スポーツ動作解析の第一人者が徹底分析!吉田正尚 日本人離れした″超異例スイング″秘密が分かった!
「日本人離れした超異例のスイングです。日本人打者は通常、下半身の力を効率良くバットに伝えるため腰→胸→肩という順序で動きます。脚を高く上げタメを作って投げる日本人投手に対しては、有効なスイングでしょう。ただ、タメを作らず、いきなり投げてくるメジャー投手には対応できない。彼はメジャー投手へも順応した、腰や肩がほぼ同時に動くコンパクトで素早いスイングができています」
こう語るのは、スポーツ動作解析の第一人者で筑波大学・体育専門学群准教授の川村卓(たかし)氏だ。
川村氏が「超異例のスイング」の持ち主と驚くのは、レッドソックスの吉田正尚(29)である。日本時間5月23日現在(成績は以下同)、打率.308(チーム1位)、6本塁打(同2位)、打点29(同2位)と絶好調。マルチ安打は17度も記録している。メジャー1年目で大活躍の秘密を、川村氏が吉田のフォームから分析した。
「画像1と2を見てください。両脚のスタンスが狭くテイクバックが小さい。コンパクトな始動をしているんです。日本人には脚を高く上げるなど動作の大きい打者がいますが、メジャー投手の豪速球や手元で動くボールに適応できません」
画像3では左ヒジが折りたたまれ、バットがグリップからスムーズに出ていることが分かる。
「最も驚かされるのが画像4です。普通は肩が後方に残り、胸を張るような姿勢になるものです。しかし吉田は肩と胸とバットのヘッドが、縦軸で同じラインにある。メジャーではよく見られる打ち方ですが、日本人では珍しい。胸郭をうまく使い、肩と腰を同時に動かし一気にバットを振っている。上半身の力が強いので、こうしたスイングができるんです」
画像5では、泳がされているように見えるが身体の軸はブレていない。
「画像6では、吉田の成長が見られます。オリックス時代は、フォロースルーでも両手でバットを持っていました。これでは腰が回り過ぎ、負担がかかってしまう。腰痛で出場登録抹消経験のある吉田は、フォロースルーで左手を放すことで、腰への負担を軽減させているんです」
川村氏によると、オリックス時代から基本的なスイングは変わらないという。
「日本にいる時、吉田本人に『どうしてメジャーの打者のようなスイングができるの?』と聞いたことがあります。吉田はこう話していました。『幼い頃から日本の野球を見ず、メジャーの試合ばかり観戦していたので自然と身についたのかもしれません』と。この勢いなら、オリックス時代と同等の成績が残せるでしょう」
日本では、首位打者のタイトルを2度獲得している吉田。メジャーでもリーディングヒッターになれる可能性は高い。
『FRIDAY』2023年6月9日号より
- PHOTO:田口有史