スーパーラグビー開幕 日本から参戦サンウルブズの「存在意義」

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2018年6月30日、シンガポールで行われたブルズ戦。ボールを持っているのが今季の共同主将、マイケル・リトル

ラグビーワールドカップの日本大会を9月に控え、国際プロクラブリーグのスーパーラグビーが2月15日に開幕する。日本から参戦するサンウルブズは、発足4季目を迎える。採用する戦術は、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ率いる日本代表とほぼ同じ。ナショナルチームの強化を後押ししながら、6月下旬からのプレーオフへ進むのが狙いだ。

4代目のヘッドコーチはトニー・ブラウンだ。スーパーラグビーでは過去、ニュージーランドのハイランダーズでアシスタントコーチ、ヘッドコーチを歴任。アシスタントコーチ時代の2015年には、ヘッドコーチだったジョセフとともにプレーオフ優勝を決めている。現在は日本代表のアタックコーチも兼務。攻撃戦術の構築に定評がある。

ニュージーランド代表6キャップ(代表戦出場数)で新加入のレネ・レンジャーが、ブラウンにまつわるエピソードを披露する。

「試合で現役時代の彼にタックルをされ、肝臓を傷めたことがありました! ハイランダーズのコーチだったブラウンとは(ニュージーランドのブルーズの一員として)試合で対戦してきましたが、彼についてはいい噂しか聞かない。彼からたくさん聞き、学びたい」

チームは1月14日からの約3週間、千葉県市原市、大分県別府市でプレシーズンキャンプを実施してきた。2月16日のシャークスとの初戦が赤道付近のシンガポールでおこなわれるため、3日からの10日間はオーストラリアのメルボルンで活動。現地のレベルズと試合形式の練習を実施しながら、暑さに身体を慣らして来た。

参戦初年度の2016年以来、開幕前の準備期間は徐々に伸びてきている。直前まであった国内リーグは短縮化が進んでいて、国内外でプレーする選手も十分な休養を取っている。もっともスーパーラグビーの他のクラブは、前年の12月から準備を始めている。それだけにブラウンは、気を緩めない。

「コーチにとって、準備期間はあればあるほど嬉しいものです。今回はオーストラリアで試合の準備ができる。レベルズとの合同練習で現状の力、取り組むべき課題が見えてくると思います」

チームには、日本代表候補にあたるラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTS)の選手もいる。ただしRWCTSの多くは、12月中旬から1月いっぱいまで休んで2月4日から都内でRWCTSのキャンプに入っている。

RWCTS勢のうち、1月からサンウルブズへ帯同している選手の数は15名のみ(うち1人は故障離脱)。振り分けの根拠は、各選手のここ数年における国際試合への出場数だった。

今季のサンウルブズと日本代表候補との繋がりについて、ジョセフと親交が深い藤井雄一郎・日本代表強化副委員長兼サンウルブズゼネラルマネージャーはこう話す。

「サンウルブズは外国人で勝てるチームを作り、そこに日本代表候補のうちもうひと伸びして欲しい選手を入れる。スーパーラグビーを通してスーパークラス(の日本代表候補)を作る(育てる)というのがジェイミーの意向。その選手たちがここでレギュラーを獲れるようにしないとワールドカップでは…というのがコーチ陣の考えだろうから」

3月下旬にはRWCTS単体での海外遠征も予定される。RWCTS組からは、一切サンウルブズへ合流しない選手も発生しうる。加えて1月からサンウルブズに合流した面々も、シーズン中盤にはRWCTSのキャンプへ合流しそうだ。そのため今季のサンウルブズの軸は、通年で在籍する海外の選手となる。

共同主将を務めるのはまず、2年目でセンターのマイケル・リトル。元ニュージーランド代表のウォルター・リトルの息子だ。父が日本の三洋電機に在籍していた頃は、群馬県内の小学校へ通っていた。決して大柄ではないものの、豪快な走りが注目される。もうひとりの共同主将はこちらも2年目のクレイグ・ミラーだ。左プロップとしてスクラムを最前列で組みながら、突進、タックルの回数や質でも際立つ。

新加入したロックのマーク・アボットは、優勝経験のあるハリケーンズからやってきたタフガイ。日本ではコカ・コーラでのプレー経験がある。197センチの長身を低くかがめ、接点に身体を差し込む。「マニア」を自認する藤井は笑う。

「あいつを見た(サンウルブズの)コーチたちが『あんなにタフだったのか』って。それ、俺が去年から言うとるやん、って」

トンガ出身で昨季前半戦だけで7トライを挙げた2年目のホセア・サウマキは、ウイングの位置で力強く駆けそうだ。

さらに心強いのは、スタンドオフのヘイデン・パーカーである。初めてサンウルブズに入った昨季はゴールキック38連続成功というリーグ新記録をマーク。今季は「アタックで脅威となりたい。ランを仕掛け、相手に怖がられるようになる」と、さらなるバージョンアップを誓う。

「選手が入れ替わるタイミングでは、その選手たちがチームになじむための時間が必要。ただ、どの選手もハイレベル。(ジャパンもサンウルブズも)同じようなスタイルでプレーすると思うので、意思統一した状態でやれるはずです」(パーカー)

レギュラーシーズンは計16試合ある。ここでサンウルブズは、加盟するオーストラリアカンファレンス5チーム中1位になるか、3つのカンファレンスの2位以下計12チーム中5位以内に入ればプレーオフに進める。少なくとも日本、シンガポールで計8つあるホームゲームでは、ひとつでも多くの白星を得たいところだ。

そのためにも、昨今の日本代表のごとく左右にまんべんなく選手を配置。手早くスペースを攻略しにかかる。相手のいない場所へ放つキックやパスの精度、相手に球を渡した直後の防御の出来が、勝敗を左右しそうだ。

ニュージーランド出身の新顔で元スコットランド代表センターのフィル・バーリーはこう語る。

「サンウルブズは特殊なラグビースタイルを持っています。やりながら疲れる時もあります。ということは、相手はもっと疲れているはずです。(サンウルブズが)好調な時は、敵にとって手ごわいチームになるでしょう」

2019年のワールドカップ日本大会以降、日本代表がジョセフ体制を続けるかどうかは未知数。本来であれば日本ラグビー協会が青写真を描いているはずだ。いや、描いていなければならない。

かたやサンウルブズを統括する一般社団法人ジャパン・エスアール(JPSR)は、すでに2020年以降のブラウンとの契約延長を目指したいとする。というのもブラウンは、前所属先のハイランダーズ時代から実績を評価される名伯楽。あちこちから引っ張りだことなりそうな逸材を引き留めるべく、先手、先手を打つのだとJPSRの関係者は言う。

「ワールドカップ後に新しいコーチとの契約を考えるなら、市場の最初の区切りはワールドカップ開催年の3月と考えるべき。『続投かどうかはワールドカップの結果を見てから…』と言っていても、遅いんです。日本協会も、それくらいは考えていると思うのですが…」

日本代表主将でフランカーのリーチ マイケルは、サンウルブズの存在意義を問われ「他の代表チームは代表の活動期間しか強化ができないけど、日本代表はスーパーラグビーの期間に強化ができる」と返答した。過去3季で通算6勝も、現場ではそれ以上の価値を認められる。望んでいる結果を出すことで、日本協会内でくすぶっているというサンウルブズ不要論も吹き飛ばしたい。

  • 取材・文向風見也(スポーツライター)

    1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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