カンヌ受賞の役所広司主演『銀河鉄道の父』にみた、森七菜の「逆境を跳ね返す強さ」の源 | FRIDAYデジタル

カンヌ受賞の役所広司主演『銀河鉄道の父』にみた、森七菜の「逆境を跳ね返す強さ」の源

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
映画『銀河鉄道の父』での演技が好評な森七菜
映画『銀河鉄道の父』での演技が好評な森七菜

現在公開中の役所広司主演の映画『銀河鉄道の父』。その中で、菅田将暉演じる宮沢賢治の妹・トシ役を演じる森七菜の演技に大きな注目が集まっている。

この映画は、門井慶喜が直木賞を受賞した同名小説が原作。唯一無二の詩や物語で、今もなお世界中から愛されている宮沢賢治の37年の生涯を、今作では父・政次郎の視点から描く感動作だ。

一度では飽き足らず、何度も劇場に足を運ぶ〝おかわり銀河〟現象が波紋を呼ぶ中、見終わった客席から嗚咽の漏れる映画としてSNSには〝涙腺崩壊コメント〟が殺到している。

溢れ出る息子への愛に振り回され、賢治の紡ぎ出す物語を誰よりも愛するようになる政次郎を演じるのは、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を三度手にし、27日にはフランスカンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞した役所広司。そして透き通ったガラスのように繊細で無邪気な賢治を演じるのは、こちらも日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を手にしている菅田将暉。

しかしそうした「役所広司VS菅田将暉」の演技バトルを目の当たりにしても、トシを演じる森七菜の演技はまったく見劣りしない。いやそれどころか、想像の斜め上をいく素晴らしい演技に度肝を抜かれる場面がいくつもあった。

進学を拒まれ頭を抱える賢治のために、

「進学はいずれ宮沢家のためになる。お父さんはそれがわかる”新しい父親”だ」

といって、政次郎を説得するトシ。

認知症の祖父・喜助(田中泯)が暴れ出すと、オロオロするばかりの賢治を尻目に、頰を張り、

「きれいに死ね」

と諭して、ぎゅっと抱きしめるトシ。

トランクから原稿用紙を取り出し、賢治が『風の又三郎』を読み聞かせる。
すると、不治の病に侵されたトシが涙を流して喜ぶ。その姿を見て、奇跡を祈るようにペンを走らせ物語を紡ぐ賢治。

力強さと儚さを併せ持つトシこそ、宮沢家の大黒柱。こういった場面は、もはや森七菜なくしては成り立たなかったのではないか。

「森さんの演技について、役所さんは『トシが亡くなる時の森さんの存在感が素晴らしくて、悲しいけれど家族がひとつになる美しいシーンになりました』と話しています」(前出・ディレクター)

しかしクランクインの際は、成島出監督に「全然ダメだね」と言われ、悔しくて情けなかったと話す森。それでも諦めず、「やるしかない!」と自身を奮い立たせ食らいつくうちに、不思議と楽しくなり、

「自分が想像する以上の力が出せた」

と森は撮影時を振り返る。

そんな森に対して

「トシはとても強い子なのですが、森さん自身にもそのような強さがあると感じました」

と語る役所広司。果たして、女優・森七菜の強さの源とは一体、何なのか。

「森は9歳の時に両親が離婚。大分県に引っ越し掘っ建て小屋のような家で暮らしながら、女優になる夢を抱きました。中学3年生の夏休みに大分でスカウトされると地元の高校に通いながら上京してオーディションを受け、’19年に大ヒットアニメ映画『天気の子』で2000人以上のオーディションを勝ち抜きヒロイン役に抜擢。

翌年憧れの岩井俊二監督が手掛ける映画『ラストレター』にも抜擢され、数々の新人賞を獲得。同年にはGP帯の連ドラ『この恋あたためますか』(TBS系)で主役を演じるなど、スターダムを駆け上がりました」(ワイドショー関係者)

しかし’21年に〝事務所移籍騒動〟が起き、映画やドラマのオファーが激減。そんな中、’23年1月に配信されたNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』にW主演すると総合演出・脚本を担当する是枝裕和監督から

「彼女の中には小さな樹木希林がいる」

と激賞され、今作での演技に注目が集まっていた。

「今作に出演するかどうか、すごく悩んだという森。だが大物俳優を相手に見事に大役を演じきり、若手実力派女優のひとりとして頭角を現しました。

6月に公開され、W主演する映画『君は放課後インソムニア』、さらに7月期には月9ドラマ『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)で間宮祥太朗とW主演するなど森は今、まさに時の人。大きなチャンスが訪れています」(ワイドショー関係者)

数々の逆境を乗り越え、進化する森七菜。22歳を迎える今夏、さらなる飛躍を期待したい。

 

  • 島 右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

  • PHOTO結束 武郎

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事