東京、大阪など都心部を中心に患者が増加中【人食いバクテリア】溶血性レンサ球菌 致死率30%の恐怖
発症すると手足が2倍ほどに膨れ激痛が走る
意識不明の状態で搬送された60代女性の右脚には、紫色の腫(は)れが確認された。医師が切開すると、筋膜についた無数の菌を発見。短時間のうちに両脚で壊死(えし)が進行し、切断せざるをえなかった――。
手足が2倍ほどに膨れ、激痛に苦しみながら死に至る恐ろしい病気が蔓延している。『劇症型溶血性レンサ球菌感染症』だ。医療ガバナンス研究所理事長の上(かみ)昌広氏が解説する。
「発症すると手足が急速に腫れ上がり1時間に数㎝というスピードで腐っていくため、俗に『人食いバクテリア』と呼ばれています。壊死を食い止めるには、患部を切断するしかありません。数時間という短い期間に重篤化し亡くなるケースもある。致死率は30%にのぼります」
東京、愛知、大阪など都心部を中心に、「人食いバクテリア」による患者が増えている。厚生労働省によると感染例は’21年が622、昨年は732、今年は4月下旬で263と増加傾向にあるのだ。「人食いバクテリア」は、くしゃみなどによる飛沫を通じて体内へ。新型コロナウイルスの影響で多くの人々の免疫力が弱まり、患者数が増えていると思われる。ナビタスクリニック理事長の久住英二氏が話す。
「レンサ球菌は咽頭(いんとう)や皮膚に住む、ごくありふれた菌です。一方で、まれに血液や筋肉などに入り込み劇症化することがあります。初期の症状は、発熱、だるさなど風邪と似ています。しかし容態は一気に悪化し、菌が体内の組織に染み込み身体の深い部分で壊死がどんどん広がっていくんです」
実際に患者を診察した、長野県の岡谷市民病院・清水可方(よしかた)氏が振り返る。
「13例の患者さんを診(み)ていますが、助かったのは4例だけでした。なんの病気かわからないうちに、あっという間にショック状態で亡くなられた。病理解剖で、初めて『劇症型溶血性レンサ球菌感染症』とわかったんです。1年以上生きた患者さんは3例しかありませんでした」
発熱や喉痛などの症状とともに手足の腫れがある場合は、一刻も早く医師に診察してもらうべきだろう。

『FRIDAY』2023年6月9日号より
PHOTO:Getty Images(1枚目) 岡谷市民病院・清水氏提供(2枚目)