能登などの地震頻発で分かった「次の巨大地震は首都圏で起こる」
日本列島に不気味に忍び寄る″未曽有の大災害″専門家は「少なくとも数年以内に……」
倒壊した家屋に押しつぶされた車、民家を直撃した巨大な岩石――。
人間が抗(あらが)いきれない自然災害の猛威を、再び見せつけられた。5月5日、マグニチュード(M)6.5の大地震が能登半島を襲った。石川県珠洲(すず)市では震度6強を観測。同市正院町にある寺の住職が慄(おのの)く。
「(能登半島では)昨年6月にも大きな地震が起きていますが、今回は比べものにならないくらい激しかったです。ドンと下から突き上げられる感じで、横揺れが長く続いた。本堂の仏像や墓石が多数倒れました。とても不気味です」
能登半島周辺では、’20年末から300回以上の群発地震が発生。当日夕方に会見を開いた気象庁の下山利浩・地震情報企画官は、要因について「(地下水などの)流体が関与している可能性がある」と指摘した。高温高圧の水が岩盤を押し上げ、断層の隙間に入り地震を誘発したとみられるのだ。立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学氏が語る。
「地下の温度は、一般的に100m下がるごとに3℃ほど上がります。能登半島のように、プレート(巨大な岩盤)が地下300㎞から500㎞も落ち込んでいる場所では極めて高温になります。流体といっても、液体の水ではありません」
地球物理学者で、武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏も同意見だ。
「(地下の流体は)マグマだと思います。能登半島は群発地震の空白地帯でした。しかしマグマの上昇により、これまで大地震に襲われなかった地域でも大きな揺れが発生する危険性は十分あるんです」
日本列島全体に忍び寄る、巨大地震の恐怖。マグマとともに不気味なのは、東日本大震災を引き起こした日本の東側にある太平洋プレートの動きだ。
「太平洋プレートが東から西に動いていることで、隣接する他のプレートの活動を活発化させています。能登半島の地震は、太平洋プレートに圧迫された北米プレートとさらに西にあるユーラシアプレートの境界で起きました。能登半島同様、注意が必要な地域は他にもあります。同じように太平洋プレートから圧力を受けるフィリピン海プレートと、ユーラシアプレートの境界です」(前出・高橋氏)
当該の境界はフィリピンから沖縄、相模トラフ(関東南部沖の海溝)の広範囲に及ぶ。実際フィリピンや沖縄本島周辺でM7クラスの地震が発生。南から東へ伝播(でんぱ)している印象だ。高橋氏が続ける。
「境界線上にある南海トラフ(四国から東海地方沖の海溝)で巨大地震が起きた場合、国は32万人超の犠牲者が出ると予測しています。遠い未来の悲劇ではありません。過去の事例から考えれば、少なくとも数年以内に起きる可能性が高いのです。関東大震災を誘発した相模トラフでも、地震が発生する危機が迫っている。首都圏も甚大な被害を受け、犠牲者は全体で50万人以上にのぼるでしょう」
能登半島を襲った巨大地震は、けっして他人事ではない。はるかに威力の大きい未曽有の大震災が、いつ首都圏を壊滅させてもおかしくないのだ。
『FRIDAY』2023年5月26日号より
- PHOTO:幸多潤平