<h3>原材料の高騰と寿司テロ「ペロペロ事件」で大ダメージ 
2023年春、逆風が吹き付ける業界で潰し合いが始まった――。</h3>
長らく外食業界の王様だった回転寿司チェーンに、黄信号が灯っている。生命線である一皿100円という低価格設定に、原材料の値上げラッシュで限界が来ているのだ。
<figure id="attachment_306036" aria-describedby="caption-attachment-306036" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1088c9f5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/10000000000000155866_20230403171746057374_P220907000838.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-306036" class="wp-caption-text">くら寿司は’22年10月、最低価格を一皿110円から115円に変更した。一方で高価格帯の一部商品を値下げしている</figcaption></figure>
「回転寿司はファミリー層に支えられています。数年前なら４人合計5000円で済んだ会計が、今では8000円超えになることもある。それでいてネタの質が下がれば、焼き肉やファミレスなど別の業種に客が流れてしまうのは仕方がない」（回転寿司評論家の米川伸生氏）
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回転寿司チェーンの売上高&#8221;ビッグ４&#8221;といえば、「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」。そのうち、スシローは最低価格120円、くら寿司は115円に値上げされ、１貫300円台のネタもある。ハレの日のご馳走をグッと身近にした回転寿司は、今や「コスパが悪い」と言われることもしばしばだ。
そこにきて、ビッグ４各社で不祥事が連発し、業界全体の信頼性が揺らいでいる。市場規模7000億円超の回転寿司業界は急転直下、生き残りをかけた戦国時代に突入したのだ。
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立て続けに起きた不祥事について、時系列に整理しよう。①’22年４月、くら寿司の30代男性店長が店舗駐車場で焼身自殺。上司からのパワハラなどが原因と報じられる②’22年６月、スシローのキャンペーン商品の「おとり広告」が発覚③’22年９月、かっぱ寿司の田邊公己(こうき)社長（47・片書きは当時）が前職場のはま寿司のデータを不正に持ち出した疑いで逮捕④’23年１月、スシローで客が備え付けの醤油差しに口をつけるなどの動画がネットで拡散⑤’23年３月、くら寿司でレーンの寿司を手づかみで食べるなどした動画をネットに投稿し、客３人が逮捕された。
そして今年３月末、はま寿司で賞費期限切れネタを提供していた疑惑が報じられた。この中で世間のインパクトが大きかったのは、やはり先述の「ペロペロ事件」だろう。ある回転寿司チェーンの従業員は言う。
「動画が出回った直後、１週間くらいは客の数が激減しました。その後ほとぼりが冷めると客は戻ってきましたが、『この店は大丈夫なのか』といった問い合わせも増えています」
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<h2>&#8220;回らない回転寿司&#8221;の登場</h2>
そもそも、迷惑行為が回転寿司チェーンに集中したのはなぜか。外食経営誌ライターの栗田利之氏はこう分析する。
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「ボックス席の充実とコスト圧縮のための省人化が、『寿司テロ』を引き起こした一因と言えます。ボックス席はプライベート感を確保できる反面、周囲の目が届きにくい。保護者の同伴なしで来店する若年層が増えた結果、迷惑行為動画の拡散が増えたのでしょう」
不届き者の来店は、氷山の一角にすぎない。くら寿司の元店員はこう明かした。
「補充したばかりのガリ（生姜）がゴッソリなくなっていたり、寿司を食べると当たるガチャ『ビッくらポン！』のフタを開けて、景品を直接抜き取ろうとする客がいたり……」
はま寿司の従業員も次のように言う。
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「『ラーメンにわさびが入っていた』というクレームが来たんですが、わさびは客席にしか置いていないので、調理中に混入することはまずあり得ない。迷惑行為とは言い切れませんが、理不尽なクレーマーにはよく遭遇します」
一連の騒動を受け、くら寿司は回転レーンにＡＩカメラを設置し、不審な動きがないか自動検知するシステムを導入した。一方で、一都三県を中心に展開する「すし銚子丸」のように、回転レーンを完全に取り払うチェーンも出てきている。
「各席に作りたてを届ける『直線型レーン』は、休日昼のピーク時だと一気に200皿近く注文が来ることもあります。回転レーンの方が、たしかにスタッフの負担は少ないのですが……」
元かっぱ寿司の従業員がそう語るように、コストと従業員の負担軽減に一役買ってきた回転レーンの扱いが、実は各チェーンの今後を握っているのだ。
&#8220;回らない回転寿司&#8221;は増えるのか。フードジャーナリストの三輪大輔氏は言う。
「回転レーンを廃止すれば、迷惑行為は減るかもしれません。ですが、回転寿司チェーンの売りだった『エンタメ性』が減り、ファミリー層の客離れを招く可能性があります。特にくら寿司は、『ビッくらポン！』で子供の人気を集め、『抗菌寿司カバー』で特許を取っていることなどから、回転レーンへのこだわりが窺えます。レーン改修のコストや休業の必要性も考えると、廃止に踏み切りにくい」
50％近いとも言われる寿司の高い原価率をカバーしてきたのは、自動化によるコストカットと、大量出店＆薄利多売のビジネスモデルだった。ビッグ４はもはや、小回りの利くチェーンではなくなっている。
大手寿司チェーンの幹部は言う。
「寿司ネタの値上げが続いているのは、日本の漁獲量が世界に&#8221;一人負け&#8221;しているためです。回転寿司各チェーンは船一隻単位で魚を直接調達することで価格を引き下げてきましたが、漁獲量は先細りするばかり。円安のため原材料を輸入すると割高になります。また、データを駆使した廃棄率の削減は飽和状態で、手頃な価格を維持するには、店舗の作りを変えるしかありません。 

業界トップのスシローも回転レーンを廃止するかどうか迷っているようです。ある競合他社の出方を窺っているとか」
その競合他社とは、業界３位のはま寿司だ。「すき家」擁するゼンショーＨＤ傘下で、売上高はスシローに水を開けられているが、独自の経営戦略が光る。
「はま寿司はロードサイド（郊外店舗）戦略が上手で、車で入りやすい立地を狙って出店、一皿税抜100円をおおむね維持してファミリー層の客離れを防いでいます。さらに多くの店舗で回転レーンを廃止する一方で、直線型レーンの提供スピードを上げることで顧客満足度を高めています」（前出・栗田氏）
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<h2>値上げの進め方に失敗</h2>
実際に、関東圏のはま寿司のロードサイド店を訪れてみた。大型商業施設の一角にあり、無料駐車場は約1000台ある。カウンター席に着くと、目前のレーンに寿司は流れていない。タッチパネルを操作し、はま寿司で人気のサーモンを注文すると、ものの１分ほどで直線型レーンから寿司が届いた。
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ネタは他のチェーンよりも小ぶりな印象だが、牛カルビや炙(あぶ)り合鴨などの肉寿司もあり、目新しい。７皿食べて、会計は1000円ほど。出費がかさむ心配をすることなく食べられるのはありがたい。
フードビジネスコンサルタントの永田雅乙(まさお)氏は言う。
「くら寿司とスシローは、値上げの進め方に失敗した印象があります。値上げ自体は仕方ない状況にありますが、それでいながら対価としての集客キャンペーンを打ち出さなかった。知名度で若干劣るはま寿司が踏み込んだプロモーションを打てば、上位２社に追いつく潜在能力はあります」
はま寿司と同じく、一皿100円の価格設定で踏みとどまっているのが、かっぱ寿司だ。同チェーンは’14年に「牛角」や「大戸屋」などのブランドを有するコロワイド傘下に入った。だが、上がり目はまだ見えない。
前出・三輪氏は言う。
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「シャリに力を入れたり、食べ放題を実施したりと策を講じていますが、長期的な人気に結びつくような手を打てていないのが現状です。このままでは業界５位で、回転レーンのない店舗を増やしている『元気寿司グループ』に追いつかれる可能性もゼロではありません」
スシローにはま寿司が肩を並べ、元気寿司がビッグ４の仲間入りする――。近い将来、「意外な勝者」が業界地図を塗り替えるかもしれない。
こうした状況で指摘されるのが、大手回転寿司チェーンの急伸にともなう「成長痛」だ。各社の出店情報を見ると、新規開店と同じペースで閉店も多い。こうしたスクラップ＆ビルドを繰り返しているのには、深いワケがある。前出・永田氏は言う。
「以前から、回転寿司チェーンには『国内600店舗限界説』がありました。スシローがすでにそれを超え、はま寿司とくら寿司も近づいている。客を食い合ううえに、従業員の確保も難しくなる。しばらくは採算の悪い既存店を畳み、国内外の新規出店で市場を保つという我慢の時代に入ると見ています」
格安チェーンのクオリティが下がったと囁(ささや)かれるなか、〝グルメ系〟と称される、やや高価格帯の寿司チェーンが連日行列を作っている。北海道から東京に進出してきた「回転寿し トリトン」や、石川県の「金沢まいもん寿司」は東京・渋谷のパルコや幕張新都心（千葉県）のイオンモールに出店している。
「どちらも、地元の食材を使った創作寿司が上手い印象があります。回転レーンが撤去され、『すしざんまい』や『築地 すし好』などと同じ〝回らない寿司店〟になったとき、こうした個性を持っているチェーンに人気が集まるのではないでしょうか」（永田氏）
とはいえ、トリトンの客単価は、一食3000円前後。普段使いするにはどうしても「お高め」に感じる。格安回転寿司チェーンに取って代わる可能性は、別の業態にあるようだ。
前出・三輪氏は言う。
「注目しているのが、『立ち食い寿司』と『寿司居酒屋』です。立ち食い寿司は都心の小さいテナントでも開店しやすく、男性客１人でも入りやすい空気がある。コスパもいいと人気で、行列ができても回転が早いので待てるのが大きい。また、スシローの別業態である『鮨・酒・肴 杉玉』や『や台ずし』など、アルコールのラインナップが充実した寿司居酒屋も伸びています。コロナが落ち着きつつある今、寿司の高い原価率を酒類でカバーする寿司居酒屋には伸びしろがある」
王者を食う勢いのはま寿司や元気寿司か、はたまた別業態か。回転寿司チェーンの&#8221;仁義なき戦い&#8221;は、新章に突入している。
<figure id="attachment_306033" aria-describedby="caption-attachment-306033" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="63221e54"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/115AA040-D3FB-4526-BBEB-C316A4643928.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-306033" class="wp-caption-text">すし銚子丸は回転型レーンを廃止し、直線型レーンのみに。店舗レイアウトも変わり、カウンター席が増えた印象</figcaption></figure>
<figure id="attachment_306035" aria-describedby="caption-attachment-306035" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b5ec1ca6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/2023030209769.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-306035" class="wp-caption-text">写真右上にあるのは、くら寿司が導入したAIカメラ。レーン上の動きを感知し、不審な挙動があれば店員に知らせる</figcaption></figure>
<a href="#" data-ident_hash="342b8601"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/WF0421_P059.jpg" alt=""></a>
<figure id="attachment_306034" aria-describedby="caption-attachment-306034" style="width: 1996px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2884a9d8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/2022093009687.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-306034" class="wp-caption-text">「カッパ・クリエイト」の田邊公己社長（当時）が持ち出したのは、はま寿司の日次売り上げなどの内部情報だった</figcaption></figure>
<figure id="attachment_306032" aria-describedby="caption-attachment-306032" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="aca6ae49"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/9D197362-C3B8-4F73-A495-A18FDBB37069.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-306032" class="wp-caption-text">回転寿し トリトンは、北海道の味が東京でも楽しめると人気。皿からはみだすほど大ぶりのネタが魅力だ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_306037" aria-describedby="caption-attachment-306037" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="eedc0395"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/aflo_206767970.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-306037" class="wp-caption-text">元気寿司はハワイやアジアへの展開を進めている。写真は上海店で、現地では「高級寿司」として注目されている</figcaption></figure>
<a href="#" data-ident_hash="0db8b3ef"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/WF0421_P061.jpg" alt=""></a>
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『FRIDAY』2023年4月21・28日号より

朝日新聞社　共同通信社　アフロ　足立百合

回転寿司チェーンの売上高"ビッグ４"の「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」の不祥事が連発し、回転寿司業界は急転直下！生き残りをかけた戦国時代に突入し、仁義なき戦いへ――。

４大回転寿司チェーン生き残りをかけた”仁義なき戦い”の意外な勝者

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