<figure id="attachment_323739" aria-describedby="caption-attachment-323739" style="width: 3936px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9eba5e08"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/7455b0bcc8a03e43ad486816550ceaab.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-323739" class="wp-caption-text">転職業界の実態や裏側も垣間見えるドラマ『転職の魔王様』。主人公の来栖嵐を演じる成田凌とヒロイン・未谷千晴役の小芝風花©カンテレ</figcaption></figure>
「転職希望者が1000万人と言われる時代。昔と比べて転職する人は増えましたし、『転職を一度も考えたことがない』って人は、いないんじゃないかと思うんですよね」
こう話すのは、毎週月曜夜10時より放送中のドラマ『転職の魔王様』（カンテレ制作・フジテレビ系）を手掛ける関西テレビ制作局のドラマプロデューサー・萩原崇氏。転職業界の実態や、知られざる裏側も垣間見ることができる本作は、額賀澪（ぬかが・みお）著の同名小説が原作となっている。
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成田凌（29）が演じる“転職の魔王様”の異名を持つ毒舌敏腕キャリアアドバイザー（以下、CA）の主人公・来栖嵐が、心えぐる辛辣（しんらつ）な言葉を突きつけながらも、求職者の働く自信と希望を取り戻させる爽快なストーリー。小芝風花（26）演じる、ハードな労働環境で体調を崩して退職し “キャリア迷子”に陥っているヒロイン・未谷千晴が、「周囲の期待に応えることで、自分の居場所や存在価値を感じる」「周りの価値基準でものを見てしまう」タイプという共感を集めるキャラクターであることも、人気を集めている。
萩原氏が人から勧められ、原作に出会ったのは2年ほど前。主に5つの短編連作で構成された作品に「どれかではなく、どのエピソードにも自分に重なる部分があって、一気に読みました」と言う背景には、コロナ禍や自身の抱えていた漠然とした感情もあった。
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「2年前は新型コロナウイルスの影響も大きかったですし、多くの人が転職だけでなく、生き方とか人生を“見つめ直そう”っていう空気が強かったと思います。今40歳ですが当時40手前で、自分も『なんとなく、このまま生きていくのか？　ここから先の人生を、どう生きていくのがいいのか？』と漠然と考えていて、そんな気持ちに来栖のセリフが刺さりました。
千晴の人間性にも、重なる部分が多くて……。自分も小中学生の頃は優等生キャラで育って、千晴のいわば“他人本位”な価値基準、『周りがどう思うか？』や『人が褒めてくれるから』というのが、40になる今も意外と抜けないんですよ（笑）。
だからこそ、来栖が求職者たちに、自らの本音と向き合わせるため投げかける言動に心掴まれた。『貴方の人生、それでいいんですか』という言葉が、自分に突きつけられていると感じました。それと同時に、新しい切り口というか、今の時代ならではのテーマとして、転職業界が舞台のドラマというのは、すごくおもしろいんじゃないか……と思ったんです」
<div data-friday-nextpage-lead="主人公を千晴ではなく、来栖にしたワケ"></div>
敏腕だが“最恐毒舌”CAの来栖役の成田、働く自信と希望を失っている不器用な“社畜”ヒロイン・千晴役を小芝、舞台となる転職エージェント『シェパードキャリア』の社長で千晴の叔母・落合洋子を石田ゆり子（53）が演じているが、それぞれ希望のキャストが叶ったという。
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「成田さんのいろいろな作品、さまざまな役柄を拝見していますが、陰のある感じやダークさを垣間見せる演技が魅力的な方です。来栖には闇や過去の傷があり、苦しみを抱えているからこその人間性を表現する必要がある。そうした面に、成田さんが演じる陰を垣間見せる部分がハマると考えました。
小芝さんは2021年放送のドラマ『彼女はキレイだった』に出演してもらい、またご一緒したいと思っていた女優さんです。千晴は視聴者の目線になる役。すごく応援したくなる、共感されるキャラクターに加え、“社畜”になってしまうことに通じる献身的な感じも、小芝さんがぴったりだと思いました。
洋子はもう一人のキーパーソンで、温かさや優しさを感じさせ、来栖とは違う形で登場人物たちに言葉が響くキャラクター。一番の年長者で説得力があり、全体を包み込んでくれるような役柄を誰なら演じられるのか考えて、『ぜひ石田さんにお願いしたい』とオファーし、了承いただいた形です」
各話に登場する求職者たちは、来栖に「何がやりたいのか？」「本当はどうしたいのか？」という、気づけていない自らの本音と容赦なく向き合わされる。原作の章タイトルにもなっている来栖の心えぐるセリフには、「周りが転職するから焦って自分も、ですか」や「転職は口コミサイトで店を選ぶのとは違うんです」といった言葉が並ぶ。そんな来栖の存在感が大きなウェイトを占める作品だが、実は原作の主人公は千晴。しかしドラマ化にあたって萩原氏は来栖を主人公に据えた。
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「来栖には言葉の辛辣（しんらつ）さや、求職者にズバズバと遠慮なく突きつけていく感じ、そして『この人に何があったのか？　何を考えて、こんな発言をしているのか？』と興味を掻（か）き立てられるキャラクターのおもしろさがあります。
千晴が主人公となっている原作は、小説としての読みやすさが素晴らしいです。ドラマでも同じように千晴の目線がありつつ、来栖と千晴2人の関係性の変化。最悪の出会いから、実は過去に繋がりがあったとか、最終的にどうなっていくのか……を見てもらう作品になればと思っていて、来栖を主人公とした方が、2人の関係性をよりワクワク楽しんでいただけると感じました。原作の良さを活かしつつ、そこから変える際の軸としては“ドラマとしてのふくらみ”を意識しています」
<div data-friday-nextpage-lead="自由な設定から生まれた“ボケとツッコミ”役"></div>
<figure id="attachment_323740" aria-describedby="caption-attachment-323740" style="width: 3936px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2b6ed924"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/8ab5963c3112bdc06ff9d6b8c0aa8c5b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-323740" class="wp-caption-text">小芝演じる千晴が求職者のために奔走し、悩みながら自分の気持ちに向き合う姿が共感を集めている©カンテレ</figcaption></figure>
主人公を千晴から来栖にしただけでなく、初回には物語の幕開けが原作にはない展開になるなど、実写作品ならではの演出が光る。さらに来栖や千晴の同僚たちの設定や描き方でも、“ドラマとしてのふくらみ”を作り上げている。
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「核となるのは、来栖をはじめとするCAと求職者の面談室でのやり取りですが、面談室の外で動くCAたちの展開に、物語のふくらみやおもしろさがあります。原作では同僚たちのサブストーリーや、キャラクター性が表現される要素は大きくはありません。でも今回、“ドラマとしてのふくらみ”で、それぞれの家庭環境や仕事への思い、これまでの人生を描かせていただいています。オリジナルの登場人物など、原作者の額賀先生が『ドラマ作品として、おもしろいものができれば』と快く了承くださって、かなり自由に設定させてもらっていますね」
舞台である転職エージェント『シェパードキャリア』を、観る人に職場として憧れを持たれる、楽しいチームにしたいと思ったという萩原氏。“大阪をホームタウンとするカンテレだから”というわけではないと思うが、「“ボケとツッコミ”として、どういう人が集まったら楽しいかを考えた」という。
「山口紗弥加さん（43）演じる広沢絵里香が職場のツッコミ役だとしたら、どんなキャラがボケとしているといいのか……。本作にボケ役として登場する山口守男の設定に“婚活にいそしむ、モテないおじさん”の個性をつけ、キャラクターを作っていきました。
そんな癒やし系のおじさんでボケキャラの山口を普段は大声で強めのツッコミをしている、おいでやす小田さん（45）が演じてくれているのもおもしろくて……（笑）。ボケというか、天然な感じでは完全オリジナルの登場人物で、藤原大祐さん（19）が演じる大学生アルバイト・犬飼翔の“抜けてるキラキラ感”みたいなのも、いい雰囲気を作っています」
楽しい職場というだけでなく“お仕事物語”の面では、前田公輝（32）が演じる営業のエース・横山潤也の人物像にも厚みを持たせた。
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「横山は、来栖に勝手にライバル心を持っている。嫌なヤツじゃないんだけど、ちょっとひねくれたところのある人物にしました。みんな仲が良いけど、ベタベタしているわけじゃない。一つの仕事を成功させるためのプロ集団として、職場にある“緊張と緩和”を作る上で必要なキャラクターの一人で、個性派が集まる職場としていい形になったと思いますね」
<div data-friday-nextpage-lead="ドラマから垣間見える転職業界のシビアな実態"></div>
『転職の魔王様』の特徴は、転職業界の実態や裏側が垣間見えることにある。来栖の率直すぎるセリフから、“転職ビジネスの本音と建て前”や“シビアな現実”が見えてくるのだ。
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「転職エージェントの方たちに取材し、『きれいごとじゃないけど、相談に来た人の人生がちょっとでも満足できるものになるように』といった熱い思いに触れたり、成約率が決して高くはないビジネスとしてのドライな部分で『決まらない人は、決まらない』と聞いたり、すごくシビアな世界だと感じました。
転職エージェントは学校のように、平等に求職者を扱うところじゃない。CAは親でも先生でも友達でもない。親身に寄り添って相手のことを考えるほど、厳しくならざるを得ないこともあるんだな……と」
本作を制作するにあたって、初めてCAと話したという萩原氏に一社会人としての感想を問うと「『自分には、あまり市場価値がないな』と思いました（笑）」と笑いつつ、等身大な心の内を語ってくれた。
「会社を辞めたいわけじゃないけど、この仕事が向いているか、向いていないか自分じゃわからないですよね。誰かに『向いているよ』と言われると、“そうかな？”と思うし、『向いていない』と言われたら、“そんなことない”って思う。
やりたいと思ってやっている仕事だから楽しいし、がんばれるけど、常にどこかで『違う道があるんじゃないか？』と考えてしまう。きっと多かれ少なかれ、たくさんの人が持っていると思うそうした感覚を改めて、見つめ直した感じがしましたね」
ドラマでは登場人物たちが、萩原氏と同じように“自分の本音”と向き合う。プロデューサーとして作品に込めた本質は、「『仕事』に向き合い、『人生』に向き合う、すべての人に届けます」という、今作のキャッチコピーの一部にも表れている。
「登場人物たちが人生や仕事を見つめ直して、救われる物語です。転職をするのか、しないのか、どの会社を選ぶのか。結局、自己責任で選ぶしかないし、正解なんてない。自分の本音と向き合って、自分で選び、決めていくしかない――というのが、大事な要素だと考えています。
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来栖が投げかける心えぐる毒舌は、耳ざわりはきついけどエッジが効いています。社畜キャラの千晴が人間として成長する姿、全話を通じて変化していく2人の関係性も楽しめます。エンターテインメントとしては1話完結で、毎話いろんな悩みを抱えた人たちが登場しますから、きっと視聴者のみなさんにも“自分に近い”と感じる人が見つかるはず。
このドラマは転職を勧めたいわけじゃなく、自分を見つめ直す作品。『違う道があるのかな？』と考えた時に、転職エージェントを活用する術を知ることができるし、過去に上手く活用できなかった人には『こう活用すればいいのか』と参考にもなるはずです。石田さん演じる洋子のセリフには、『仕事を選ぶことは生き方を選ぶこと』といった言葉が登場します。そうした“選ぶこと”や“決め方”のヒントを、このドラマが与えることができたら嬉しいですね」

鍬田美穂

関西テレビ

攻めてるドラマ作りで話題のカンテレ。最新作『転職の魔王様』でも色々な仕掛けが仕込まれている。担当プロデューサー自身、制作を通じて学ぶことがあったという。

「『転職の魔王様』のセリフがグサグサ刺さった」カンテレ担当プロデューサーの告白

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