1956年秋田県横手市生まれ。編集者兼ノンフィクションライター。芸能、音楽から、社会問題、災害、先端医療などのフィールドで取材・執筆に取り組んでいる。芸能人・著名人らのインタビューも数多く手掛けている。著書に『産めない母と産みの母〜代理毋出産という選択』、近著に『崑ちゃん』（文藝春秋／大村崑と共著）、『吉永小百合 私の生き方』（講談社）など。

小泉 カツミ

<figure id="attachment_321607" aria-describedby="caption-attachment-321607" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0a698ab6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/5545ea8b0f32abfb5b3f791a1aa99622.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-321607" class="wp-caption-text">若いファンも増えつつある杏寿。二ツ目昇進直後の３月に行われた初の独演会は平日にもかかわらず満員で立ち見も出るほどだった</figcaption></figure>
「落語の世界に入ったのは、本当に偶然でした。’16年に沖縄から東京に出てきて、お芝居の勉強のために勧められて落語を聞きに行ったんです。それが師匠（金原亭（きんげんてい）世之介・65）の独演会でした。衣装は着物のまま、大道具も照明もない、メイクも派手な演出もないのに、頭の中に物語の情景が浮かんでくる。そんな落語の深い魅力に衝撃を受けたんですね」
史上初めての沖縄県出身の女性落語家・金原亭杏寿である。
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杏寿が出会った落語は『宮戸川』。恋物語から悲惨な場面へと展開する映画のような噺（はなし）である。
現在、落語家の数は約１０００人と言われ、江戸時代以来、最多を記録しているという。女性の落語家も増え、いまや東西合わせて55人ほどが活躍している。
杏寿は高校卒業後、地元沖縄でＣＭやモデル、ドラマ、舞台、ラジオなどでタレント活動をしていたが、活躍の場を広げるために上京。ひょんなことから落語の世界と出会い、１ヵ月ほど真剣に考えた末、世之介に弟子入りを願い出たのだ。
「人生、命をかけてやるなら面倒を見ますよ」と師匠に言われ入門を決意。以後、厳しい前座修業を５年３ヵ月務め、今年２月に「二ツ目」に昇進したのだった。
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「逃げ出したくなったことも、もちろんありましたけど……（笑）。でも、落語がどんどん好きになっていましたから。現在は、前座仕事がなくなったんですが、勉強会（ネタ下ろし）や動画の配信、さまざまな場所での落語会などに出演して、合間に稽古もしてますので、休みが増えたわけじゃないんです。ラジオの出演も増えてきましたしね」
都内で行われた落語会の前に、杏寿はインタビューに答えてくれた。高座での着物姿も凛々（りり）しいが、プリント柄のワンピースもよく似合う。
「二ツ目」となるとプロである。前座とはまるで世界が異なる。
「二ツ目になってから、高座の責任というか、お客さんの空気が違うのは感じますね。『まあ、どうせ前座さんだから』という目で見られていたのが、今は『お手並み拝見』という視線を感じます」
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<h2>地下アイドルのような熱狂的なファンも</h2>
落語はそもそも男性中心に作られた噺が多い。だから、女性が演じるのは難しいとされていた。
「でも、『お菊の皿』（番町皿屋敷の怪談を下敷きにした滑稽噺（こっけいばなし））のお菊の喋りが女性の声だと新鮮だった、という声をいただいたこともありましたし、子供や若旦那の声もお褒（ほ）めいただきました」
実際、浅草で行われた杏寿の独演会には、まるで地下アイドルのようにファンの親衛隊もすでに存在していた。
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実は彼女は落語以外での活躍も目覚ましい。５月には、ミニアルバム『品川心中』をリリースした。
「４曲が収められています。すべて落語の演題をテーマにした”落語歌謡”なんですね。タイトル曲では、私が大ファンだった声優の山口勝平さんがコラボしてくれました」
このアルバムはもともと師匠の金原亭世之介が30年以上前に制作しようとしていたもの。杏寿が言う。
「当時録音されていた30年以上前の師匠の声とのデュエットもあるんですよ」
さらに、夏には彼女主演の映画『忍獣大戦記　蛇龍（ジャロン）対號羅（ゴウラ）』（監督・林家しん平）が公開される。
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「私は一人二役で、忍者衆末裔（まつえい）の双子を演じています」
これから目指すのはもちろん「真打」である。しかし目標はそれだけではない。
「好きな噺家は杏寿と言っていただけるようになりたい。まだまだですけど、精進していきますよ」
……少し甲高い「艶（つや）カワイイ語り口」でそう言うと杏寿は微笑み、高座の準備へと向かったのだった。
<figure id="attachment_321609" aria-describedby="caption-attachment-321609" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ec400f8d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/8514f1d24a8a4131f0b733c4e6786868.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-321609" class="wp-caption-text">この日は大田区内のライブハウスで世之介師匠らと落語イベント。ファンの熱気で溢れていた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_321606" aria-describedby="caption-attachment-321606" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d541161e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/aee76d873ce185f1432db30636abe7d3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-321606" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　金原亭杏寿・落語家「私、落語に命かけてます！」</figcaption></figure>
<figure id="attachment_321608" aria-describedby="caption-attachment-321608" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fcc4eadf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/001c48316a6200d6c164350ad14419f3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-321608" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　金原亭杏寿・落語家「私、落語に命かけてます！」</figcaption></figure>
『FRIDAY』2023年7月28日号より

小泉カツミ

足立百合

お芝居の勉強のために勧められた落語を聞きに行ったのがきっかけで、史上初めての沖縄出身の女性落語家となった金原亭杏寿。地下アイドルのようにファンの親衛隊もすでに存在！目指すのはもちろん「真打」と…

「落語に命かけてます！」…沖縄ではモデル活動・金原亭杏寿「″艶カワイイ″語り口で二ツ目昇進」

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