直径44kmの巨大火山から徒歩で逃げるの…富士山大噴火・避難計画「大地震と津波で対応不能」の悪夢 | FRIDAYデジタル

直径44kmの巨大火山から徒歩で逃げるの…富士山大噴火・避難計画「大地震と津波で対応不能」の悪夢

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いつ噴火してもおかしくない富士山(PHOTO:BORDER)
いつ噴火してもおかしくない富士山(PHOTO:BORDER)

富士山の噴火に備えた新たな避難計画が9年ぶりに改定され、死者32万人超が想定される南海トラフ巨大地震の被害想定も見直すことになった。ひとたび富士山が噴火し、巨大地震が連動して起きれば未曽有の被害が出る可能性が高い。だが「新たな避難計画は実行性に欠ける」との声もあがっている。

新しい富士山火山広域避難計画は、山梨、静岡、神奈川の3県などで構成する「富士山火山防災対策協議会」が3月29日に策定した。

「富士山の火山災害警戒区域を3県27市町村(住民約79万人)に広げる一方、噴火時に逃げ遅れてしまう人をゼロにするために避難の開始時期を再検討しています。しかし、避難先をあらかじめ決めず噴火の状況に応じて確保したり、要支援者の避難を優先させるために一般住民の避難手段を自家用車から原則徒歩に切り替えるなどとしている。どこまで実行性が確保できるのか、未知数の部分も多いのです」(全国紙社会部記者)

確かに、混乱の中で避難場所を正しく伝達し、しかも車で移動することが多い地域の人たちを冷静に歩いて避難させられるのか。地元では「短時間で溶岩流や噴石に襲われるのに徒歩で逃げ切れるの?」などと、不安の声が多数あがっている。

新幹線や高速道路が水没……

宝永年間に噴火した時の痕跡(PHOTO:トシコユルギ)
宝永年間に噴火した時の痕跡(PHOTO:トシコユルギ)

災害リスクマネージメントに詳しい立命館大学の高橋学教授はこう話す。

「富士山は裾野の直径が最大約44kmにのぼる巨大火山です。実際に噴火が起きて辺り一面に噴石や火砕流、大規模な火山灰が降ってきたら、どちらの方向へ逃げるのがよいのか分からなくなる。周辺に住む人たちを一度に避難させることはとても無理でしょう。

大切なのは、火口が南東から北西に向けて主要なものだけでも約30個が連なっているため、噴火する場所を見極めて避難の優先順位を作ることです。いずれにしても、住民はそう簡単には避難ができないと考えたほうがよいでしょう」

日本の上空では西から東へ偏西風が吹いているため、富士山の西側に住む人々は西方面へ避難するのがよいように思えるが、ことはそう簡単ではないと高橋氏は話す。

「東よりは西ですが、それでも問題は多い。静岡方面から山梨に抜ける主要な道が少ないうえ、名古屋方向に抜けるにしても富士山から近い東名高速道路は噴火の影響で通行できなくなるでしょう。しかも、富士山の噴火は歴史を見ても大地震とセットで起こることがほとんどです。

たとえ運良く火口周辺から脱出できたとしても、その先で交通インフラがマヒしてしまうことが考えられます。実際、東海道新幹線は沼津市の浮島沼のあたりで海抜2m付近を通り、浜名湖に関しては新幹線、東名高速ともに湖面の上を走っています。橋脚の崩落や津波で水没する可能性も大きく、西への避難もできなくなりかねません」

富士山が前回噴火したのは1707年だ。この時は49日前に推定マグニチュード8.6の宝永地震が起きている。不気味なのは、3200年間に約100回の噴火を繰り返したとされる富士山が宝永の噴火以降、300年以上にわたって静寂を保っていることだ。相当なエネルギーが溜まりと思われ、いつ大噴火が起きてもおかしくない。

「南海トラフ地震が引き金になり富士山が噴火すれば、巨大地震と大噴火でケタ違いに避難人数は増える。今回改定された富士山避難計画だけでは、とても対応しきれません。もっと具体的で実行性のある計画を作らないと被害は拡大するでしょう」(高橋氏)

巨大噴火は確実に迫っている。生き残るためには、具体的かつ現実的な備えが必要だ。

300年以上沈黙を続ける富士山(PHOTO:cyuurin)
300年以上沈黙を続ける富士山(PHOTO:cyuurin)
  • 取材・文形山昌由

    ジャーナリスト

  • PHOTOBORDER cyuurin トシコユルギ

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