味覚障害やブレインフォグ…「新型コロナウイルスの後遺症」と勘違いして見落とされる「恐ろしい病気」
一時期は1日で数万人単位の感染者が出ていた新型コロナウイルス。現在はワクチン接種が普及してかなり落ち着いてきた。そんななかで、今問題になってきているのが、新型コロナウイルスの後遺症による問題だ。
味覚障害やブレインフォグなどの新型コロナウイルスの後遺症の症状がよく知られるようになったことで、病気がかなり進行するまで病院を受診する人が減っているうえに、医師も新型コロナウイルスの後遺症と勘違いして、正しい診断ができないケースが増えてきているという。
これまでは、味覚の異変やブレインフォグのような認知障害があらわれるとすぐに病院に行く人が多かったが、最近では新型コロナウイルスの後遺症と勘違いしてしまい、病院の受診が遅れることが多い。
そして、受診したとしても、味覚障害やブレインフォグと呼ばれる症状は他の病気の症状と見分けがつきにくいため、「これはコロナの後遺症だから様子を見ましょう」と言われて診察が終わることもある。
神奈川県で病院を経営している内科医は、この現状を次のように分析している。
「甲状腺機能亢進症や副腎皮質機能低下症、糖尿病などの症状は新型コロナウイルスの後遺症とよく似ているため、受診が遅れたり診断ミスが起きたりして病気が進行してしまうケースをこれまで20件以上は見てきました。新型コロナウイルスの後遺症で受診された方の1割程度はそういう方がいらっしゃるので、気を付けてもらいたいですね」
これらの病気は、よほどのことがない限り命にかかわることはないが、症状が進行してからだと、治療にかなりの期間が必要になるため、注意が必要だ。
こうしたケースが多くなるのはコロナによって人々の生活習慣が変わったことも起因している。
新型コロナウイルスの影響で、発熱したその日に病院に行くことが難しくなったり、健康診断の機会がなくなったりしたことで、病気の早期発見が難しくなっているのだ。
「新型コロナウイルスの影響で会社での健康診断がなくなったり、熱が出ても高熱でなければ家で治そうとする人が増えたりしたので、その影響もあると思います。デルタ株が流行しているときはこのようなケースはあまり起きなかったのですが、オミクロン株が増えている今、後遺症の症状も変わってきています。そういったこともあって、医師が診断ミスをすることが増えているのかもしれません」(同)
このようなことにならないためにもかかりつけの医師を持ち、きちんと相談ができる病院を持つことや、症状がなかなか治らないときにはセカンドオピニオンに頼る姿勢が大切だ。
- 取材・文:白紙 緑