「連絡を受けたことさえない…」葉山町の 超有名アパレルがリゾートホテル建設で地元住民と大モメ中

皇室の別荘として有名な葉山御用邸（神奈川県）のお膝元で、有名アパレルブランドのホテル建設に住民から怒りの声が上がり、トラブルとなっている。

葉山町で森戸海岸を望む地上３階地下１階のリゾートホテルの開発を進めるのは、全国に130店舗以上を展開する株式会社『トゥモローランド』だ。

しかし、その建築を巡っては住民たちから抗議運動が起きている。’21年11月には近隣住民170人による反対署名がトゥモローランド側と葉山町役場に提出された。建設が始まって以降も反対運動は続き、今年２月には神奈川県開発審査会に開発許可処分の取り消しを求める審査請求書が提出され、５月には葉山町長と住民との面談が開催されている。

なぜ住民たちは強固に建設に反対するのか。運動に参加するＡ氏が語る。

「一番の問題は国が定める『都市計画法』に違反していることです。神奈川県では開発区域が１０００㎡以上の場合、建物を通り、県道などの幹線道路に接続する道の幅を４ｍ以上確保する必要があります。ホテルの開発区域は約２２００㎡ありますが、実測で幅４ｍに満たない箇所が複数、存在している。

また葉山町が定める『まちづくり条例』では、景観の維持や安全性の観点から、道幅を６ｍ以上にするように規定しています。工事のせいで、多い日では一日で25台もの大型トラックが基準を満たしていない道路を通行し、住宅街を往来します。建物部分の建造はまだ先ですが、今後は建設音などの騒音も懸念される。生活への影響はとても大きいです」

静かな海辺の街に、巨大なホテルが開業する。完成後は景観への懸念や、観光客の急増によるトラブルの増加を住民は危惧しているという。

一方で、トゥモローランド側はFRIDAYの取材に対し、「葉山町まちづくり条例で定められている特定開発事業にかかる手続きを全て適切に完了した」と回答した。しかし、その手続きの過程にも問題があった可能性があるという。葉山町議会の金崎(かなさき)ひさ町議が明かす。

「建設計画の過程で町に提出された報告書に、偽装疑惑が浮上しているのです。’22年１月に企業から葉山町に提出された中に、ホテルの敷地前道路拡幅の意思確認を行った書類（下写真）があるのですが、調べてみると複数の住人は企業側から連絡を受けたことさえないというのです。これらの報告書を基準にして工事を認可しているわけですから、そこに虚偽があるとなれば、由々しき問題です」

この疑惑に対し、トゥモローランド側は知人を介して回答を得たという旨の説明をしたうえで「全くの事実無根です」と否定。また、計画が持ち上がった’19年12月から２年以上をかけて説明会を行ってきたといい、さらに昨年７月からは近隣住民の要望に応じて土曜日の工事を休止するなどの対策も講じてきたという。

反対運動が続く中、建設工事は現在も行われている。金崎町議は「認可した山梨崇仁(たかひと)町長の責任も大きい」と糾弾する。

「反対署名が出ていることも、道幅が６ｍ未満であることも知ったうえで、町長は『特例承認』を出して、認可をしています。さらに報告書の疑惑まで出ている中で、早急な対応を求めていますが、いまだに明確な回答はありません」

Ａ氏も憤りを露(あらわ)にした。

「７月にも工事車両が使用する道路で、水道管の破損が発生しました。原因は不明ですが、私は重たいトラックが出入りしたことが一因であると考えています。今回のような開発がまかり通ってしまえば、今後もこの町で景観や近隣住民への配慮を欠いた開発が続きかねません。それだけは避けなければいけません」

８月には住民の反対デモも予定されているという。両者の溝は広がるばかりだ。

『FRIDAY』2023年8月4日号より