<figure id="attachment_315024" aria-describedby="caption-attachment-315024" style="width: 1829px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3343d2f3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/73d292e1bea14fb1706c61311a2b20b4.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315024" class="wp-caption-text">経営する店の前で。「開店して半年が経ちました。プロ野球の試合を観ては『凄い世界で17年もやらせてもらえた』と感謝しています」</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「いらっしゃいませ！」</span></p>
<p>六本木の中心部から徒歩圏内。白壁で囲まれたビルの廊下を抜けてドアを開けると、ピカピカに磨き上げられたカウンターの中で店主が記者に笑いかけた。</p>
<p>熊のような巨体にウエーブする茶色いヘアがワイルドだが、瞳はクリクリとして愛くるしい。ちゃんこ店『ＴＡＮＩＡＲＡＳＨＩ』の店主、山口俊氏（35）は、</p>
<p><span class="strongInContent">「横浜、巨人時代のファンの方が店に来て下さるんですけど、『全然、イメージと違う』って言われますね」</span></p>
<p>と笑った。</p>
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<p><span class="strongInContent">「もっとトゲがある人間だと思われていたみたいです（笑）」</span></p>
<p>’05年の高校生ドラフトで横浜ベイスターズに１位指名されてプロ入りした山口氏。当時から「幕内力士・谷嵐の息子」と騒がれ、四股を踏むパフォーマンスはファンの間でおなじみとなった。</p>
<p>『ＴＡＮＩＡＲＡＳＨＩ』は昨年12月オープン。大分で57年続くちゃんこ店『たにあらし』の姉妹店という位置づけだ。もちろん、店名は’10年に亡くなった父の四股名「谷嵐」に由来する。</p>
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<p>それにしても――巨人にＦＡ移籍後の’18年にノーヒットノーランを達成。翌’19年には最多勝となる15勝４敗の好成績で優勝に貢献したエースが、35歳の若さで転身である。「未練はないのか」という問いを山口氏は一蹴した。</p>
<p><span class="strongInContent">「実績は関係ない。プロは一年一年が勝負です。評価するのは、自分ではなく球団。声がかからなかったらそれまで。野球選手として価値がないということ」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="「野球、辞めちゃうの？」"></div>
<h2>「野球、辞めちゃうの？」</h2>
<p>現役を続行するか否か。オファーを待つ期限は「昨年12月いっぱい」だった。現役中、「家庭に野球を持ち込まない」というルールを貫いてきた山口氏。ＦＡ移籍も、メジャー挑戦のときもそうしたように、クリスマスごろには自分の気持ちにケリをつけていた。ところが――。</p>
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<p><span class="strongInContent">「年末に自宅でＹｏｕＴｕｂｅを観ていたとき、子供たちがポツリと言ったんです。『野球、辞めちゃうの？』『もうちょっと投げている姿が見たい』って。戦力外通告されたことは話していなかったんですけど、子供心に何かを感じていたんでしょうね。その言葉で、２月のプロ野球のキャンプインまでオファーを待つことにしました。『１ヵ月で、どこまでコンディションを戻せるかわからないけど、悔いがないようにやってみるね』と」</span></p>
<p>家族の声で野球に関する決断を下したのは、これが初めてだった。</p>
<p>イチロー（49）ら、トップアスリートが通った初動負荷トレーニングのキャンプ施設で最後の挑戦に挑んだ。だが、なかなか肩の調子が上がらない。自分の思った通りにボールがリリースできない。開幕まで待ってもらえるなら、パフォーマンスを上げる自信はあったが、「自分はそんな立場じゃない」。２月頭に決断した。</p>
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<p><span class="strongInContent">「ひとりで決めました。家内に『辞めることにした』と話すと、ちょっと寂しそうで『チャンスがあれば海外リーグに行ってもいいよ』と言ってくれました。けど、基本的には『おつかれさま』と。テレビの戦力外通告のドキュメントみたいな、悲愴感はなかったですね（笑）。誰にも引退を伝えるつもりはなかったんですけど、親しい記者の方が『ちゃんと発表しないとダメだ』と記事にしてくれた。『別にハッキリさせなくてもいいんじゃないか』って思っていたんですけど、記事が出たらすぐ、お世話になった方、知り合い、母から『おつかれさま』って連絡が来た。区切りがないと、本人より周囲がモヤモヤしてしまうんですね」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="一生忘れない「オープン戦」"></div>
<h2>一生忘れない「オープン戦」</h2>
<p>横浜と巨人、ＭＬＢの２球団で過ごした17年間のプロ野球生活。山口氏は「悔いはない。やりきった」と振り返る。</p>
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<p><span class="strongInContent">「いまもハッキリと瞼に焼き付いているのは、’20年３月、ブルージェイズの本拠地で行われたオープン戦。英語で名前を呼ばれてマウンドに上がると、まだコロナ禍になる前だったのでファンの方がスタンディングオベーションで迎えてくれたんです。憧れのメジャーの世界に来れた、やっとここに立てた、夢が叶った……あの場面は一生忘れないですね」</span></p>
<p>逆に「ツラかった記憶はない」と言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「……というか、野球をやっている間は、ずっとツラかったです（笑）。毎日、『今シーズンで終わったらどうしよう』と悩んでいましたから。成績を残せるようになってからも、『これ以上の成績を残さないといけない』『１ミリでも上に行かないといけない』と常に考えていました」</span></p>
<p>だが、山口氏には苦しいプロ生活を生き抜くための支えとなる〝気付き〟があった。プロ３年目のことだ。</p>
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<p><span class="strongInContent">「真っ直ぐが140㎞出なくなって、キャンプインから二軍スタートだったんですよ。当時の投手コーチと『もう一回、ゼロから始めよう』と話し合って、キャッチボールからやり直しました。基礎体力はあるから技術を磨こうと一日、500〜600球投げ込みをしました。いまじゃ、あり得ないですよね。でも、『これでケガするなら、そこまでの選手だ』と覚悟を決めて取り組んだら、６月には150㎞出るようになった。『練習しないと自信はつかない』ことに気付いたんです。裏付けるものがないと、自分に半信半疑になっちゃうんですよね。それから、『これだけ練習して打たれたら仕方ない』と自信を持って、強いメンタルで勝負できるようになった。あれが僕のプロ野球人生の第一歩です。プロ３年目で気付けたのは、メチャクチャ大きかった」</span></p>
<p>ちゃんこ屋店主としてはルーキーだが、構想自体は10年前からあたためていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「現役時代、キャンプ地や遠征先で美味しいものをたくさん食べました。価格帯も調べながら、『たにあらし』の味なら、父のちゃんこなら、東京で勝負できると確信したんです。そうは言っても、野球と一緒で毎日、不安です（笑）。でも、野球ファンのお客さんとカウンター越しにお話しできること、優しい味つけの『寄せ鍋ちゃんこ』や『大分とり天』や『中津唐揚げ』などを『美味しい！』『初めて見た！』と喜んで召し上がっていただけることが幸せで。楽しいんです」</span></p>
<p>飲食の世界でもエース、となるか。</p>
<figure id="attachment_315025" aria-describedby="caption-attachment-315025" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="632a3870"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/319dc4f5b7a6d4dd829a2e65e3d849dc.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315025" class="wp-caption-text">巨人時代の’19年に最多勝、最多奪三振、最高勝率の3冠を達成も3年後の’22年９月に戦力外通告</figcaption></figure>
<figure id="attachment_315023" aria-describedby="caption-attachment-315023" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4ae03cea"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/f690684f1fc4a5868a282be27ff32fe1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315023" class="wp-caption-text">この距離で店主自ら接客する。「僕のおすすめは『近江牛タタキ胡麻ポン酢』。子供の頃から、これと味噌汁で御飯を３杯食べてました」</figcaption></figure>
<figure id="attachment_315021" aria-describedby="caption-attachment-315021" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="00a8a54e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/35d41c241ea82e0541bf0296dad4e2b4.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315021" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　山口 俊｢セ･リーグ最多勝から３年でちゃんこ屋店主になりました｣ロングインタビュー</figcaption></figure>
<figure id="attachment_315022" aria-describedby="caption-attachment-315022" style="width: 1663px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0b9a31eb"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/db985bdb96cc96494390dedbd41a4806.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315022" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　山口 俊｢セ･リーグ最多勝から３年でちゃんこ屋店主になりました｣ロングインタビュー</figcaption></figure>
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<p>取材協力　『TANIARASHI』<br>
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<div>『FRIDAY』2023年6月16・23日号より</div>


小松寛之

横浜､巨人､メジャーで活躍した"山口 俊"が、ちゃんこ店『ＴＡＮＩＡＲＡＳＨＩ』の店主に！幕内力士だった「亡き父の味」で勝負すると、「第二の人生｣をスタートさせていた。

｢セ･リーグ最多勝から３年でちゃんこ屋店主になった｣…山口俊の第二人生「厨房での激変素顔」写真

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