チャーター機費負担&FIFAから出場給420万円 過去最高待遇のなでしこジャパンが抱えるリスク | FRIDAYデジタル

チャーター機費負担&FIFAから出場給420万円 過去最高待遇のなでしこジャパンが抱えるリスク

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7月14日、仙台で行われた壮行試合で2011年優勝時の中心選手だった澤穂希さんから花束をもらう主将の熊谷紗希(写真:長田洋平/アフロスポーツ)
7月14日、仙台で行われた壮行試合で2011年優勝時の中心選手だった澤穂希さんから花束をもらう主将の熊谷紗希(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

サッカーの女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア&ニュージーランド大会が20日開幕した。22日の初戦でザンビア代表に5-0と快勝した日本代表「なでしこジャパン」は26日、第2戦でコスタリカ戦に挑む。

日本サッカー協会(JFA)は昨年、自社ビルを100億円以上で売却しても48億円、さらにその前年の’21年も17億円の赤字を出すなど懐事情は厳しい。さらにコロナ禍の影響でスポンサーの契約更新に大いに苦心したが、JFAは今回のなでしこジャパンに対して初めてチャーター便の費用を負担し、専属シェフもつけた。それとは別に、各選手は国際サッカー連盟(以下、FIFA)から勝っても負けても3万ドル(約420万円)が支給されるなど、なでしこジャパン過去最高待遇で本大会を迎えた。いったいなぜなのか。

田嶋幸三会長の公約だった「女子サッカーの強化と普及」

2011年ドイツ大会の世界一で日本中を感動の渦に巻き込んだ、なでしこジャパン。あの時は東日本大震災の直後で、日本が復興にむけて歯を食いしばっている中、一筋の希望の光をともすような快進撃でもあった。

「12年前と比べると最高の準備を整えてW杯に迎えます。なんといってもチャーター便ですよ。まさしく、オールなでしこエアウェイズ(ANA)で(現地に)行ける。これは最高。夢のまた夢でしたから」

笑顔を浮かべて人一倍感激していたのが、世界一に輝いたドイツ大会で指揮をとり現在、日本サッカー協会(以下、JFA)の女子強化のトップ、佐々木則夫・女子委員長である。

なでしこジャパンはこれまで大会が費用を出す形のチャーター便利用はあったが、今回はJFAが負担した。協会負担はチーム史上初である。

これはANAが今年2月27日から’26年12月31日まで、JFAメジャーパートナーというスポンサー契約を結んだ影響が大きい。JFAは今大会、男子A代表では常連の西芳照専属シェフの帯同も決めた。なでしこジャパンにとって異例の高待遇になる。

’11年W杯では澤穂希らの活躍が光り、なでしこジャパンは’世界一に輝いたが、あれから12年経過した最新のランキングは11位。アジアの中で見ても、オーストラリアに次ぐ2番手の位置に甘んじている。にもかかわらず、なでしこの待遇が上がったのは、’16年から協会のトップに立つ田嶋幸三会長の意向が大きく働いたからにほからない。

JFA田嶋会長は就任以来「女子サッカーの強化と普及」を任期中の公約の一つとしてあげてきた。あるサッカー担当記者はこう明かす。

「本来なら今回のW杯を日本で開催する予定でした。直前で大会招致から撤退せざるを得なかったんです

「直前」とは’20年6月、開催地決定のわずか3日前のことだった。田嶋会長にとっても女子サッカーの施策を大きく転換せざるを得ない決断だった。

この直前に発表されたFIFAのW杯開催候補地の評価レポートで今回のオーストラリア・ニュージーランド共催にトップを譲り、まさかの2番手に。当時、コロナ禍による不況であったことも重なり、スポンサー集めが不調だったことも大きく響いた。

W杯にむけた、なでしこジャパンの選出会見。田嶋会長(右端)の左手の背後に、自ら“営業”してスポンサーになってもらった読売新聞(黄色枠)が名を連ねている(写真:アフロ)
W杯にむけた、なでしこジャパンの選出会見。田嶋会長(右端)の左手の背後に、自ら“営業”してスポンサーになってもらった読売新聞(黄色枠)が名を連ねている(写真:アフロ)

’21年9月に開幕した、女子プロサッカーリーグの「WEリーグ」のスタートも田嶋会長の悲願だった。「なでしこジャパンを強くすることを第一に考えている」からこそ女子サッカーの普及にこだわり、プロリーグを発足させた。

「この女子リーグを通じて日本の社会を変えていけないだろうかということを提案したい」とした上で、「JFAは女性の社会進出なども常に考えている」と事あるごとに主張してきた。

ここ数年は毎年、数億円をなでしこ強化や女子サッカー普及の資金として「投資」してきた。ところが、コロナ禍が拍車をかける形でJFAの年間予算が厳しくなり自社ビルの売却を余儀なくされた。そんな状況の中で始まったスポンサーの更新契約交渉で、’07年から日本代表チームのスポンサーをしていた朝日新聞の撤退が決定。JFAはこの事態を想定していなかったという。

「代わって契約したのが読売新聞でした。朝日とは真逆の主張をする新聞社と契約したので、サッカー関係者の間でもおおいに話題になった。これは田嶋会長と読売新聞の社長であり、巨人軍オーナーでもある山口寿一氏との〝トップ営業〟で決まった契約と言われています」(前出の担当記者

田嶋会長は「何しろ巨人、大鵬、卵焼きの時代に育ちましたから、巨人のV9時代の打順は今でも言えます」と明かすほど大の巨人ファン。山口オーナーとはいつしか信頼関係を構築し、巨人軍の激励会にも招待を受ける関係になった。このトップ営業によるスポンサー契約について、JFAや読売新聞の担当者は決まる直前まで知らされていなかった。

田嶋会長が公約として掲げた女子サッカーの地位向上は、FIFAも男女の待遇差改善という形で具体的に示している。

「女子W杯の賞金総額は’19年大会(フランス・出場24ヵ国)では3000万ドル(当時約33億円)だったが今大会では選手たちに支払われる賞金は1億1000万ドル(約154億円)になる」(FIFAジャンニ・インファンティーノ会長)

出場選手には少なくとも1人3万ドル(約420万円)が出場給として支給される。これを聞いた、’11年W杯で世界一に輝いたなでしこOBの一人は「私たちの時はこんなにもらっていません」と苦笑いだった。

協会が資金不足に悩み、田嶋会長が自ら金策に奔走。それにもかかわらず、チーム史上最高の待遇を受けてW杯本大会に挑むなでしこジャパン。当初、ベスト8としていた目標も「優勝」に上方修正した。その分、負ければ日本での女子サッカー人気は地に落ちる。そんなリスクを背負ってピッチに出るなでしこ戦士たちは、将来、女子サッカーが発展するか、地盤沈下してしまうかの運命を握っている。

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