<h3><span class="strongInContent">『晴海フラッグ』最高倍率266倍の影で始まった「準都心」物件の価格下落、気になる金融政策…</span></h3>
<p><span class="strongInContent">植田和男総裁が率いる日銀の新体制は、サプライズはなく、無難なスタートを切った。だが、世界的なインフレ圧力の中、為替市場での円安傾向は続き、年内に、日銀が金融政策を修正するとの思惑は依然としてくすぶる。そして、小幅でも利上げが実施された場合、「不動産市場には激震が走る」と語るのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。詳しい話を聞いた。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_306628" aria-describedby="caption-attachment-306628" style="width: 3539px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c4cf0a30"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/1_aflo_211558901.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-306628" class="wp-caption-text">サプライズはなく、無難なスタートを切った植田和男総裁が率いる日銀の新体制（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">すでに不動産市場には変調の兆しが…</span></h3>
<p>首都圏の新築マンション平均価格は、　’21年に平成のバブル期を超え、’22年には6288万となり2年続けて高値を更新。’23年に入っても、東京オリンピックの選手村跡地である、中央区の分譲マンション『晴海フラッグ』の最終販売期の最高倍率が過去に類例のない266倍になるなど、一見、不動産市場は好調に推移している。</p>
<p>しかし、すでに不動産市場には、変調が見られるという。<span class="strongInContent">「山手線の各駅から5駅程度離れた、『準都心』と呼ばれる地域の一棟アパート、一棟マンションの価格下落が始まっています」（榊氏・以下同）</span>。アパート、マンションの一棟物件は、賃貸経営をするオーナーの投資対象として、これまで活発に取引されてきたが、昨年後半から取引が成立しにくくなっているという。</p>
<p><span class="strongInContent">「今年に入ってからの取引事例をみると、昨年比で物件価格は1割程度値下がりしている状況です」</span></p>
<h3><span class="strongInContent">住宅ローンの「隠れ延滞」とは？</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>変調は投資用物件だけではない。マイホーム購入における住宅ローンの〝隠れ延滞〟が増加しているのだ。コロナ禍によって残業の縮小や派遣社員の人員整理などにより、収入が減少した世帯では、ローン返済に支障が出始めている。</p>
<p><span class="strongInContent">「政府はコロナ禍の景気対策の一環で、ローンの返済が厳しくなった世帯については、例えば、金利分の支払いのみでローンの継続維持を優先するように、金融機関に指導しているようです。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">延滞件数などのデータはほとんど公表されないため、これまで問題視されてきませんでしたが、5月から、コロナウイルスがインフルエンザと同じ5類指定感染症へと見直され、銀行側も、いつまでも隠れ延滞を受け入れるわけにはいかないでしょう」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="「0.25％利上げ」のインパクトとは？"></div>
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<h3><span class="strongInContent">「0.25％利上げ」のインパクト</span></h3>
<p>こうした状況下、<span class="strongInContent">「日銀が政策金利をわずか0.25％引き上げただけでも、不動産市場には大きな影響が出る」</span>と榊氏は指摘する。その理由は、住宅ローンを変動金利で借りている人が圧倒的に多いからだ。</p>
<p>一般社団法人・不動産流通経営協会が毎年実施している『不動産流通業に関する消費者動向調査』によると、住宅購入者が利用した変動金利型の住宅ローンは、’18年度に全体の6割に達して以降、一貫して増え続け、2022年度には83.4％にまで上昇している。賃貸経営のための投資用物件については、ほぼ100％が変動金利でローンを組む。しかも、頭金を入れないフルローンが基本だ。</p>
<p>政策金利が0.25％引き上げられると、銀行によって違いがあるものの、変動型の金利は0.3～0.5％の引上げ幅が想定されるという。現在、5000万円の住宅ローンを返済期間30年、金利0.35％の変動型で借りている場合、毎月返済額は14万6328円（元利均等返済、ボーナス払いなし）。仮に、0.25％の利上げでローン金利が0.45％引き上げられて0.8％になると、毎月返済額は15万6267円と約1万円増える。年間で約12万円、総支払額では約360万円増える計算だ。</p>
<figure id="attachment_306629" aria-describedby="caption-attachment-306629" style="width: 631px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="501ceab0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/2_sub1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-306629" class="wp-caption-text">『晴海フラッグ』の最終販売期の最高倍率が過去に類例のない266倍になった。画像は新街区「SUN VILLAGE」（HARUMI FLAG広報事務局のプレスリリースより）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_306630" aria-describedby="caption-attachment-306630" style="width: 509px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="818b058f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/3_sub8.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-306630" class="wp-caption-text">「SUN VILLAGE」販売プランのひとつ（13100万円台～13300万円台）の間取り図。「レインボーブリッジを正面に臨む角住戸プランで、リビングダイニングにパノラマウインドウを設置」との説明が（HARUMI FLAG広報事務局のプレスリリースより）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">米国の不動産市場はいち早く「フリーズ状態」に</span></h3>
<p><span class="strongInContent">「居住用の住宅ローンの延滞はさらに多くなり、物件の任意売却をするケースも増えてくるでしょう。タワーマンションを購入している、世帯年収1000万円超えの〝パワーカップル〟も収入に対してギリギリの返済計画である場合が多く、危険水域に近づきます。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">また、0.25％の利上げでも、値崩れが始まっている準都心エリアのアパート、マンションの一棟物件は、さらに1割ほど下落してもおかしくありません」</span></p>
<p>すでに、相次ぐ利上げが行われた米国は、住宅ローン金利は7～9％に急騰している。その結果、米国の不動産市場は、<span class="strongInContent">「取引がパッタリと止まった〝フリーズ状態〟に入っています」</span>。過去、不動産市場が崩れる前には、このフリーズ状態が発生しているという。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="マンション購入を考えている人は…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">金利引上げを前提とした返済プランが必須</span></h3>
<p>榊氏は、植田日銀総裁は、年内に0.25％の利上げを2回行なうと予想。欧米主要国のインフレはピークを越えた可能性はあるが、依然として高水準に留まり、欧米の中央銀行の利上げは当面続く模様。下落していた原油価格が再上昇に転じたことも、インフレ圧力を強めている。そうした中、日本だけが、マイナス金利を継続することには限界があるという見方だ。<span class="strongInContent">「食料品の値上げが生活を直撃しているので、それを緩和する利上げは、世論の理解も得やすい」</span>と語る。</p>
<p><span class="strongInContent">現状から政策金利が0.5％引き上げられると、前述した住宅ローンの毎月返済額は約2万円増えることになる。年間約24万円、総返済額は約720万円の増加だ。変動型の金利は0.35％から1.2％前後に上昇することになるが、この水準は、現時点の当初固定10年の住宅ローン金利を上回る。</span></p>
<p>榊氏の予想は、政策金利の引き上げを前提としたものだが、時期はともかく、今後も中長期的に超低金利が続くと考えるのは、楽観的に過ぎると言わざるを得ない。マイホーム購入を考えている人は、まず固定金利型の住宅ローンを検討すべきであり、固定金利での返済がキツいと感じられるようなら、購入を控えることも大切。すでに、住宅ローンを借りている人は、利上げに備えて、一度、ローンのシミュレーションをしておく方が賢明だろう。</p>
<p><span class="strongInContent">榊淳司（さかき・あつし）</span>　’80年代後半から30年以上、マンションの広告・販売戦略立案にかかわる。その経験を生かし、一般ユーザーを対象に住宅購入セミナーを開催するほか、新聞や雑誌に記事を定期的に寄稿、ブログやメルマガで不動産業界の内幕を解説している。著書に『マンションは日本人を幸せにするか』（集英社新書）、『すべてのマンションは廃墟になる』（イースト新書）、『限界のタワーマンション』（集英社新書）ほか。</p>


マネーライター、ファイナンシャルプランナー／証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる！ キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

松岡賢治

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