「大切なお金と友人を失いました……」ネズミ講『みんなのたまご倶楽部』3億円詐欺事件 被害者が慟哭 | FRIDAYデジタル

「大切なお金と友人を失いました……」ネズミ講『みんなのたまご倶楽部』3億円詐欺事件 被害者が慟哭

大型集団訴訟が勃発へ 「一人勧誘するごとに月24万円の配当」 甘い言葉に乗せられて1万人以上が騙された

「みんなのたまご倶楽部」の勧誘セミナーで熱弁を振るう峯岸被告。会員同士の協力が必要だと主張していた「有罪になっても刑期を終えたら、あの男はすぐ同じことをするはずです。社会的に”抹殺”しなければ、また被害者が出てしまいます……。120人の被害者が立ち上がり、6月末に集団訴訟を起こすことを決意しました」

北陸地方に住む70代の男性Aさんは口調は穏やかながら、あえて厳しい言葉を口にした。

「あの男」とは、峰岸妙光(みょうこう)こと峯岸正治被告(59)。昨年11月30日、警視庁に無限連鎖講防止法違反の容疑、いわゆるネズミ講で逮捕され、その後起訴された人物である。

峯岸被告は、’21年10月から全国各地で開催したセミナーで、「『みんなのたまご倶楽部』の会員になって毎月10日までに1万3900円の会費を払ってくれれば、月に90個のブランド卵を届けます。新規会員を紹介してくれたら、一人当たり月最大24万円の配当を払います」と謳(うた)い、1万人以上から約3億円を集めていた。ところが、「卵も配当も送られてこない」などの被害報告が相次ぎ、事件化するに至ったのだ。

複数の被害者の証言によると、峯岸はかつて疑似通貨を発行して約1285億円を集めた円天事件の首謀者・波和二(なみかずつぎ)の部下だったという。その後、韓国製化粧品のマルチ商法に関わったのち「みんなのたまご倶楽部」(以下・たまご倶楽部)を立ち上げた、いわくつきの人物だ。

近年、トラブルや摘発が相次いでいるマルチ商法や投資詐欺は、SNSなどを介して出会った若者同士の間で伝播していったものが多い。だが、たまご倶楽部の特徴は「中高年のリアルな人間関係に侵食する」手口にあった。「被害金額より人間関係の被害を嘆く被害者が多い」と前出のAさんは嘆く。

「1年ほど前に知人に勧められてセミナーに参加したのですが、そこで峯岸は、たまご倶楽部は大手の商社や食品会社が共同で行う事業だと説明していました。それなら大丈夫だと思い、自分が入会したあとに家族や親戚4人を勧誘、入会させてしまいました。生活に不安を覚える年寄りを騙すには、身近な食材の卵はうってつけだったのでしょう。4人には自腹を切って返金しましたが、それで済む話ではない。信頼関係は失われ、親族関係はいまもギクシャクしています……」

まだ騙されている人もいる

近畿地方で1人暮らしをする70代の女性Bさんは、韓流アイドルという共通の趣味を介して知り合った同年代の女性から勧誘を受けた。

「政府の失敗で年金は破綻するから、副収入源を作るべきと言われ、将来の不安から入会してしまいました。1万3900円という月会費が、年金暮らしの私にも出せる手頃な金額だったのでつい……」

この手の詐欺に遭ったことがなかったBさんが、たまご倶楽部の毒牙にかかってしまった背景には「コロナ禍による孤独」という特殊な事情もあった。

「東京で暮らす息子に相談すればよかったんですが、当時はコロナが流行していたこともあり、顔を合わせて話す機会を作れませんでした。そんな寂しさのなか、新たに出来た友人との縁を大切にしたいという思いが強かったんです。紹介者も騙されていたので恨みはないのですが、顔を合わせることはなくなりました」

今回の集団訴訟の意義について、被害者の会の代理人を務める加藤博太郎弁護士が話す。

「今後、刑事裁判で、峯岸被告が無限連鎖講防止法違反で有罪になったとしても、直ちに被害弁済がされる可能性は極めて低い。また、金銭以上に、人間関係を毀損されたことに怒りを覚えている被害者も多い。刑事と並行して民事でも被害を訴えることが被害者の精神的回復につながるという判断に至りました」

集団訴訟に加わる120人は、被害者の全体からすればごくわずかだ。その一人である50代の男性Cさんが語る。

「峯岸は逮捕直前、会員らに『戻ってきたら配当を支払うが、訴訟を提起した会員はその資格を失う』というメッセージを送っていました。元会員の中には、まだ峯岸に騙されている人もいるんです」

高齢者の孤独と不安に付け込んだ悪徳詐欺師と、Aさんたちは徹底的に闘う。

勧誘のために作成されたパンフレット。この次ページには峯岸被告の演説や会の趣旨を紹介する動画へのリンクが掲載されている
勧誘のために作成されたパンフレット。この次ページには峯岸被告の演説や会の趣旨を紹介する動画へのリンクが掲載されている
峯岸被告(左)は、たまご倶楽部の上層会員が集まった懇親会でわざわざ札束を持参し、複数の会員と写真撮影を行っていた
峯岸被告(左)は、たまご倶楽部の上層会員が集まった懇親会でわざわざ札束を持参し、複数の会員と写真撮影を行っていた

『FRIDAY』2023年6月30日号より

  • 取材・文ライター・奥窪優木
  • PHOTO被害者提供

奥窪 優木

ノンフィクションライター

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