〝空気を読みすぎちゃう〟俳優・小越勇輝『HUNTER×HUNTER』THE STAGEへの思い | FRIDAYデジタル

〝空気を読みすぎちゃう〟俳優・小越勇輝『HUNTER×HUNTER』THE STAGEへの思い

人気漫画原作の舞台で主人公役を演じ、人気を博してきた俳優・小越勇輝(29)。新たな舞台出演を控える今、自身が抱くコンプレックスの告白とともに、役者人生への覚悟を熱く語る。

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全然仕事が決まらないのに、やめることすら怖かった

「3歳から芸能活動しているのですが、オーディションを受けては落ちての繰り返しでした。周りから『今回は受かるよ』って言われるんですけど、受からない。数えきれないほど落ちたからこそ、いまがあるのかもしれません」

 そう語るのは、俳優・小越勇輝(29)だ。小越はこれまで人気漫画原作の舞台『テニスの王子様2ndシーズン』や『弱虫ペダル』などで主人公役を演じ人気を集めてきた。5月には、冨樫義博作の漫画『HUNTER×HUNTER』を原作とした舞台『「HUNTER×HUNTER」THE STAGE』でメインキャラクターのクラピカ役を演じることが決まっている。いまでこそ輝かしいキャリアを誇るが、インタビューはオーディションに落ち続けた下積み時代の話から始まった。

「全然仕事が決まらないのに、落ちても落ちてもやめたくなかったんです。子役から長いこと続けてきてしまったから『後には引けない』という感情もあったし、『やめて自分に何ができるんだ?』という恐怖心も大きかったかもしれません」

5月12日スタートの舞台『「HUNTER×HUNTER」THE STAGE』で、メインキャストのクラピカ役を演じる小越勇輝(29)
5月12日スタートの舞台『「HUNTER×HUNTER」THE STAGE』で、メインキャストのクラピカ役を演じる小越勇輝(29)

だが、なかなか報われず、子役デビューからあっという間に12年の時が過ぎていった。大きなチャンスが突然やってきたのは高校に入学してすぐのこと、あの人気漫画『テニスの王子様』の舞台作品で主役に抜擢されたのだ。小越は、晴れ舞台を夢見たオーディション前の自身のある行動を振り返る。

合格を待ち望みすぎて、いざ吉報を聞いた時は逆に落ち着いていました。いま思えば不思議な行動なのですが、オーディション前、受かってもいないのにキャリーバッグを買ったんですよ(笑)。各地の劇場を回るから必要だなって思って。この時はこれまでよりも『絶対に受かってやる』という気持ちが強くてその行動に何の疑いもありませんでした。普段は行かないパワースポットに行ってみたり、なりふり構わず頼れるものならなんでも頼ろうと。いつもオーディションに落ちては『惜しい』と言われていたので、最後の一押しがどうしても欲しかったんでしょうね。その年を皮切りに『テニスの王子様』の主人公を長年演じさせていただきました。いまこうして役者人生を歩めているのは、間違いなくあの役があったからだと思っています」

 

淡々と語る小越だが、当時の悔しい思いが言葉の端々に滲む
淡々と語る小越だが、当時の悔しい思いが言葉の端々に滲む

一番落ち着くのは、一人で歩きながらラジオを聴いている時

作品では、仲間とともに青春を駆け抜けるキャラクターを演じることが多い小越だが、私生活は正反対だ。友人に連絡を取ることも少なく、「ネガティブで周りの目を気にしすぎるタイプ」と自己分析する。

「自分が発した一言で、相手がどう思うかをすごく考えてしまうんです。子役から活動しているせいか、小さい頃から空気を読むことが癖になっていて。下手なことは言わないほうがいいと思い相手の懐に踏み込むこともしないので、友人もあまりいません。基本的に一人でいることが多いですね。たとえば地方ロケ中に撮影がない日があると、ラジオを聴きながら数時間かけて一人で淡々とその地を歩いたりしています。ちなみによく聴くのは、オードリーさんの『オールナイトニッポン』とか、TBSラジオではおぎやはぎさん、バナナマンさんや爆笑問題さんの番組。ラジオを聴いている時が、何にも気をつかわず一番落ち着ける時かもしれません」

「ストレス発散方法は、美味しいものを食べることとお酒を飲むこと。特に好きなお酒はワインです」。自身のインスタグラムでは、得意の手料理を度々披露している
「ストレス発散方法は、美味しいものを食べることとお酒を飲むこと。特に好きなお酒はワインです」。自身のインスタグラムでは、得意の手料理を度々披露している

これまで演じてきたキャラクターからは想像できないほど内気な小越。ちなみに、仲良くなれるタイプは正反対の性格の人ばかりだという。

「相手からガンガン来られることは嫌いではなくて、むしろそういう人には心を開いちゃうかもしれません。プライベートで一番ご飯に行くのはマネージャーさんなのですが、彼がガツガツ攻めてくる人だからここまで仲良くなれたんだろうなとも思っています(笑)。無邪気に人との距離を縮められる人にはめっちゃ憧れていて、自分もやってみようと思うんですけど……どうしても自意識が邪魔してくる(笑)。たとえば好きなミュージシャンのライブに行っても周りの目が気になって盛り上がれない。自分のことなんて誰も気にしていないって、頭ではわかっているんですけどね。数少ない友人からサプライズをしてもらっても、嬉しいのに大きなリアクションをとれなかったりして」 

内向的な性格は、俳優には不向きともいえるだろう。ではなぜ小越が人気舞台の主役級を張り続けられるのか。そう投げかけると、彼は引き締まった表情を見せ力強く語り始めた。 

「自分の思いを外に出すことはほとんどないけど、性格を一言で表すなら『負けず嫌い』だし、いつも胸には熱い思いを持っています。こういうインタビューで言葉にして表現できたらいいんですけど。でも、秘めたる気持ちを存分にぶつけられるのが役者の仕事だから、ずっと続けられているのかもしれません」

「家族は僕の芝居に厳しいんです。舞台を観に来てくれた後は、歌やダンスの細かいダメ出しをされます(笑)」と笑い混じりに家族のエピソードを語ってくれた
「家族は僕の芝居に厳しいんです。舞台を観に来てくれた後は、歌やダンスの細かいダメ出しをされます(笑)」と笑い混じりに家族のエピソードを語ってくれた

ネガティブなくせに「できないことはない」って思っている

近年は、映像作品やダンスパフォーマンスのステージ出演が続いていたこともあり、セリフのある舞台出演は『「HUNTER×HUNTER」THE STAGE』が約4年ぶりとなる。多くのファンを持つ原作の舞台ということもあって緊張していると話す一方、クールなキャラクターであるクラピカを演じるにあたって心がけていることがあるという。

「クラピカみたいな、冷静で王子様っぽく、俯瞰でものを見る役は初めて演じます。これまでは性格を表現しやすい役が多かったのですが、クラピカは全然違う役作りを求められる。きっとファンの皆さんの中にそれぞれのクラピカ像があると思うんですけど、僕が原作を読んで感じたファーストインプレッションを大事に演じられたらと思っています。観に来てくださる方には、その解釈の答え合わせも含めて楽しんでいただけたら嬉しいですね

目標とする役者像について聞くと、ある先輩役者2人の名前が挙がった。

「演じるお仕事ではあるけれど、やっぱり大事なのは人間性だと思っています。小さなところに気が付いたり、ベテランなのに謙虚だったり、若手の自分にまで丁寧にご挨拶してくださる先輩方を見ると、自分もこういう役者でありたいと思います。たとえば風間俊介さんや、最近ご一緒した濱田岳さん。たくさんお話ししたわけではないですが、それでも滲み出るお人柄の良さを感じました」

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起伏に富んだ役者人生、彼はどのように歩んでいきたいと思っているのか。最後に問うと、この日一番の貪欲な姿勢を見せてくれた。

どんな役だって、求めてもらえるなら応えられる自分でいたい。ネガティブなくせに、心の底では『できないことなんてない』って思っているんです。『可愛らしい』と言ってもらえるこの見た目を武器にできる役もあるでしょうし、凶悪犯でもすごく嫌なヤツの役でも、何でもやりたい。多くの作品に出て、死ぬまで表現する仕事をしていきたいと思っています」

わかりやすい情熱だけがすべてじゃない。静かに燃える炎こそ、誰かの心に長く灯り続けることを小越は証明してくれる。

  • 撮影濱﨑慎治

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