銀座「仮面強盗」高校生4人を再逮捕へ なぜ高級時計を狙ったのか?強盗団が突いた”時計転売の盲点” | FRIDAYデジタル

銀座「仮面強盗」高校生4人を再逮捕へ なぜ高級時計を狙ったのか?強盗団が突いた”時計転売の盲点”

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店舗のガラスは割れ、周囲には規制線が張られていた(写真:時事通信社)
店舗のガラスは割れ、周囲には規制線が張られていた(写真:時事通信社)

タランティーノ監督の映画を彷彿させるような強盗劇だった。5月8日、18時を過ぎていたとはいえ、まだ日没前で明るい東京・銀座のメインストリートで時計店が襲撃される事件が起きた。通りから丸見えの状態で、仮面で変装した黒装束の男4人がショーケースをたたき割っているシーンに、映画の撮影と見間違えた通行人もいたほどだった。しかも犯人は16歳から19歳の少年たちで、中に高校生が含まれていたというのも驚きだが、どうやら綿密な計画のもとに実行された犯行ではなかったようで、警察の追跡をかわすこともできずあっけなく逮捕されるお粗末さだった。彼らが襲撃したのはロレックスの専門店だが、宝石店ではなくなぜ時計店だったのか。

すでにニュースになっているが、実はここ数年、ロレックスやパテックフィリップなど高級時計の値段が爆上がりしているというのだ。しかも中古品の値段が、まったく同じモデルの新品を上回るという珍現象まで起きている。特にロレックスは、人気モデルの『デイトナ』が定価約180万円のところ、中古品の中には400万円以上で取引されているものもある。同じく定価約140万~150万円の『サブマリーナ』の中古品は約250万~300万円の価格がつけられているという。どうしてこんな現象が起こっているのだろうか。年商300億を誇る高級時計買取専門事業を展開する「株式会社陽吉グループ」の吉山亨社長はこう語る。

「世界中で圧倒的な人気を誇るロレックスが株や金と同じように金融資産と見なされるようになって取得しようとする人が増えたことがフックとなり、そのため転売で儲けようとする人たちも増えてきたのが一因です。転売と聞くと、日本の家電量販店で爆買いする中国人を思い浮かべますが、ロレックスの『転売ヤー』は世界中にいます。そのため、世界各地の時計店に新品のロレックスが入荷すると、狙っていた転売ヤーたちが即座に、しかも大量に購入してしまうのです」

何十個ともなれば支払われるお金は億単位となり、転売ヤーとわかっていても店側は売り渡すという。さらに、ロレックスに目を付けたのは転売ヤーだけではない。

「スイス時計協会(FH)が公表した2021年の統計によると、スイス時計輸出額でロシアは世界第17位の市場となっています。金額にすると2億6010万スイスフラン(約397億円)ほどで、まだそれほど大きな市場とは言えませんでしたが、今後も新興富裕層などの需要増加が見込まれていました。それがウクライナ侵攻でなくなったわけです。ところが日米欧政府からの経済制裁により、また事情が変わりました。ロシアの富裕層の海外資産が凍結される事態となったのです。

対象はまだ一部の超富裕層だけですが、今後どこまで広がるか不安を感じている富裕層が多く、外貨建て資産を『現物』に移そうとする動きが加速すると思われます。そこで、各国政府から捕捉されにくい資産として高級時計が目を付けられました。ロシア人資産家がこぞってロレックスを手に入れようとしています。なんとも皮肉なことですね」(ファイナンシャルプランナー)

様々な理由でロレックスが狙われているのだが、盗品をさばくのはそう簡単なことではない。特に時計のようにシリアルナンバーが刻まれているものは足がつきやすい。保証書などが付いていなければ売却も難しいと思われる。さらに盗難にあった場合は盗品リストが作られすぐさま取り扱い業者に配られるという。しかし、盗んだロレックスを現金に換えるのはそれほど難しいことではないという。

「ロレックスの転売ヤーは世界規模ですから、国内で処理できなくてもなんとかなります。基本的には飛行機に乗ってカバンに入れて持ち出します。ただ、大量だと見つかってしまうので、1個1000万円以上するような時計ですと手首につけてそのまま持ち出すのです。盗品の場合、アメリカでの売買は無理です。シリアルナンバーが全てデジタルで管理されていますから。ヨーロッパなどではまだそこまで管理されていませんから個人間の売買であれば可能でしょう。大金持ち達は目利きですし、購入した後、転売するわけではなくコレクションします。つまりエンドユーザーにとっては盗品でも関係ないのです。

もう一つ盲点なのは、日本国内の転売もそれほど困難ではないということです。盗品は古買屋に流れるのです。今回のような大きな事件だとシリアルナンバーが警察からそういう店にも届きますが、それには時間がかかります。つまりタイムラグがあるのです。その前に処分してしまえば売り抜けられる。そこが大きな問題なのです」(前出・吉山氏)

白昼堂々の強盗劇の犯人に高校生がいたことも衝撃だが、時計が世界的な”金融商品”になっていたことも驚きだ。警視庁は17日、高校生ら4人を再逮捕する方針を固めたという。なぜ、時計店を狙ったのか、徹底的に追求してもらいたい。

  • 佐々木博之(芸能ジャーナリスト)

    宮城県仙台市出身。31歳の時にFRIDAYの取材記者になる。FRIDAY時代には数々のスクープを報じ、その後も週刊誌を中心に活躍。最近は、コメンテーターとしてもテレビやラジオに出演中

  • PHOTO時事通信社

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