消滅危機が囁かれるサンウルブズ「本当の実績と課題」

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今年は、2月16日にシンガポールで開幕戦を迎えるサンウルブズ(写真は2018年6月30日、ブルズ戦勝利後のメンバーたち)

ここ数年、外国人観光客の数は年々増加し、日本の街並みを眺めてもすっかり国際色が豊かになった。そんな現代の日本において、時代性に富んだラグビーのチームがある。

その名はサンウルブズ。

1996年から開催されている国際プロリーグ、スーパーラグビーに2016年から参戦しているチームだ。現代を象徴するこのチームは、なんと国際色が豊かなことか。2月に開幕する2019年シーズンでいえば、日本、韓国、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、トンガ、サモア、フィジー、ジョージア、タイといった国の出身者を揃え、世界を転戦する予定だ。

チームが目指すのは、日本代表の強化支援とクラブ自体の成績向上との両立だ。チケット収入やスポンサー費で活動資金をまかなっている点も、企業主体の日本ラグビー界においてはユニークだ。ここ数年は観客動員で苦しんでいるが、ファンが狼の鳴きまねをする応援方法など従来にない文化が生まれている。

サンウルブズのスーパーラグビーへの参戦期間は、2020年でひと区切りつく。それ以降のチーム存続は流動的な状況だ。スーパーラグビーを統括するサンザー(SANZAA  South Africa, New Zealand, Australia and Argentina Rugbyの略称)がチーム数削減を検討していると見られるなか、現在のサンウルブズを運営する一般社団法人ジャパンエスアール(JPSR)は国内で十分な支援を受けられずにいるのだ。

ただ、JPSRの渡瀬裕司CEOは言う。

「現場を見れば、サンウルブズは続けた方がいいと思うに決まっています」

険しい道を歩んできた。

発足初年度の2016年度を前に、選手やコーチ陣との契約が難航。何とか船をこぎ出すも1勝に終わる。年を追うごとに有力な海外出身者を招きファンの期待感を高めたが、2年目は2勝に、日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチがボスを兼務した3年目は3勝に止まった。

直面したのは、多国籍集団がひとつになる難しさだ。ジョセフはニュージーランドのハイランダーズを率いて15年のスーパーラグビーで優勝している。だが、サンウルブズの関係者は「様々な国の選手がいるチームでは、地域性の強いハイランダーズ時代と異なるアプローチが必要。それにジェイミーが気づけるかどうか」と視線を向けていた。

ましてはサンウルブズには、時期ごとに選手をローテーションさせざるを得ない事情があった。クラブ内の日本代表勢が参加する国内トップリーグは、スーパーラグビーのオフ期間中に実施される。給与の大半を国内チームから得ている日本代表勢は、健康管理上どこかで取らなくてはならない休みをスーパーラグビーの間に交代で取らねばならない。サンウルブズが上位陣に負けないチームワークを作るには、そこにいる1人ひとりが独自の文化を紡ぐほかない。

スーパーラグビーを統括するサンザーからは放映権収入を得ていないなど、財政的な課題も多くある。それでも渡瀬は、「普通に現場を見れば…」とつぶやくのだ。代表強化への貢献度を鑑みれば、サンウルブズを手放す理由など見つからないと考える。

スクラムハーフの流大は、サンウルブズの共同キャプテンとして2018年シーズン(3年目)に挑むも開幕9連敗。その間にはリーダー陣と立て直しのために会合を開き、ジョセフには「もっとメンバー外の選手とも話すようにしてください」と意見を述べた。代表のリーダー候補として、難局を乗り越える苦労を体験できたといえよう。

2017年に初代表入りを果たした姫野和樹も、流とともに2018年のサンウルブズに参加。持ち前の突破力をスーパーラグビーで発揮して自信を持ち、同僚のフランカーで南アフリカ人のピーター・ラピース・ラブスカフニからは多彩なタックル技術を学んだ。

組織プレーにも好影響を与える。日本代表側が2016年秋にジョセフを招いてからは、サンウルブズの戦術はジェイミージャパンと同一化している。

2018年6月。イタリア代表戦でトライを奪った日本代表の攻撃陣形に、司令塔のスタンドオフの手前に器用なインサイドセンターを立たせたものがあった。スタンドオフが好判断を下しやすくするこの仕組みは、サンウルブズが5月のスーパーラグビーの試合で試した上で日本代表が採用した。

慶応義塾大学ラグビー部で監督経験のある渡瀬は、こうも話す。

「例えばひとつは関東、ひとつは関西と、いずれは日本でスーパーラグビーのチームが2つ以上できたら」

スーパーラグビー参戦の決まった2014年と、サンウルブズが船出した2016年以降とでは、日本ラグビー協会の理事会の陣容が変わっている。2018年は日本代表の強化委員会がジョセフの率いるサンウルブズをあまり視察しなかったことなど、組織同士の対話不足も露呈した。

さらに2020年は、トップリーグとスーパーラグビーがほぼ同時期に開催される予定だ。新しい国内リーグが発足する2021年以降も同じ流れを汲むとしたら、オフシーズンが明確化され、選手が心置きなく休める一方、トップリーグに所属する日本代表候補がサンウルブズに加わるのは難しくなりうる。

将来的には、日本を含めた国代表同士の新たな世界大会が計画されるといわれている。それが一部の国内リーグ重視論を助長するか。しかし、未確定の大会実施にすがることと、すでにあるサンウルブズを続けさせるよう動くこと、どちらが建設的かは言うまでもないだろう。

JPSRは2020年以降、トップリーグの各クラブとの個別対話によって国内選手との契約を進めたいとする。さらには20歳以下日本代表との連携を強め、ラグビー部を持つ大学の医学関連学部との共同計画を練るという。有望な若者に、サンウルブズへの憧れを抱かせる。

グラウンド外では今後、一定の富裕層が存在するアジアで市場を広げたいと謳う。スーパーラグビー全体の観客数減でじり貧状態とも見られるサンザーに、規模縮小よりも規模拡大を訴えるのだ。「日本に2つ以上チームを…」のプランは、その延長線上の物語だ。

ワールドカップ日本大会もある2019年は、スーパーラグビーでのプレーオフ進出を目指すサンウルブズ。ジョセフの右腕であるトニー・ブラウンを指揮官に据え、元ニュージーランド代表のレネ・レンジャーら有力なレギュラー候補も獲得した。渡瀬はこうも訴える。

「我々の夢はやはり、いつか日本代表がニュージーランド代表に勝つのを見て喜ぶことではないですか」

サンウルブズは潰したくない。

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター 1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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