新進気鋭の映画監督・松本花奈「若者の映画館離れを阻止したい!」

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日本映画界の重鎮・岩井俊二に「これを新たなるパラダイムとして若い君たちが映画を作り始めたら確実に将来の映画界は変わる」と言わしめた若手映画監督をご存知だろうか。

現役で慶應義塾大学に通いながら映画監督として活躍する“女子大生映画監督”松本花奈(20)だ。テレビドラマ「恋のツキ」やHKT48のミュージックビデオをはじめ、時代に沿った作品を手がけている。2018年4月には「情熱大陸」で取り上げられるなど、急速に注目を集める気鋭の監督の一人だ。そんな彼女に現在の映画界事情を聞いた――。

松本花奈さんは子役として幼少期から芸能界で活動していた

「昨今は、映画館離れが叫ばれていますが、その原因の一つに映画祭が盛り上がっていないことがあるのではないでしょうか。例えば、日本で一番大きな映画祭の一つに数えられる『東京国際映画祭』は毎年六本木ヒルズで開催されていますが、開催期間中であっても、その周辺の人の中には映画祭のことを認識していない人もいるのではないかと感じます。

海外の映画祭だと、地域全体、国全体で盛り上がることが多々ありますが、日本はまだまだその点が足りていないのだと思います。映画祭が盛り上がることで、映画が広く認知される。そういうことの積み重ねで、映画館離れを阻止できるんじゃないかと思っています」

彼女が映画館離れの原因となっていると考える映画祭とは、「地域や団体が主催する、映画を盛り上げるための上映イベント」のこと。上映映画の監督やキャストと来場者との直接交流、一般に鑑賞することのできない映画の特集、VRをはじめ最先端技術を用いた上映など、映画祭でしか体験できないことも多い。

さらに、若者の映画館離れを加速させているのが映画の上映時間にもあるのではないかと指摘する。

「今の人って忙しいですよね。だからこそ、夜中や朝、会社に行く前などに映画が劇場で観られるようになると良いなと思います。また、ショートフィルムの上映が増えたら『一気に観られないから1本ずつ観る』といった鑑賞もできるようになりますよね。どうしても映画=“約2時間”というある種の決まりができてしまっている気がして。今の時代、“映画は2時間じゃないといけない”みたいな時間感覚は崩してみてもいいかもしれません」

「映像制作を始めたのは中学2年の頃です」と松本花奈監督

映画界に蔓延する古い価値観にも違和感を示す。もともと、“高校生映画監督”や“大学生映画監督”というレッテルを貼られることが多かっただけに、「若者らしさ」を求められるという。

「以前、自分で編集して一度完成していた自主制作映画を、再度プロの編集マンにつなぎ直してもらったことがあったんです。それで、とある映画祭に応募したのですが、初めのバージョンを見て下さっていた審査員の方から『前の編集の方が良かった』と言われてしまって……。

その理由が、『今はスッキリして観やすくなっているけど、商業的になりすぎていて、最初の情熱がなくなっている。せっかく若いんだから気持ちだけで作る作品の方がいい』と。

その時に違和感を感じました。情熱が大事という考えもあると思うけれど、最終的には観せるものだから、『商品』にするべきだと思うんです。プロに年齢は関係ありません。それ以来、『ちゃんとお金をもらって、劇場に観にきてもらえるような映像に仕上げる』ことをやりたいと思うようになりました」

旧態依然とした映画界――。それを変えるために、これまでブラックになりがちだった「報酬」にも気を配る。

「先ほどの自主制作映画を撮っていた当時、私は17歳で、皆にきちんとした報酬を払うことができていませんでした。それなのに、『みんな一週間寝ないで!』という感じで強すぎる負荷をかけてしまい、スタッフが離れそうになってしまったことがあるんです。その時に、やっぱり一緒に映画を作ってくれる人たちには正当な報酬を払いたいし、報酬が発生することで生まれる責任感も大事にしたいと思いました。今考えれば当然のことではあるのですが……。『自分の好きなことをやっているから』報酬が少なくていい理由にはならないのだと思います」

映画やドラマはもちろん、ミュージックビデオの監督など、松本花奈さんの活動範囲は広い

さらに、現在の日本の映像制作現場について、こう指摘する。

「今の日本の映像製作の現場では、関わっている人たちがほとんど寝られないような厳しい状況の中でものづくりをしなければならないことが多くあります。撮影中だけでなく、仕上げまでのスケジュールが全然ない場合がある……。でも、『それでもいい』と許してしまっている空気があるのだと思うんです。皆、ある程度やろうと思えば器用にできてしまうし、『もう一回撮りたいけど、時間がないからこれでOKにしよう』ということを、なんだかんだやってしまっていて……。それでもなんとか形にはできてしまうから、そういう慣習のまま時代がそこで止まっちゃっているんです。映画は時代を映すものだからこそ、古い部分は変えていくべきなんじゃないかと思います」

そんな松本監督が参加しているオムニバス映画「21世紀の女の子」は2月8日から公開されている。彼女を筆頭に若い映画人たちが、どのように業界を変えていくのかに期待したい。

松本花奈監督も参加しているオムニバス映画『21世紀の女の子』が公開中

松本花奈(まつもと・はな)
1998年生。13歳から映像製作を開始。16歳で『真夏の夢』(2014)を監督し、「eiga worldcup2014」にて最優秀作品賞を受賞、脚光を浴びた。2015年に『真夏の夢』を「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のフォアキャスト部門に史上最年少にて正式出品したほか、翌年には同映画祭のオフシアター・コンペティション部門に『脱脱脱脱17』(2016)を出品。審査員特別賞・観客賞をW受賞した。HKT48のMV「キスは待つしかないのでしょうか?」や、本田翼主演のショートフィルム「ファン」など、制作実績多数。最新作は、山戸結希企画・プロデュースのもと15人の女性若手映画監督が製作した短編15本で構成されるオムニバス映画『21世紀の女の子』の内一編「愛はどこにも消えない」がある。(2019年2月8日公開)

  • 取材・文魚住溶撮影安田和弘

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