651d99.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305513" class="wp-caption-text">辰巳第一PAの中から見た出口近辺。動画で映し出されているのは、トラックが見えている車線の右隣の車線からバックで入ってきているシーンだ（写真：加藤博人）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_305514" aria-describedby="caption-attachment-305514" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="26ed4bf2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/ada87ddd5fcd2e72c1312d4c87675926.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305514" class="wp-caption-text">”辰巳ジャンプ台”を告知。本来は減速するために設置したが、ここでわざと加速してジャンプする車が続出したため、”ジャンプ台”の名前が付いた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_305571" aria-describedby="caption-attachment-305571" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0446901e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/943d535c3fd8cd0b2d6b3795b4762112-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305571" class="wp-caption-text">辰巳PAが夜間閉鎖される直前、車が一斉に追い出されている模様</figcaption></figure>
<figure id="attachment_305597" aria-describedby="caption-attachment-305597" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="27d1ea03"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/48b1d6c1b3bc3b261db17bfb7044ca7b-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305597" class="wp-caption-text">辰巳第一PAの入り口を閉鎖している最中。黄色のトラックが止まり、侵入してくる車がないかの目を光らせる</figcaption></figure>
<figure id="attachment_305211" aria-describedby="caption-attachment-305211" style="width: 683px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c4ff7a9f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/b60030de88fd5be0be2c1d652d8f752a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305211" class="wp-caption-text">監視カメラで24時間、監視しているというが…（撮影：加藤博人）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_305572" aria-describedby="caption-attachment-305572" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="12780779"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/9d597f4b627ae249abc9a0f1240ba6cc.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305572" class="wp-caption-text">週末の夜は周辺住民からの苦情も多数あるため、こんな横断幕も貼られている</figcaption></figure>
<figure id="attachment_305594" aria-describedby="caption-attachment-305594" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9ada6948"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/250aa6f8f4d0eb4efc4ff9abce8874e3-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305594" class="wp-caption-text">辰巳第一PAから35㎞以上離れた大黒PAも夜間閉鎖の場合、小型車スペースは完全閉鎖のため１台も停まっていない</figcaption></figure>
<figure id="attachment_305588" aria-describedby="caption-attachment-305588" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="705404a7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/776f22d975b2a469bd456ec35118000b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305588" class="wp-caption-text">大黒PAは夜間閉鎖後も大型車スペースは利用可能なため、多くの運転手が利用している</figcaption></figure>
<figure id="attachment_305455" aria-describedby="caption-attachment-305455" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b33c910f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/10dd52137547fb973e7c53975e7e8680-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305455" class="wp-caption-text">このような事故に発展する前に、警視庁にはPAの夜間閉鎖について再考していただきたい（写真はイメージです）</figcaption></figure>

加藤久美子

加藤博人

入り口が閉鎖された辰巳第一パーキングエリア（PA）。2020年に撮影した当時はここに一時停止してトイレを利用することができたが、撮影直後からトイレの利用も許されなくなった（撮影：加藤博人） 「想像すら

カメラにありえない光景が…首都高・辰巳第一PA「本線からバックで逆走入場」車両が続出するワケ

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