浅井 秀樹

<h3><span class="strongInContent">マダニが媒介するウイルスの感染症「SFTS」…西日本中心から、徐々に東へ</span></h3>
<p>死に至ることも少なくないマダニ媒介の感染症が、日本列島を東進している。国内初の感染者が確認されたのは、10年ほど前、山口県だった。それ以降は感染者が西日本中心から、徐々に東へと広がっている。</p>
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<p>このウイルスをすべてのマダニが保有しているわけではないが、マダニにかまれるケースは農作業や草刈りだけに限らない。身近な野山や河原の草むらなどにも潜んでいることがあり、草むらへ入り込むだけでも、かまれる可能性がある。さらに、このウイルスに感染した犬や猫などのペットを通じて人にも感染する恐れがある。</p>
<p>今年６月初旬、静岡県浜松市では80代の女性が草刈り中にマダニにかまれ、発熱や手の震えがあって入院した。市の発表によると、女性の右ほほと、右ふとももの内側に刺し口があり、マダニが媒介するウイルスの感染症、重症熱性血小板減少症候群（SFTS）だった。</p>
<figure id="attachment_316146" aria-describedby="caption-attachment-316146" style="width: 344px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9ebb87df"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/38997791b8fc9a1eed95a7a6561a2fba.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-316146" class="wp-caption-text">治療法やワクチンがなく、対処療法しかないマダニが媒介するウイルスの感染症「SFTS」</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">治療法やワクチンがない…中国で2009年ごろに初めて発生が報告される</span></h3>
<p>厚生労働省によると、SFTSは主にウイルスを保有するマダニにかまれることで感染する。発熱や嘔吐、腹痛、下痢などのほか、けいれんといった神経症状や、リンパ節腫張などの症状を伴うことがあり、致死率は約３割という。<span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">「治療法やワクチンがなく、対処療法しかない。<wbr></wbr>重症化すると死に至ることもある」（厚労省担当者）</span></p>
<p>国内で感染者が広がっているのは、ウイルスを保有するマダニがシカやイノシシなどの野生動物に付着して運ばれるほか、動物が感染して移動することなどでも、その分布域を広げているとみられている。</p>
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<p>日本では山口県で&#8217;12年秋、成人女性が発熱、嘔吐、下痢の症状が出て入院し、死亡したのが初の感染者とされる。</p>
<p>世界では、中国で&#8217;09年ごろに発生が報告され、&#8217;11年に原因ウイルスが特定された。その後、アジア各国で確認されている。</p>
<p>国立感染症研究所のまとめで、国内では今年１月末時点で805の報告例があった。年齢分布は各年代に広がっているが、60代以上がほとんどを占め、年齢の中央値は75才となっている。今年初めから５月下旬までだけでも、全国で数十例の報告がある。感染者は５～８月に多いともいう。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="東京、富山・石川でも感染者が…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">東京、富山・石川でも感染者が…</span></h3>
<p><span class="strongInContent">「当初は西日本を中心に報告されていた」（厚労省結核感染症課担当者）</span></p>
<p>最近は太平洋側で静岡や東京、日本海側で富山や石川などでも感染者が報告されており、ウイルスが列島を東進しているのがわかる。</p>
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<p>たとえば、前述した今年６月の浜松市の感染者は、同市内で５例目となり、静岡県内では12例目だった。県の感染症対策担当者によると、県内では&#8217;21年３月に60代の男性が感染したのが最初の感染者という。</p>
<p>一方、富山県で初の感染者が見つかったのは昨年11月で、農業に従事する60代の女性だった。感染研によると、女性は発熱、食欲不振、倦怠感を訴え、医療機関で解熱剤を処方されたが、症状が改善しなかったという。さらに医療機関で診察を受け、右の太ももに刺された形跡があり、SFTSと確認された。</p>
<figure id="attachment_316137" aria-describedby="caption-attachment-316137" style="width: 1575px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="cf3b0017"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/7889b6a121c7015f2045226c5e2fe8c3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-316137" class="wp-caption-text">厚生労働省のHPより</figcaption></figure>
<p>この富山県の女性のように、</p>
<p><span class="strongInContent">「マダニにかまれても気が付かないことも多いと言われている」</span></p>
<p>と厚労省担当者は言う。</p>
<p>全国の感染者をみると、農作業や草刈り中にかまれていることが多いが、草むらに入り込むだけでも、肌を露出していると草に潜んでいるマダニにかまれる恐れはある。厚労省では、草むらなどに入る場合、長袖や長ズボン、手袋を着用し、首にタオルをまくなど、肌の露出を少なくすることが望ましいとアドバイスしている。マダニが付着しても確認しやすいように、明るい色の服装がいいとも勧めている。</p>
<p>一方、犬や猫などのペットからの感染も要注意だ。ペットが感染した事例は全国で報告され、さらにペットから人へ感染した事例もある。SFTSを発症したペットの体液に、人が触れたためとみられている。</p>
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<p>マダニには、かまれないように対策をするのが望ましいが、かまれてしまった場合、無理に引き抜くとマダニの一部が残ってしまうことがある。さらに、病原体を含むマダニの体液が体に入り込む恐れもある。</p>
<p>マダニにかまれてしまったら、厚労省担当者は</p>
<p><span class="strongInContent">「医療機関でマダニを除去してもらい、洗浄してもらうのがいい」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>と話し、</p>
<p><span class="strongInContent">「かまれた後の症状には注意してほしい」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>と呼びかけている。</p>
<figure id="attachment_316138" aria-describedby="caption-attachment-316138" style="width: 2000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f9041961"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/71d331b29bd66237916189532cc1462a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-316138" class="wp-caption-text">「かまれた後の症状には注意してほしい」と厚労省担当者</figcaption></figure>


浅井秀樹

死に至ることも少なくないマダニ媒介の感染症が、日本列島を東進している。国内初の感染者が確認されたのは、10年ほど前に山口県だった。それ以降は感染者が西日本中心から、徐々に東へと広がっている。

致死率３割！「治療法やワクチンがない」”殺人マダニ”の感染症が日本列島を東進中

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