<p>スクワッター(居座り屋)という言葉をご存じだろうか。</p>
<p>Airbnb（エアビーアンドビー）などで利用した部屋に「スクワットするかのように腰を落として」居座り、テコでも動こうとしない不法占拠者のことである。コロナ明けのいま、全米各地でスクワッターが急増。大きな社会問題になりつつあるという。</p>
<p>ロサンゼルス在住の日本人男性Aさん（40代）もスクワッターの被害者だ。Aさんは日本の有名私大を卒業後、米系コンサルティング会社に就職。米国女性との結婚を機に2000年から米国に移住。その後、妻と離婚し、現在は賃貸住宅で暮らしている。</p>
<figure id="attachment_318691" aria-describedby="caption-attachment-318691" style="width: 1999px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="44bce663"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/ba862762b061b3fcd786333e9856005d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-318691" class="wp-caption-text">スクワッター被害の頻発するロサンゼルスの街並み</figcaption></figure>
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<p>スクワッターの被害に遭っている物件は、Aさんが子供たちと会って寛（くつろ）ぐため、2021年に購入した。元妻と子供たちが暮らすロサンゼルス南部のオレンジ郡にあるが、子どもたちと会うとき以外は使わないため、Airbnbに賃借人（ゲスト）の仲介を依頼した。Airbnbはオンライン宿泊施設予約仲介業者として世界第2位の大手企業。日本を含む220以上の国と地域の人々が利用している。</p>
<p>Aさんによれば、今年3月、Airbnbを通してゲストが入居。Airbnbの規約には「ゲストについてはAirbnbが身元チェックの責任を持つ」と書いてあった。</p>
<p><span class="strongInContent">「Airbnbは、予約の確定前にホストとゲストが直接、電話やメールでやりとりすることを禁じていました。恐らくAirbnbを外して、ホストとゲストが直接契約するのを防ぐためでしょう。世界2位の企業なので、ゲストの身元チェックについては確実にやってくれるだろうと安心していました」（Aさん、以下同様）</span></p>
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<p>Aさんは、鍵を渡すときにゲストと初めて面談したが、小柄で気の弱そうな白人男性だったという。ゲストはAさんに「私はエンジニアでしっかりした収入がある」と話していた。</p>
<p><span class="strongInContent">「この時点で、すでにAirbnbを通じて1ヵ月分の賃貸料が前払いでこちらに支払われていました。私は安心してゲストに鍵を渡しました」</span></p>
<p>ところがゲストが支払ったのは、この1ヵ月分だけ。その後は何度催促しても、賃貸料はおろか電気、ガス、水道代もまったく支払われないのだという。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「居座りのプロ」がやってきた…"></div>
<p><span class="strongInContent">「催促しても完全無視なのでAirbnbのサポートセンターに『何とかしてほしい』と何度も頼んだのですが、埒が明かない。対応するのはいつも末端の人止まりでマネージャークラスの責任ある人物には決して取り次がれない。しかも対応する人が毎回変わるので、その度に一から説明を繰り返さねばなりませんでした」</span></p>
<p>Aさんが調査会社にゲストの身許調査を依頼すると、<span class="strongInContent">「前科があるだけでなく、過去に2度、裁判所から立ち退き命令を受けたこともあるプロのスクワッターであることがわかった」</span>という。</p>
<figure id="attachment_318692" aria-describedby="caption-attachment-318692" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6822c080"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/0e4ce2cfbc4cda1bfe635f0a0e0453e6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-318692" class="wp-caption-text">ロサンゼルス市街には高層ビルが立ち並ぶ</figcaption></figure>
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<p>“プロのスクワッター”、すなわちスクワッターを生業としている人間の狙いは何か。どうやらスクワッターたちの狙いは、単に家賃などを踏み倒すことだけではないようだ。</p>
<p>米フォックスニュースによると、ペンシルべニア州でプロのスクワッターが賃料を払わずに2つのアパートを不法占拠したが、彼は鍵を勝手に変えた上に、アパートを他人に又貸しして家賃収入を得ていた。本来の所有者が居住者に引っ越しを迫ると、バットで殴られた。裁判所が立ち退き命令を出して、ようやくスクワッターは警察に排除されたという。</p>
<p><span class="strongInContent">「この事件も、スクワッターをゲストとして紹介したのはAirbnbでした。私は、迂闊なことに、自分が事件に巻き込まれるまではAirbnbがこんな事件を起こしていたことを知りませんでした。この事件でもAirbnbは何も対応せず、アパートの所有者から損害賠償請求を起こされています」</span></p>
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<p>あらためて調べると、スクワッター被害が全米に広がっていることがわかった。背景にはコロナ禍があった。</p>
<p><span class="strongInContent">「コロナ禍で失業し、家賃を払えなくなった人が急増。ホームレス問題が大きな社会問題になりました。地方行政当局は生活困窮者を保護する必要に迫られ、家賃未払いを理由に家主が住民を追い出すこと（Eviction）を禁じました。これがスクワッターたちにとって好都合でした」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="全米で「裁判依頼」が殺到"></div>
<p>コロナが終息すると、Evictionは解禁され、家賃未払いで追い出される人が増えた。ただカリフォルニア州は、借主の滞在が30日を過ぎると『賃貸者権利』が発生し、法律上、家賃未払い者を簡単に追い出せない仕組みになっているという。</p>
<p><span class="strongInContent">「カリフォルニア州では、家賃が未払いでも裁判所から正式な立ち退き命令が出るまでは、家主は電気、ガス、水道などのインフラを止めることはできない。法律違反になります。これがカリフォルニア州でスクワッター被害が多い理由です。民主党の力が強い州ほど、こうした傾向が強い。家賃未払い者に対する立ち退き命令が出るまで半年くらいかかる。この間、スクワッターは部屋代などを踏み倒してぬくぬく暮らしているわけです」</span></p>
<p>スクワッターの中には、部屋を売春に利用して荒稼ぎする者もいるという。AさんはAirbnbに<span class="strongInContent">「緊急に解決してほしい」</span>と電話で何度も頼んだが、Airbnb側は<span class="strongInContent">「緊急時は地元の警察に連絡してください」</span>と回答。やむなく地元警察に電話すると、<span class="strongInContent">「お前もやられたのか。ここじゃ、よくあることだよ。民事事件には関与できないから」</span>と軽くあしらわれたという。</p>
<figure id="attachment_318693" aria-describedby="caption-attachment-318693" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="be366f17"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/2871c670e0cab995dae400a656a732f7.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-318693" class="wp-caption-text">Airbnbのスマホ用アプリのアイコン</figcaption></figure>
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<p><span class="strongInContent">「Airbnbの規約を読むと、ゲストによる家具等の破損については保険で補償されることになっていましたが、スクワッター被害については、何も明記されておらず、『補償の対象外』の1点張りでした」</span></p>
<p>やむなくAさんは弁護士に依頼したが、弁護士探しも難航した。先に触れた通り、コロナ禍の終わりとともにEvictionが解禁されたため、現在、全米の裁判所にはEvictionの依頼が殺到。あまりにも数が多いため、裁判所の手が回らず、立ち退きにかかる時間はさらに長期化しているのだ。</p>
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<p><span class="strongInContent">「Evictionを専門に扱っている弁護士もいますが皆、超多忙。10件以上、弁護士事務所に連絡しましたが、中々、引き受けてもらえませんでした。ようやく見つけても、費用は1時間当たり575ドルと驚くほど高額。これを事件が解決するまで自分で払わねばなりません。この間、部屋代は入ってこない。ストレスが溜まる一方です」</span></p>
<p>Aさんのケースについて、フライデーデジタルはAirbnbに文書での回答を求めたが、繰り返し催促してもなお、期日までに回答を得られなかった。</p>
<p><span class="strongInContent">「国際的企業Airbnbの危機管理能力、そしてそこから起こっている顧客の被害への対応については疑問を持たざるを得ないです」</span></p>
<p>自由の国、アメリカの闇である。</p>


長谷川学

アフロ（3枚目）

スクワットするように、腰を落として家に居座り、テコでも動こうとしない不法占拠者「スクワッター」が全米で社会問題となっている。コロナ禍明けのいま、被害に遭った日本人オーナーが胸中を語る。

Airbnbの部屋に「そのまま居座り」！被害者が打ち明ける「アメリカの恥部」

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