豪雨が襲えば「熱海の大惨事」も…【埼玉県熊谷】近隣住民が怯える高さ11m「違法土砂の山」崩落危機 | FRIDAYデジタル

豪雨が襲えば「熱海の大惨事」も…【埼玉県熊谷】近隣住民が怯える高さ11m「違法土砂の山」崩落危機

熊谷市にある違法に積み上げられた土砂の山。すぐ横を走る市道に、土が崩れ出ているのがわかる
熊谷市にある違法に積み上げられた土砂の山。すぐ横を走る市道に、土が崩れ出ているのがわかる

「当該の土地を購入した建設関係の業者社長は、『きちんとやります』と言っていたんです。市の条例では土砂を積める高さは2mまで。ところが毎日のようにダンプカーで大量の土を搬入し始め、今では高さが11mを超えました。豪雨に襲われたら、土砂が崩れて私の家は一瞬で飲み込まれてしまいますよ」(近隣住民)

盛り土の崩落で28人が亡くなった、静岡県熱海市の土石流災害から2年――。住民が強い懸念を示す違法な土砂の山は、埼玉県熊谷市にもある。過剰に積み上げられ、崩落の危機に瀕しているのだ。

「市が業者に許可を出したのは’20年11月です。市外から運び込んだ土を、保管したいとの申請でした。市は1562㎡の土地に土砂量3000㎥、土を積む高さが2mまでとの条件で認めます。ところが土砂は許可のない場所にも投げ込まれ、一時は住宅地の数m横にまで広がったんです」(地元の不動産関係者)

現場はもともと畑と果樹園だったが、問題の業者社長・O氏が購入してからガラリと様相が変わってしまったという。

「昨年7月には、ゲリラ豪雨で土砂が崩れ市道に流入しました。裏手の道があった場所は、大量の水が溜まって通行できなくなっています」(前出・住民)

市の環境推進課の職員が話す。

「’21年4月から現場パトロールを行い、O氏や作業員へ繰り返し指導を行いました。行政指導は3度、面談や電話による指導は数十回にのぼった。しかし土砂は増え続け、’22年11月時点で堆積量は許可の6倍の1万8000㎡に及びます」

市は4月14日付でO氏に改善命令を出す。当人に話を聞こうと何度も携帯へ電話をしたが、「電源が入っていないか、電波の届かない場所にあるためかかりません」とメッセージが流れるだけだった。

環境問題に詳しい、弁護士の村田正人氏が指摘する。

「業者は残土を受け入れるだけ儲かるので、規制を無視します。逮捕されてもわずかな罰金を払うだけのため、撤去されることはない。市町村ごとに細かな対応ができる条例を作らないと、全国に土砂の山が増えることになるでしょう」

「熱海の大惨事」が再び発生しかねない土地は、熊谷だけではないのだ。

『FRIDAY』2023年5月12・19日号より

  • 取材・文・撮影形山昌由

形山 昌由

ジャーナリスト

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