<figure id="attachment_314470" aria-describedby="caption-attachment-314470" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="73eedb7b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/3579e0275b3dcb66d66084341d9289b5.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-314470" class="wp-caption-text">容疑者が12時間立てこもった自宅。庭の小屋には母親が開いていたフラワーアート教室の看板がかかっていた</figcaption></figure>
「『助けて！』と聞こえたのでそちらを見ると、迷彩服の男性が女性を追ってナイフで背中をブスッと刺した。女性はバンザイの恰好で目を見開いたまま倒れました。『なんでこんな酷いことするんだ』と聞くと、男は『殺したいから殺してやった』と……。その時マスクの横から見えた特徴的なモミアゲでマサノリかもと思いました」（事件の目撃者）
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５月25日、散歩中の女性２人を刺殺した上、駆けつけた警官２人を所持していた猟銃で射殺したとして、青木政憲（まさのり）容疑者（31）が逮捕された。逮捕後、容疑者は犯行の理由について「（被害者の）２人が『独りぼっち』と自分を馬鹿にしていると思った」と供述しているという。
現場となった長野県中野市の集落は山に囲まれ、果樹園と田んぼが並ぶ地域。青木容疑者は、市議会議長の父・正道さん（事件後に辞任）と、人気ジェラート店を営む傍らでフラワーアート教室を開く母・Ａ子さんのもと三人兄弟の長男として生まれた。何不自由なく育った青木容疑者だが、幼い頃からコミュニケーションに難があったという。
小・中・高の同級生が語る。
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「いじめられているとかではないのですが、友達と一緒にいる姿は見たことがない。両親ともに地元では有名人で、妹も弟も明るい性格なのに、なんでマサノリはこんなにおとなしいんだろうと思っていました。小さい頃から、『マチャ』ってあだ名で呼ばれていました」
野球好きの父親の影響で小学校から野球を始めた青木容疑者。中学でも野球部に所属し、隣町の名門公立高校に進学すると山岳部に入ったが、常に友達はできなかった。「学歴をつけてあげたい」との親の意向で、１年の浪人生活を経て東海大学に合格し上京した。
青木容疑者は名家の長男だったが、本誌の取材では「親からの過度な期待があった」という証言はなく、むしろ温かく見守る両親の姿が浮かび上がってきた。しかし、青木容疑者にとってはそんな”家族愛”が孤独を深める要因だったのだろう。
両親に勧められて入った部活動で友達はできず、期待されて入った大学にもやはり馴染めなかった。やがて体調を崩し、中退。「青木家の一員」になれない自分に絶望したのか、この頃から徐々に不安定になっていった。事件直後、容疑者の両親は「大学時代にマサノリが『盗聴されている』『みんなに”ぼっち”と言われる』と言い出したために実家に連れ戻した」と地元紙の取材に答えた。さらに「今回被害者に悪口を言われたというのも幻覚だと思う。受診を勧めたが拒否された。親子の信頼が切れることを恐れてそのままにしていた」と語っている。
<div data-friday-nextpage-lead="息子を信じた家族"></div>
大学を中退し地元に戻っても、状況は好転しなかった。青木容疑者は父親の紹介で地元のお祭り保存会に入会。容疑者に笛を教えていた男性はこう語る。
「お父さんから『入れてやってくれないか』と言われ、歓迎しました。本人の意思ではないと思いますが、長男として地元に馴染んでほしかったんでしょう。飲み会にもちゃんと参加して笛の練習も真面目にやる。『朝は４時半に起きる』と言っていて、しっかり農業もしているんだなと思いました。ただとにかく無口で何を考えてるかわからなかった」
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青木容疑者が猟銃を入手したのもこの頃だったと見られる。保存会も丸３年を過ぎたころから休みがちになった。
「５年くらい前かな、本人の休みが続いた後にお父さんが一升瓶を持ってきて『すまん、やめさせてくれ』と。最後まで本人は顔を見せませんでしたよ」（同前）
保存会を退会後も、父親が営む自身の名前の果樹園『マサノリ園』で働いていた。容疑者と同世代の近隣住民が語る。
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「最近も真面目に働いている様子でしたよ。朝８時くらいに白い軽トラで出て行って、17時頃に帰って来る。プラムかなにかを育てていると聞きました」
青木容疑者の猟銃所持について当時、彼を知る人からは「目的がわからずこわい」との声も上がっていた。しかし、両親に進言する者はいなかったようだ。隣町の市議会議員が両親について明かす。
「青木夫妻は２人とも目立つ一方、トラブルも多かった。夫の正道さんは議長に就任した際のパーティーをなぜか隣町で開いたうえ、現役の市長を含めた自身の反対派を全く呼ばなかった。これは前代未聞で、地元でかなり問題になりました。裏には熾烈な派閥争いがあったそうです」
また、母・Ａ子さんはフラワーアートの部活指導に訪れていた小学校で、地域の多くが知る騒動を起こした。
「’19年の卒業式でＡ子さんが、突然ある女性市議に『謝れ！』と怒鳴った。女性市議の父親が’16年にＡ子さんに対する誹謗中傷で逮捕されたんですが、娘は何も関係がない。その場は唐突なＡ子さんの剣幕に騒然となったそうです」（同前）
息子が精神的に不安定であることを知りながら猟銃を所持させたならば両親の社会的責任も問われるだろう。
31年間にわたって息子を信じた家族の思い虚しく、４人が亡くなる最悪の事件は起きてしまった。
<figure id="attachment_314472" aria-describedby="caption-attachment-314472" style="width: 1061px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5f8671b0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/138aec8964bbe2f2d1af743e1e5df9a9.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-314472" class="wp-caption-text">中学時代、野球部に所属していた青木容疑者。進学した高校は地元では有名な進学校だった</figcaption></figure>
<figure id="attachment_314473" aria-describedby="caption-attachment-314473" style="width: 1607px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="71a11316"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/10c0a619b2373ce3dfc26545ac7f9760.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-314473" class="wp-caption-text">お祭りを継承する「保存会」に所属していた’15年頃、猟銃を所持し始めた。「遠くに行って鳥を打ったりする」と話していたという</figcaption></figure>
<figure id="attachment_314471" aria-describedby="caption-attachment-314471" style="width: 1368px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6a4dded7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/ab151ee5c2c15eb2732aadf86ba583cd.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-314471" class="wp-caption-text">市議会の集合写真に映る議長の父・青木正道氏と母・A子さん。A子さんは隣町の養魚所で育ち青木家に嫁いだ</figcaption></figure>
『FRIDAY』2023年6月16・23日号より

長野県中野市「4人殺害事件」で逮捕された青木容疑者は、名家の長男だった。のどかな街で家族愛を受け、不自由なく育った青木容疑者。なぜこんな凄惨な事件を起こしてしまったのか…

長野県中野市「4人殺害事件」名家の長男を凶行に走らせた「家族愛」と「孤独」

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