映画『バービー』を公開中止に追い込んだ“九段線”…それでもハリウッド映画に映り込む理由 | FRIDAYデジタル

映画『バービー』を公開中止に追い込んだ“九段線”…それでもハリウッド映画に映り込む理由

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(ワーナー・ブラザースオフィシャルサイトより)
(ワーナー・ブラザースオフィシャルサイトより)

マーゴット・ロビー主演のハリウッド映画『バービー』がベトナムで公開禁止となったことが話題となっている。同作品はベトナムでは7月21日から公開される予定だったが、作品の中で映ってはいけない“あるもの”が映りこんでしまっていたため、当局が上映を許可しなかったという。一体何が映ってしまったのか。

「複数のメディアが報じたところによると、『九段線』が描かれた地図があるシーンに映っていたようです。九段線は中国が南シナ海に一方的に引いた自国の領有権を主張する線。

これが映っていたとしてベトナムで公開禁止となったアメリカや中国の映画やドラマは過去にもありました。’19年のドリームワークス作品『スノーベイビー』は公開後に映り込みが発覚して上映中止となったため、違反映像を見逃した政府の職員が懲戒処分になったほどです」(映画ライター)

また、6日にも韓国の4人組ガールズグループ『BLACK PINK』のベトナム公演を主催する会社が、自社サイトにこの九段線が描かれた地図を掲載していたとして炎上、謝罪するという騒ぎがあった。

九段線はU字線、または牛舌線とも呼ばれ、中国・海南島の南からベトナム沿岸を南下、南シナ海の奥まで達してから、今度はボルネオ島やフィリピン沿岸を北上、台湾の南まで至る9本の線だ。南シナ海のほとんどの部分を囲い込んでおり、各国と領土問題が起こっている南沙(スプラトリー)諸島や西沙(パラセル)諸島はここにすっぽりと入る。

元々は1947年に中華民国が勝手に決めた「十一段線」を現在の中国が引き継いだもの。なぜ2段減ってしまったのかというと、ベトナム戦争時、友軍だったベトナムに中国が便宜を図って、トンキン湾付近の2本を消したからだそうだ。

線で囲われた海域は豊かな漁場であり、天然ガスや石油などの資源も採れることから、当然ながら沿岸諸国であるベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア、ブルネイは猛反発、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所も’16年に中国の領有を認めない判決を出している。

「中国は判決に従うつもりはさらさらなく、スプラトリーやパラセルを実効支配しています。ベトナムはどちらの島々も固有の領土として領有権を主張しているだけでなく、中国とは地続きということもあって、他の国々よりも中国に対して神経質になっているのでしょう。

しかし、中国政府としてはすでに実効支配しているのにいたずらにベトナムを挑発して、その結果アメリカを刺激するのは得策と思っていないはず」(全国紙記者)

では、なぜ中国の“ローカルルール”であるはずの九段線が描かれた地図がハリウッド映画などに頻出するのだろうか。

「ハリウッドに近い中国人が中央政府への点数稼ぎとしてやっているとも言われています。また、『バービー』を制作したワーナーブラザースは中国進出を目的に’15年に中国の投資ファンドと合弁会社を立ち上げており、当局の顔色を窺わざるをえない立場です。

そうでなくても、中国の映画館のスクリーン数は8万を超えると言われています。アメリカのスクリーン数は4万です。’22年の興行収入も約5700億円と約9600億円の北米に次いで世界第2位。しかもコロナのために前年から36%も落ち込んでの数字です。アメリカがコロナで苦しんでいた’21年は世界1位でした。ハリウッド全体にとっても中国は魅力的な市場として意識せざるをえないのです」(前出・映画ライター)

フィリピンの場合は『バービー』作品中に出てくる九段線について、「架空の世界の話」と理解を示しつつも、誤解を防ぐためとしてぼかしを入れるという。

8月11日に日本で公開される『バービー』はどうなっているだろうか。

CIAが作成した地図に描かれている九段線(緑の線)。四角で囲まれたスプラトリー、パラセルの諸島がすっぽり入る
CIAが作成した地図に描かれている九段線(緑の線)。四角で囲まれたスプラトリー、パラセルの諸島がすっぽり入る

 

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