<figure id="attachment_323602" aria-describedby="caption-attachment-323602" style="width: 3280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d630bb3b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/2a9814dba5f6192b9e817107e399bf54.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-323602" class="wp-caption-text">橋本愛喜（はしもと・あいき）ライター。大阪府出身。父親が経営する工場でトラックドライバーとして日本各地を走る。現在は主に社会問題やブルーカラーの労働問題などについて取材・執筆している</figcaption></figure>
<p>トラックと聞いてまず思い浮かぶのは、あまり良いイメージではないのではないだろうか。運転していて前に入られると前方が見えなくなってイライラする、しかもノロノロ走られるとさらにイライラは増す。路肩にでっかい車体が駐車していて邪魔だったりもする。テレビのニュースで高速道路のSAやPAで車の中で酒盛りをしているシーンなどを見たことがある人もいるだろう。</p>
<p>だが、そのトラックドライバーに対する悪いイメージには、多くの誤解があると言うのは物流などブルーカラーの人たちの現場の声を取材し続けているライターの橋本愛喜氏だ。『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路』の著者であり、自身も元トラックドライバーだった橋本氏にわれわれがトラックドライバーに対して抱く多くの“誤解”や、現在クローズアップされている2024年問題などについて、語ってもらった。</p>
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<p><span class="strongInContent">「まず一番に解きたい誤解は、世間の人が対面するトラックドライバーって、やっぱり宅配のドライバーなので、物流イコール宅配っていう感じになっていること。2024年問題に関する報道でも宅配業がクローズアップされていることが多いですが、宅配は輸送量でいうとすべての物流の中で７％にも満たない。ほとんどの部分を企業間輸送が占めています。</span></p>
<p><span class="strongInContent">企業間運送のドライバーさんって、直接消費者と触れ合う機会がない。でも、企業間輸送のドライバーさんの労働環境がここまで悪くなったのは、まさにその見えない化が原因です。 存在が見えれば、もっと色々変わってくると思うんですけど、一般の人が企業間輸送のトラックドライバーを意識するのって、残念なことに路駐していたり、ノロノロ運転してて邪魔だなとか、そんなところばかりなんです」</span></p>
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<p>ドライバーの労働環境が長時間で低賃金という過酷な状況である原因の一つには、業界の「荷主至上主義」という慣習がある。ドライバーにとって荷主からの指示は絶対で、言うなりになるしかないらしい。ノロノロ運転や路上駐車の原因もそこにあるという。</p>
<p><span class="strongInContent">「段ボールなどの梱包材がちょっとでも傷ついたら、返品になるケースもあるんです。もちろん中の商品にはまったく傷はついていません。でも返品になるということは多い。返品だけならまだしも、ドライバーが弁償させられる。下手するとパレットごと全部買い取りなんですよ。さらに理不尽なのが、弁償させておきながら、その荷物は渡してくれないんですよ。ある荷主さんに、なんで？って聞いたら、メルカリなどで売られて非正規で流通しちゃったものの責任を取れないからって言うんですね。</span></p>
<p><span class="strongInContent">また、コンビニのカップ麺とか飲料とかが入っている段ボールは、糊がちょっとでも剥がれてめくれていたら返品させられたという話も。それもドライバーの責任じゃないこともすごく多いんです。何回も積み替えているし、長時間荷台で 揺れていたら少しぐらい段ボールが潰れたり、糊が剝がれたり黒く擦れたりするわけです。だから、トラックがノロノロと運転することがあるのは交通事故を起こさないためだけでなく、こうして荷物が傷つかないようにするためでもあるんです」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="“飲酒問題”に隠された事情とは…"></div>
<p>路上での迷惑駐車も暗に荷主が指示しているのも同然だという。呼ばれたらすぐに来られるところで待っているように言われたら、路上に停めているしかないのだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「それで切符を切られるのはドライバーなんです。そういうのを直さない限り、ドライバーの労働環境っていうのは改善しません。でも、業界そのものに閉鎖的なところがあるので、 ドライバーさんへの理不尽も今まであまり外に出てこなかった部分はあります。もしもドライバーさんが文句を言ったら、『じゃあいいよ、ほか探すから』って一蹴されちゃうという、ガッチガチの上下関係がありますから」</span></p>
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<p>SAやPAで見かける車内での酒盛りにも実は事情があった。</p>
<p><span class="strongInContent">「トラックドライバーは酒を飲まないに越したことはありません。が、あれは法的には必ずしも悪いものとは言えないんです。というのも、長距離トラックドライバーさんは、１～２週間、車中泊して家に帰らずに各地を回りながら仕事してます。１日の仕事が終わると、次の日の始業までは連続最低８時間休まなきゃいけないっていうきまりがあるんです。 その８時間は、彼らは家に帰ったのと同じことになっているんですが、実際に家には帰れない。車内が家なので、飲酒する場所も車内になりがちなんですよ。</span></p>
<p><span class="strongInContent">ただ、SA、PAだったら店で飲めよって私は思います。やっぱり車内だと公私混同しちゃうんですよね。車は自分の城なので、仕事する場所も、寝食する場所も、全部キャビンの中。冷蔵庫とか電子レンジを入れてる人もいるわけですよ。 すると、 冷蔵庫にはキンキンに冷えたビールがあるわけです。特にこの暑い夏のなかだと汗をかいて仕事をするドライバーには終業後のお酒を楽しみしている人も多いですが、公私混同すると、走っている時にその冷蔵庫の中のビールが気になる人も出てきちゃうんです」</span></p>
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<p>また、睡眠時間が短く不規則なため、寝酒をする人も少なくないという。酒とある意味非常に相性が良くなってしまう職業ゆえに、公私混同が進むとアルコール依存にも陥りやすい。だからこそ、毎日お酒を飲まないとやってられない人はトラックドライバーになるべきではないと橋本氏は言う。</p>
<p>「実は簡単な仕事じゃないんですよ、トラックって。人を殺めてしまう乗り物なので。その割にはあまりにも社会的地位が低すぎる。お酒と仕事との距離を取らなければならない他の仕事には医者やパイロットがありますが、彼らとのステータスの違いは明らかです。労働環境が悪いから飲んでないとやってられないっていう人だって、そりゃ出てきますよ。でも、だからこそお酒と距離を取らないといけないと私は思うんです」</p>
<div data-friday-nextpage-lead="コロナ禍でも起こった理不尽"></div>
<p>ふだんはわれわれ一般人には見えにくい存在である企業間輸送のトラックドライバーたちにスポットが当たったのがコロナ禍での緊急事態宣言下だった。社会基盤を支えるエッセンシャルワーカーとして、高速道路の表示板に「物流を支える皆様ありがとう」などのメッセージが出され、ドライバーたちも喜んでいたという。だが、その一方で彼らの労働環境はさらに劣悪なものになってしまったようだ。</p>
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<p><span class="strongInContent">「エッセンシャルワーカーは、ワクチンを優先的に打てるはずが、ドライバーさんは長距離の人だと１～２週間に１回しか地元に戻らない。あの当時、予約がなかなか取れない中で、２回目のブースターまでスケジュールを合わせるのは実質的に無理。だから、一般接種よりも遅れて空いた頃に打っていた人が多かった。</span></p>
<p><span class="strongInContent">あと外出自粛要請でSA、PAが一斉に閉まって食事をする場所がなくなったり、GSのシャワールームやトイレも使えなくなるわで。とにかく理不尽なことが多かったです。頑張れって言うんだったら、国ももう少し頑張りやすい環境にしてあげてほしかったなと思います」</span></p>
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<p>最近話題になっているのが『2024年問題』だ。働き方改革の一環で2024年４月から長時間労働であるトラックドライバーの労働環境を改善するために、時間外労働が年間960時間までに制限される。これによって荷物の３割が届かなくなる可能性があると言われている。ドライバー不足やドライバーの収入減も深刻だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「ドライバーさんの労働環境は長時間労働と低賃金がセットで問題になっているのに、国は一生懸命に労働時間だけ減らそうとしているわけです。多くのドライバーさんの給料は歩合制なので、働く時間が減ると収入は激減します。</span></p>
<p><span class="strongInContent">トラックドライバーの平均年齢は50歳ぐらいですが、転職できる最後の機会かもしれないって言って転職先を探し始めちゃっている人もいる。副業でUber Eatsをやり始めようとしている人もいるんです。本来は休ませなきゃいけない働き方改革なのに、さらに働かせるのは本末転倒です」</span></p>
<p>労働時間を減らすというルールが一人歩きすることによって、労働環境が悪化してしまうことはまさに本末転倒だ。労働環境の改善のためには先に出てきたような理不尽が無くなるように荷主の理解が不可欠。何より賃上げのためには運賃の上昇が大前提だ。そのためには、日々、休むことなく荷物を運び続けるトラックドライバーにわれわれ一般消費者が思いをはせることが大事なのかもしれない。</p>
<figure id="attachment_323604" aria-describedby="caption-attachment-323604" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6d1f9d16"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/85d254261bd26c09e07aab61da5d5566.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-323604" class="wp-caption-text">パーキングエリアで休憩中のトラック。長距離を走る彼らにとってトラックは“家”でもある</figcaption></figure>
<p><a href="#" data-ident_hash="2781bbfa"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/96835669bc9c38dfd9a62238de3033b3.jpg" alt=""></a></p>


濱崎慎司（橋本さん）

トラックドライバーに対する悪いイメージには、多くの誤解があると言う元トラックドライバーでライターの橋本愛喜氏。彼女に「ノロノロ運転」「飲酒運転」の事情や業界を揺るがす「2024問題」について聞く。

元トラックドライバーライターが打ち明ける『2024年問題』以前に理不尽さ山積みな現場の事情

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