「海にゴミを捨てるな！」
そう言うと、埋蔵金ハンターの八重野充弘氏（75）は地中から出てきた鉄塊をいまいましげに拾い上げた。この日の風速は秒速10m。小雨が雨合羽に吹き付ける悪天候の中、八重野氏は千葉県館山の浜辺で&#8221;幻の小判”を捜索していた。
「館山市の塩見海岸には、江戸時代後期の小判が数十枚から数百枚、眠っている可能性があるのです。男のロマンというか、本当にワクワクしますよね。でも、掘っても掘ってもゴミばかりで、傍（はた）から見たら清掃のボランティアみたいですよね（笑）」（八重野氏）
<figure id="attachment_310756" aria-describedby="caption-attachment-310756" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1d1aa586"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/IMG_3395-2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310756" class="wp-caption-text">朝11時に、八重野氏とトレジャーハンティングクラブの会員３名らと捜索を開始。各々に金属探知機を持ち、網羅的に探していく作戦だ</figcaption></figure>
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悪天候の中、八重野氏は金属探知機を駆使して黙々と小判を探し続ける。彼が夢中になるのも無理はない。実はすでにこの塩見海岸で希少価値の高い小判が発見されているのだ。
<figure id="attachment_310758" aria-describedby="caption-attachment-310758" style="width: 1751px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ca900024"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/1-2-e1683876303254.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310758" class="wp-caption-text">発見された元文小判。現在は館山市立博物館蔵となっている</figcaption></figure>
「’05年７月、近所に住む76歳の男性が、海岸を散歩中に金色に輝く１枚の『元文小判』（時価約30万）が砂に埋もれているのを発見しました。ローカルニュースで報じられただけで全国的な騒ぎとはならなかったのですが……。小判が１枚見つかったということは、まだ他にも埋まっている可能性が高い。だから、塩見海岸のなかでも手つかずのここに私は目を付けました」（八重野氏）
元文小判とは、８代将軍徳川吉宗の時代の元文元年（1736年）に製造された小判で、その後83年間流通した。そんな小判がなぜ、塩見海岸に埋まっているのか。その謎を解くカギは古文書にあった。八重野氏が言う。
<figure id="attachment_310750" aria-describedby="caption-attachment-310750" style="width: 3024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ae8e2eb9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/IMG_3385-2-e1683876107664.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310750" class="wp-caption-text">１枚目の小判が見つかった場所を案内する八重野氏</figcaption></figure>
「東北地方から江戸に年貢米など大量の物資を運ぶ船が個々の沖合を往来していたらしいんですよ。そのうち、少なくとも３隻が沈んでいることがわかっています。塩見海岸で見つかったのは、沈んだ輸送船のうちのいずれかから漂流してきた小判ではないかと私は睨んでいます。東京湾に向かってカギ爪のように突き出しているこの海岸は、漂流物が流れ着くことが多い。沈没船から小判が漂着しても不思議はないのです」
調べを進めるうち、沈んだ３隻の輸送船のうち１隻は大金を積んでいた可能性があることがわかったという。
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「この辺りを運行していた船が『鹿島屋』が発注した灘の酒を運んでいたと古文書に記されていたのです。鹿島屋といえば、江戸時代の半ばから２００年以上にわたって営業した酒問屋。’63年に当時の価格で6000万、現在なら10億円相当の埋蔵金が見つかったことで有名です。ただ、ここ塩見海岸で見つかったのは鹿島屋の船が積んでいた小判ではなかった。残りの２隻から漂着したものか、または古文書には記されてないもっと特別な船だったのかもしれない」（八重野氏）
<div data-friday-nextpage-lead="テンション爆上がりの「発見」"></div>
八重野氏は’14年から塩見海岸での宝探しを始めた。探索範囲を広げてもなかなか成果が出ない。だが昨年、希望の持てる動きがあった。八重野氏が解説する。
「昨夏、なんと２枚目の小判を見つけた人から連絡があったんです。実は５、６年前に別の海岸で海水浴をしていた家族がタコツボの中で光っているものを見つけた。それが元文小判だったのです。２枚も出てきたということは……一歩ずつ確実に小判に近づいている感触があります」
<figure id="attachment_310760" aria-describedby="caption-attachment-310760" style="width: 2399px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c6feff86"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/IMG_3401-1-e1683876397174.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310760" class="wp-caption-text">捜索開始10分。金属探知機が「ピーッ！」と大きな反応音をあげたが、掘り起こして出てきたのは鎖の一辺とみられる鉄塊だった</figcaption></figure>
八重野氏はこの９年間、年に２〜３回、仲間と一緒に塩見海岸を訪れて小判探しを行っている。波打ち際は金属探知機で調べ、海中は水面から目視できる範囲を調査した。今後は「本格的な水中探査もやりたい」という。
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<figure id="attachment_310763" aria-describedby="caption-attachment-310763" style="width: 2782px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="123e871b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/IMG_3393-1-e1683876528576.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310763" class="wp-caption-text">八重野氏お手製の器具。砂浜や海中で、小判を掘るのに適した形をしている</figcaption></figure>
「塩見海岸では誰でも気軽に、安全に埋蔵金の発掘ができます。皆さんも家族や仲間と一緒に来てみてください。埋蔵金探しの動きが全国に広まることを願っています」（八重野氏）
この日見つけたのは、鉄の鎖と金属片だけだったが、古文書が正しければ、千葉の房総半島には数百万円はくだらない小判が埋まっているという――。
<figure id="attachment_310764" aria-describedby="caption-attachment-310764" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="059bd539"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/IMG_3406-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310764" class="wp-caption-text">金属探知機の反応があった場所を凝視する八重野氏</figcaption></figure>
<figure id="attachment_310765" aria-describedby="caption-attachment-310765" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a33445b6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/IMG_3411-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310765" class="wp-caption-text">より細かい範囲に反応する探知機をあてて、反応があった詳細な場所を探り当てていく</figcaption></figure>
<figure id="attachment_310766" aria-describedby="caption-attachment-310766" style="width: 3024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9d107ea8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/IMG_3421-1-e1683876635338.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310766" class="wp-caption-text">反応があった際、画面に表示される数値が高ければ高いほど、反応した金属が金である可能性が高いという</figcaption></figure>

「海にゴミを捨てるな！」 そう言うと、埋蔵金ハンターの八重野充弘氏（75）は地中から出てきた鉄塊をいまいましげに拾い上げた。この日の風速は秒速10m。小雨が雨合羽に吹き付ける悪天候の中、八重野氏は千葉

千葉・館山で小判ザクザク！？　埋蔵金ハンターの捜索に密着

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