<figure id="attachment_320570" aria-describedby="caption-attachment-320570" style="width: 4128px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="eb88a61c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/90ebada935726fba6e246206731545a8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-320570" class="wp-caption-text">昨今、計量失敗するボクサーが増えているのは「体脂肪の管理ができていないから」。冷麺はＯＫとのことでご満悦の中谷</figcaption></figure>
<p>ボクシングの本場・米ラスベガスで、中谷潤人（25）が戦慄ＫＯで二階級制覇を成し遂げてから1ヵ月半が過ぎた。</p>
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<p>170㎝とスーパーフライ級では長身の中谷は<span class="strongInContent">「アンドリュー・モロニー（32）とのタイトルマッチから8㎏増えました」</span>と笑った。それでも締まって見える。適正ウエイトはまだまだ上。日本人初の6階級制覇が期待される所以（ゆえん）だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「7月6日からジムワークを再開しました。ヘッドギアをしたら、頬に食い込んで苦しかったですよ(笑)。また7月20日から（実弟の）龍人と渡米して、キャンプを張ります。そこですぐに絞れると思います」</span></p>
<p>アメリカで待っているのは、15歳のころから中谷を指導している名トレーナー、ルディ・エルナンデスだ。<span class="strongInContent">「世界チャンピオンになりたい」</span>と中学卒業後に単身渡米し、ルディに弟子入りしてから10年。中谷は具志堅用高や竹原慎二、畑山隆則らから「“ネクストモンスター”じゃなくて“モンスター2”。すでにスーパーフライ級では最強」と絶賛される存在となった。</p>
<p><span class="strongInContent">「ルディと出会った当時は『この人に認められないことには、世界チャンピオンになれない』という緊張感でいっぱいでした。では、どうすれば認めてもらえるか？　ルディは実戦重視で午前も午後もスパーをやるのですが、スパーを重ねる中で“</span><span class="strongInContent">指示を正確に理解して、忠実に実行する選手”を評価していることがわかったんです。それから今日まで10年間、僕はそこに徹してきました」</span></p>
<p>今回のタイトルマッチ前の合宿で、サウスポーの中谷に<span class="strongInContent">「オーソドックス（右利きの構え）でスパーしなさい」</span>と指示が出たことがあった。見える風景がガラッと変わり、被弾もした。だが、世界戦本番で体重が乗った右アッパーをモロニーのアゴに打ち込むのに一役買った。</p>
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<p><span class="strongInContent">「ルディの指導は本当にユニーク。たとえば『ジュント、悪いニュースがある。次のラウンド、君はコーナーから出ず、ひたすらパンチを躱（かわ）し続けることになった。腕を上げてはいけない。このルールを破ったら腕立て伏せだ』とか、巨漢のスパーリングパートナーを用意されて『彼は悪ガキなんだ。ボディのみで制裁を加えてくれ』と言われたこともあった。そしてそれが実戦で役に立つ。今回のタイトルマッチ前はオーソドックスでのスパーの他、“15分スパー3セット”もありました。『ジュント、たくさん汗をかけて減量に役立つだろ？』って(笑)。ジムには門下生がたくさんいて、ルディは全員を付きっ切りで見られるわけじゃないんですけど、目は行き届いている。遠くにいても、サンドバッグを打つ音を聞いて『ちゃんと打ちなさい』と怒られますから」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="「効かされたパンチは中学以来ない」"></div>
<p>今回のタイトルマッチで<span class="strongInContent">「効かされたパンチはなかった」</span>と言う中谷。左眉の上をカットしたが、<span class="strongInContent">「問題ないです。逆に血を見てしまったせいで興奮して（モロニーを）ＫＯしちゃいました」</span>と笑い飛ばした。</p>
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<figure id="attachment_320572" aria-describedby="caption-attachment-320572" style="width: 4128px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="828ccb6a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/78d7f3dcb113001a8075bff3e993bccf.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-320572" class="wp-caption-text">実弟の龍人さんは中谷家＆ルディジムのムードメーカー。「ルディに『こっちに住め！』って言われてます。グリーンカードを申請してるそうです(笑)」</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「効かされたパンチと言えば……中学時代までさかのぼりますね。僕が30㎏台で対戦相手が50㎏台とかなり体重差がある相手とスパーしたんですけど、あのときレバーに喰らったボディは効きました。『だめだ、倒れる……』って。それが最後ですね。</span></p>
<p><span class="strongInContent">効かされたパンチは無かったですが、バッティングは回避できた。ルディから『モロニーは頭からツッコんでくるから、パンチを打っていない方の腕をおでこにあててガードしなさい』とアドバイスされていたのに、それを忘れていた。モロニーが前に出てきた5～7ラウンド、相手の動きにタイミングよくパンチを合わせて精神的にも体力的にもスタミナを削る、という作戦はうまくいったんですけど、もっと削れたかなと。そこも反省点ですね」</span></p>
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<p>スーパーフライ級2戦目にして王者を圧倒。この階級での戦いは<span class="strongInContent">「あと１～2試合」</span>だと中谷は考えている。次なるターゲットは、ＷＢＯのベルトを返上することで中谷との指名試合を避けてＷＢＡのベルトに挑んだ井岡一翔（34）か。あるいは、井岡が狙うＷＢＣスーパーフライ級王者のファン・フランシスコ・エストラーダ（33）か。</p>
<p><span class="strongInContent">「僕はどちらでも構わないです。ただ、井岡選手との試合は盛り上がるかもしれませんけど……実現しないんじゃないかな。どちらかと言えば、エストラーダとやってみたいです。いずれにしろ、ベルトを統一して次のステップに行きたい。この階級に長居するつもりはないです」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="井上と中谷、「モンスター」が見ている風景"></div>
<p>スーパーフライ級の上はバンタム。もう一つ階級を上げると井上尚弥（30）がいるスーパーバンタム級だ。二人のモンスターが交錯する日は案外近いかもしれない。「元祖モンスター」は本誌インタビューに<span class="strongInContent">「第1ラウンドはセンサーを働かせて相手のパンチが当たる距離、自分のパンチが当たる距離を測るラウンド」</span>と答えている。「距離の取り合い」を制した者が勝つ、というのが井上の持論だ。井上が見ている景色は、中谷にはどう映るだろうか。</p>
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<p><span class="strongInContent">「井上選手が相手との距離を測る1ラウンド、僕は“相手の身体の中心を取れる”ポジションを探ります。急所である身体の中心部に左ストレートを真っ直ぐ、バランスよく入れられる位置はどこなのか、実際に向き合ってみて探るわけです。僕の理想は51勝37ＫＯで王者のまま引退した元ミニマム＆ライトフライ級チャンピオンのリカルド・ロペス（56）。彼の“相手のやりたいことをやらせないボクシング”が究極だと思っています」</span></p>
<p>実際に井上尚弥と拳を交えたボクサーが試合後に述べた感想は大きく二つある。ひとつは<span class="strongInContent">「パンチを打ち返そうとしたら、そこにはもうイノウエはいない」</span>。もうひとつが<span class="strongInContent">「パワーが凄いと聞いていたが、驚いたのはハンドスピードの速さ」</span>というものだ。中谷の見立てはこうだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「パンチを打つと同時にバックステップ、あるいはサイドステップして相手の射程距離から脱出することで“打たせず打つ”形ができます。井上選手はこのスキルが非常に高い。ボディバランスの良さと体力がないとできない芸当です。脱出方向が毎回違うので、対戦相手は井上選手が消えたように錯覚するのだと思います。相手が見えないというのは、かなりの恐怖です。</span></p>
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<p><span class="strongInContent">『ハンドスピードの速さ』は――井上選手は身体を振りながら同時にパンチが出ているのだと思います。通常、ボクサーは試合中に対戦相手の顔でも手でもなく、身体を見ます。身体の動きや筋肉の動きを見て、次にどのパンチがどこから来るのか予測するのです。ところが井上選手の場合、身体が動いたときにはもうパンチが出ている。だから『速い』と感じるのではないでしょうか」</span></p>
<p>昨年、日本ボクシング史上初めて「パウンド・フォー・パウンド最強」の称号に輝いた井上。「元祖モンスター」の超技術をよどみなく分析する中谷の姿を見て、全盛期でのモンスター頂上対決を願わずにいられなかった。</p>
<p>1年後か2年後か――そして、その対決の先に夢の6階級制覇がある。</p>
<figure id="attachment_320660" aria-describedby="caption-attachment-320660" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1d466de3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/163b64cbe1632101305b50fedf870d7c-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-320660" class="wp-caption-text">取材後に家族で記念撮影</figcaption></figure>


山口裕朗

日本人初の6階級制覇が期待される中谷潤人。すでにスーパーフライ級最強。元祖「モンスター」井上尚弥を射程圏に捉えた「ネクストモンスター」が明かす超技術論

”モンスターを継ぐ者”中谷潤人が語る「井上尚弥の超技術」と「次のターゲット」

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