最後まで諦めない立川理道 日本代表復帰への道 | FRIDAYデジタル

最後まで諦めない立川理道 日本代表復帰への道

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2018年6月のジョージア戦での立川
2018年6月のジョージア戦での立川

ここから先は、ただ待つほかないのか。ラグビー日本代表で主将経験のある立川理道が、2019年9月に始まるワールドカップ日本大会出場に向けタフな道を歩んでいる。

2月2日、岐阜・メモリアル長良川競技場での「日仏ラグビーチャリティーマッチ」に「トップリーグ選抜」の一員として出場。試合後は大勢の記者に囲まれた。

「いつ呼ばれてもいい準備はしておきたいと思います」

奈良県天理市で生まれ育った29歳。多くの楕円球ファンに知られたきっかけは、2011年度の大学選手権決勝だろう。天理大の主将兼司令塔のスタンドオフとして、鋭い仕掛けと相手の背後を突くパスで帝京大学に12―15と肉薄した。

2012年春には日本代表デビューを果たし、2015年のワールドカップイングランド大会では司令塔を支えるインサイドセンターとして過去優勝2回を誇る南アフリカ代表に勝利。グラウンド外ではリーチ マイケル主将らリーダー陣に加わり、歴史的3勝に喜んだ。

2016年、国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズへ加入。2017年にはキャプテンとなった。国内トップリーグ加盟のクボタでも2016年から主将を任され、日本代表としては2018年6月までに55キャップ(代表戦出場数)を取得してきた。

防御時も危険なエリアへ先回りしてタックルし、危機局面での接点からは相手の球をもぎ取る。一部のイングランド組(W杯出場者)にバーンアウトの兆候が見られた時期も、身長180センチ、体重95キロの器用なタフガイは戦い続けた。

日本大会でも活躍が期待されたが、2018年秋、代表を外された。

日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、直近のスーパーラグビーやトップリーグでのプレーをもとに「12番(インサイドセンター)に求められるフィジカル、ディフェンス力が欠けている」と立川の課題を公言。このタイミングでは両者の直接対話もあったようだが、直近では首脳陣から立川への個別のアプローチはないという。

同年12月に発表された「第3次ラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTLS)」や、その予備軍の「ナショナル・デベロップメントスコッド」にもその名を入れられず。2019年のサンウルブズとも契約していない。

昨年10月の時点で、こう言葉を選んでいた。

「置かれている立場で一生懸命やる。日本代表はいま、いい流れで来ていると思う。自分も、そこへ戻っていけるように、毎日、毎日、ちょっとずつでもやっていくしかないのかな…と」

岐阜では、フランスプロリーグ・トップ14のASMクレルモン・オーヴェルニュと戦った。相手はフィジカリティとスピードに長けるだけに、立川が防御力アップをアピールする絶好の機会だった。

「課題のディフェンスの部分では、身体を張ってプレーしたい」

しかしトップリーグ選抜は急造チームとあって、防御ラインの整備にやや苦しんだ。インサイドセンターに入った立川は果敢な飛び出しを徹底するも、「うまくいく部分も、食い込まれた部分もありました」。大柄なランナーの上半身にぶつかって気圧されたシーンを指してか、「課題が残っているのかなという感じです」と振り返った。攻めては相手の懐をえぐるような前進や得意のパスを披露も、29-50で敗れた。

日本代表やサンウルブズを支える強化委員会は、1月におこなわれた国内トップリーグのカップ順位決定戦(RWCTLSの過半数は休暇を取得)とこの日のゲームから選手ごとのビデオクリップを編集。代表首脳に送るという。

現地視察した薫田真広・強化委員長は、立川について聞かれ「最後までプレーしましたが、僕からは何とも言えないです」と話す。ジョセフの意向で今年就任の藤井雄一郎・強化副委員長も、帰り際に「きょう観た感じだと…」と言葉を選んでいた。立川と同じ天理高出身とあって「頑張って欲しい」としつつも、ジョセフ体制を全面肯定する。

こうなると、本人の言葉通り「状況的には厳しい」のだろうか。しかし天理大の小松節夫監督は、年末年始に会ったという立川の復帰を心待ちにする。取材に応じたのは昨年12月29日。今季の大学選手権準決勝に向けた練習後のことだった。

「何とか、戻って欲しい。皆、そう思っていると思うんですけどね。本人はとにかく頑張るだけですと言っているのですが…」

さかのぼって2015年。あの南アフリカ代表戦では、立川はもともとリザーブスタートの予定だった。しかし、同じポジションに怪我人が出たことでスターターとなるや、タックルに難のある相手スタンドオフのパトリック・ランビーへ何度もコンタクト。「自分の仕事は決まった」。強国の弱点を突く役割を全うし、列島を熱くした。

大舞台での強さが印象的なキャリア組の1人。重圧のかかる自国大会で重宝されそうではある。

その仮説に薫田は「ヘッドコーチの考え方がある。そういうことも含めてセレクションをしているとは思います。ゲームのクリップを見るという、シンプルな作業になる」とするが、かつての恩師である小松は教え子の力を信じている。

立川は「これから試合もないですし、アピール機会(を作ること)は難しい」としながら、「心の準備はしておきたい」とも続けた。

「クボタとしての活動も終わりますし、3月中旬くらいまではオフになってしまう。ずっとスイッチを入れているわけにもいかないので、この期間は家族との時間、自分の時間も大事にしながら、それでも、呼ばれた時にはいいパフォーマンスをしたいと思います」

ワールドカップ日本大会は、2019年9月20日に開幕する。

 

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター 1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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