フリーライター、「森本美由紀 作品保存会」代表。少女小説家、漫画原作者、作詞家としても仕事歴あり。『mcシスター』、『25ansウエディング』（共にハースト婦人画報社）、『ホットドッグプレス』（講談社）などを経て、『25ans』、『AEAJ』（共にハースト婦人画報社）、『クウネル』（マガジンハウス）等に原稿を提供。編集を担当した書籍に『安部トシ子の結婚のバイブル』（ハースト婦人画報社）などがある。

井出 千昌

<h3><span class="strongInContent">飼育員でもないのに成長を見守ってしまいました…</span></h3>
<p><span class="strongInContent">「娘はシャンシャンより１歳年下です。パンダっぽい名前にしたいという希望を強く持っていましたが妻に却下されまして。でも、繰り返しの名前というのは一応通りました。香香（シャンシャン）の“香”を入れたいとも思いましたが、画数がよくなくて断念しました」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>のっけからとんでもない話をするのは、パンダマニアの間ではこの人ありと知られるカメラマン、高氏貴博さんだ。&#8217;11年８月。ひょんなことから上野動物園の年間パスポートを購入してしまい、パンダ舎で見かけたシンシンの、「デカい桃が転がってるみたいなおシリ」にひと目惚れ。以来12年間、休園日以外はほぼ毎日上野動物園に通い、ひたすらパンダを撮り続けてきた。</p>
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<p>高氏さんはなぜそこまでパンダに惹かれてしまうのか。約５年にわたるシャンシャンとの思い出を中心に、パンダのディープな魅力を聞いた。</p>
<figure id="attachment_313806" aria-describedby="caption-attachment-313806" style="width: 5568px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b4f3b3e4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/1_20190214-DSC_3857-xi.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313806" class="wp-caption-text">高氏さんは “彩彩（サイサイ）”で応募したがあえなく落選。「シャンシャンは発音がきれいで字も素敵。ピッタリだなと思いました」（&#8217;19年２⽉14⽇・PHOTO：高氏貴博さん／著書『毎日パンダの1010日シャンシャン写真集』〈青春出版社〉より）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">パンダの個体差がわかってきたのは撮影開始から１ヵ月後。周囲の予想を裏切って上野詣は延々と</span></h3>
<p>可愛いだけなら、多分「可愛かったな」で終わっていただろうと高氏さんは振り返る。けれどパンダの動作や仕草には、妙に人間臭いところがあった。</p>
<p><span class="strongInContent">「非常にだらしのない感じで寝ていたりとか、そんな緩い部分に自分と共通する何かが見えたんです。オジサンくさかったり、かと思うと赤ちゃんぽい仕草をしたり。そのギャップにも惹かれました」（高氏貴博さん／以下同）</span><span class="strongInContent"> </span></p>
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<p>当初は会社も奥さんも「どうせそのうちに飽きるだろう。やりたければやれば」と思っていたが、一向にやめる気配がない。幸か不幸かコロナ以前からリモートOKの会社だったので、ついにはパソコンを持ち込み、上野動物園で仕事をするのが日課となった。</p>
<p><span class="strongInContent">「最初はどのパンダも同じと思っていましたが、１ヵ月ぐらい通ううちに、顔の違いがわかってきました。耳の形や位置、垂れ目に見える黒い部分の形や大きさ、みんな違うんです」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>シンシンの妊娠という嬉しいニュースが飛び込んできたのは、そんな生活を続けて６年目の春だった。</p>
<p><span class="strongInContent">「毎年春になると必ず、今年は上野のパンダの赤ちゃんはどうなのかっていうのがニュースになるんですよね。どうせ今年もダメだろうと油断していたら、あれよあれよと」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_313807" aria-describedby="caption-attachment-313807" style="width: 5385px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="91dfe99a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/2_20180327-DSC_7536-xi.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313807" class="wp-caption-text">’18年３⽉27⽇：お母さんのシンシンと、お花見まったり２ショット。赤ちゃんの頃はシンシンが愛情たっぷりになめて育てたため、ピンク色の綿菓子のようだった</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="中国は留学先で、実家はあくまでも上野…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">父母のいいとこ取りをした「奇跡の美パンダ」、シャンシャン誕生！</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>&#8217;17年６月12日に生まれたシャンシャンの初公開は同年12月19日。当初は事前申し込み・抽選方式で、倍率は最高で144倍という狭き門だった。</p>
<p><span class="strongInContent">「動物園が頻繁に映像を流してくれていたので知っているつもりでしたが、自分の目で見ると“本当にこんなに可愛い子がこの世に実在するんだな”っていう感激がありました」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>まるで千年に一度のアイドルを発掘したような感想。どのパンダにも分け隔てなく愛情を注ぎ、贔屓はしないのが信条の高氏さんをもってしても、シャンシャンの愛らしさは格別だったらしい。</p>
<p><span class="strongInContent">「人間の目から見て、外見的なバランスが全て整っていると感じるのがシャンシャンなんです。お父さんのリーリーは“イケパン”って言われるくらいイケメンのパンダで、オッサンくさいところもあるんですがポーズを決めてみたりして、アイドル性が高い。お母さんのシンシンはとにかく可愛らしくて、シャンシャンは２頭のいいとこ取り。お父さんのやんちゃで面白いところとお母さんの可愛さをうまく受け継ぎ、人を惹きつけるような、いろんな魅力が凝縮されていると思います」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_313808" aria-describedby="caption-attachment-313808" style="width: 3347px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="201e6cc9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/3-1_20180816-DSC_6397-xi.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313808" class="wp-caption-text">&#8217;18年８⽉16⽇︓お部屋でごろごろ中のシャンシャン。カラスとお友だちになったり、お母さんに膝カックンしたり…。数々の名シーンを生んだシャンシャンのおてんばぶりは、お父さん譲りだった？</figcaption></figure>
<figure id="attachment_313809" aria-describedby="caption-attachment-313809" style="width: 5568px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a904015b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/3-2_20181027-DSC_0664-xi.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313809" class="wp-caption-text">&#8217;18年10⽉27⽇︓お昼寝⽇和なのかほとんど寝ていたシャンシャン</figcaption></figure>
<figure id="attachment_313810" aria-describedby="caption-attachment-313810" style="width: 4194px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="425b9dd4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/3-3_20190123-DSC_7167-xi.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313810" class="wp-caption-text">&#8217;19年１⽉23⽇︓⼩庭でカラスと⾒つめ合うシャンシャン</figcaption></figure>
<figure id="attachment_313811" aria-describedby="caption-attachment-313811" style="width: 2000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="522f7c7d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/3-4_20190306-DSC_1559-xi.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313811" class="wp-caption-text">&#8217;19年３⽉６⽇︓⼩庭でアクティブシャンシャン</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">認識してもらえなくていい。景色の一部だっていい。同じ空間にいることさえできれば</span></h3>
<p>高氏さんは写真展も数多く開催している。中でも今年２月に松坂屋上野店で開かれた「毎日パンダさんの920日シャンシャン写真展」は１日１カット厳選の920枚を時系列で並べ、成長がひと目でわかると大好評！ 書籍化も決定した。</p>
<p>当初は呆れていた会社＆家族も、今では全面的に応援してくれている。高氏さんも譲歩（？）し、娘さんが誕生してからは家族のために、時々“休パン日”を入れるようになった。</p>
<p>とはいっても、わずか１分の観覧のために最長240分待ちの行列に耐え、コロナの臨時休園明けのたびに会えなかった時期の成長を喜び、親離れをする際には「相手は動物。かわいそうだなどと思い込みすぎないように」と自省して、数々の葛藤を繰り返した５年間なのだ。さすがに毎日訪ねていたら、シャンシャンだって「いつものあの人」くらいの認識はあるのかと思いきや…。</p>
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<p><span class="strongInContent">「それは一切ないです。餌をくれない人は景色でしかないと、自分は思ってるので。人が多すぎて覚えられないでしょうし、パンダはそんなに目がよくないので、景色が揺れてるぐらいにしか感じてないと思うんです。自分からシャンシャンの目線のほうに移動して、目が合った的な感じの写真は撮りましたが、実際には合ってはいないだろうと思います」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>これぞ無償の愛。健気にもほどがある。</p>
<figure id="attachment_313812" aria-describedby="caption-attachment-313812" style="width: 3370px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="38a344f5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/4_20181211-DSC_1708-xi.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313812" class="wp-caption-text">&#8217;18年12月11日：シンシンの元を離れ、独り立ちしたシャンシャン。「あ、高氏さんコンニチハ！」と言っているように見えるが、実は目線は合っていないのであった</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">中国は留学先で、実家はあくまでも上野。四川省まで会いに行く準備も整いました！</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>そしてやってきた返還の日。高氏さんはたくさんのパンダウォッチャーとともに動物園から成田空港までシャンシャンを追いかけ、中国行きの飛行機を見送った。</p>
<p><span class="strongInContent">「生まれる前から成長を見届けてきたので、自分の子どもを留学に出すような気持ちでした。コロナ禍は辛いことばかりでしたが、そのせいで返還が何度も延期になり、５歳まで成長を見届けられたのは不幸中の幸いです」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>親の気持ちとしては中国は留学先で、実家はあくまでも上野。現在シャンシャンは四川省の施設に留学中だが、公開場所が決まったら、もちろん会いに行くという。</p>
<p><span class="strongInContent">「リーリーとシンシンが来た時は震災のあとで連日暗いニュースばかり。パンダの来日でみんな明るくなりました。シャンシャンもコロナで落ち込んだ気持ちを上げてくれた。パンダには世の中を明るくしてくれる、とても大きな力があります。これからも上野に通い、パンダズを見守り続けたいと思っています」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_313813" aria-describedby="caption-attachment-313813" style="width: 4388px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3be74009"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/5_20211225-DSC_6821-xi.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313813" class="wp-caption-text">中国でも人気者のシャンシャン。一般公開を前に、たくさんのコメントが寄せられているという（’21年12⽉25⽇）</figcaption></figure>
<p><a href="#" data-ident_hash="0ac216f6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/6-1_07_20230201-DSC_6395.jpg" alt=""></a></p>
<figure id="attachment_313815" aria-describedby="caption-attachment-313815" style="width: 933px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="61791345"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/6-2_main.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313815" class="wp-caption-text">松坂屋上野店の写真展を見たお客様たちからの要望で、書籍化が実現！『毎日パンダの1010日シャンシャン写真集』（青春出版社）は、６月12日に発売される</figcaption></figure>
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<p><span class="strongInContent">高氏貴博</span> 上野動物園のパンダを毎⽇撮影するカメラマン兼グラフィックデザイナー。1978年、群⾺県⽣まれ。埼⽟県在住。2011年に始めたブログ「毎⽇パンダ」が反響を呼び、テレビや新聞、雑誌など多くのメディアで話題に。ブログは毎日更新中。『あいうえおパンダ』（青春出版社）、『毎⽇シャンシャン 2017-2021』（KADOKAWA）、『I LOVE シャンシャン︕ 保存版写真集』（エムディエヌコーポレーション）ほか著書多数。</p>
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<p><a href="https://mainichi-panda.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="strongInContent">■高氏貴博さんのブログ「毎⽇パンダ」</span>はコチラ</a></p>
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<div data-friday-nextpage-lead="まだまだある！秘蔵「シャンシャン」カット"></div>
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<figure id="attachment_313849" aria-describedby="caption-attachment-313849" style="width: 7953px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="699c2249"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/7_20220609-DSC_3315-xi.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313849" class="wp-caption-text">&#8217;22年６⽉９⽇︓ついに撮影できた桃尻シャンシャン</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_313850" aria-describedby="caption-attachment-313850" style="width: 7921px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="02c6b898"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/8_20221028-DSC_4910-xi.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313850" class="wp-caption-text">&#8217;22年10⽉28⽇︓ジャイアントパンダ来園50周年の記念日。お部屋でお昼寝中のシャンシャン</figcaption></figure>
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井出千昌

『毎日パンダの1010日シャンシャン写真集』（高氏貴博 著／青春出版社）より

「飼育員でもないのに成長を見守ってしまいました」。休園日以外はほぼ毎日上野動物園に通い、ひたすらパンダを撮り続けてきた高氏さん。約5年にわたるシャンシャンとの思い出を中心に、パンダの魅力を聞いた。

毎日上野動物園に通って…「シャンシャンの1010日」を撮り続けたパンダウォッチャーの無償の愛

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