“もっこり”OK?「シティーハンター」女性も支持でヒットの予感
20年ぶりに復活! 『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』の意外な支持層
1980年代から90年代にかけ、一世風靡をした人気作『シティーハンター』が2019年新たなアニメ映画となって帰ってくる。2月8日に全国公開される『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』だ。
『シティーハンター』は、『キャッツ♥アイ』でもお馴染みの漫画家・北条司の代表作。裏社会に名を轟かす一方で大の女好きの始末屋である“シティーハンター”こと、冴羽獠(さえばりょう)の活躍するアクション作品だ。アニメ版は1987年にテレビシリーズがスタート、1999年のテレビスペシャルまで10年以上も続いた。
大ヒット作だけに、リメイクは理解できる。しかしなぜ今なのか? 本作の別ストーリーを描いた『エンジェル・ハート』が05年にアニメ化されたが、『シティーハンター』自体のアニメ化は99年のテレビスペシャル『シティーハンター 緊急生中継!? 凶悪犯冴羽獠の最期』以来。実に20年ぶりの復活は、ファンならずとも驚きを隠せないだろう。
ところが本作、公開を目前に思わぬ人気となっている。メディアやSNSでも話題となり、かなりの盛り上がりを見せているのだ。その多くは懐かしさと、再アニメ化に好意的な意見。反響の大きさから当初70館規模を予定していた劇場数は250館超規模にまで拡大した。
そんな反響の一方でやや心配になのが、主人公・冴羽獠がお得意の“もっこり”表現。世界中で「#MeToo」が叫ばれるなか、“もっこり”が連発される内容はいまの時代にOKなのだろうか?
その気になる“もっこり”の表現(発言)は、今回の映画でも健在だという。それは女性にもニヤリとできるユーモアを狙っている。
それどころか、今回の盛り上がりでも『シティーハンター』の人気を支えるのは、意外なことに女性層なのだ。
格好いいだけでなく、時にはおちゃめで、でもやる時はやる。“もっこり”はマッチョな男でなく、むしろ恰好をつけないコミカルな姿。しかも獠は決して弱いわけでなく、仕事の腕は一流だ。
マッチョでない強さ。冴羽獠のキャラクターが持つギャップは、むしろいまの時代に合っているのかもしれない。そんな冴羽獠に理想の男性像を見ることで、『シティーハンター』は再びトレンドに浮上するのだ。
もちろん連載当初、そしてテレビアニメ放送時からのファンも多い。そんなかつてのファンの心を掻き立てる施策もたっぷりだ。
主題歌にテレビアニメでも使用されたTM NETWORKの「Get Wild」を採用したこともそのひとつ。当時の大ヒット曲だけに、「Get Wild」を聴くことで作品の思いを新たにするファンも多いはずだ。
これ以外にも、今回の映画では初代監督のこだま兼嗣を総監督に起用、アニメーション制作もテレビシリーズ以来長年手がけてきたサンライズが担当する。さらに冴羽獠役の神谷明(72歳!)、槇村香役の伊倉一恵をはじめ、主要な声優もオリジナルキャストが引き継ぐ。徹底的に旧作ファンを囲い込む。
2019年ならでの新しい試みもある。デジタル化の進展でアニメに使われる色数は飛躍的に高まった。キャラクターの線もより細やかになり、原作に近づく。CG化の進展が、これまでに手で描けなかった映像表現も可能にしている。
ストーリーやキャラクターの良さには定評があるのだから、現在の新しい映像で表現することで若い世代にも充分アピールするだろう。映画のヒットの条件として、幅広い支持がよく言われる。今回のシティーハンターは、男性、女性、新世代にバランスよくアピールする。
そして日本公開のあとは、海外も視野に入りそうだ。実は『シティーハンター』の人気は世界規模で、アジアからヨーロッパに広がる。80年代の当時からアニメは海外で頻繁に放送されていた。1993年にジャッキー・チェン、後藤久美子の出演で実写化された香港映画を思えている人も多いだろう。
そしてフランス。2019年にはフランスでもうひとつ『シティーハンター』の映画『ニッキー・ラルソン(原題) / Nicky Larson』が公開される。同国の俳優を起用した実写版である。これも作品の長年の人気によるものだ。『シティーハンター』を懐かしく感じ、復活させたいと思うのは日本だけに限らないようだ。
今回の映画を配給し、製作もするソニーミュージック系のアニプレックスは海外ビジネスにも強い。今後は、海外でも新しい獠と香の活躍が期待できるかもしれない。
- 文:数土 直志