<h3><span class="strongInContent">「“考えたくない”とか言っている場合じゃない展開に…」</span></h3>
<p>ジャニー喜多川氏の性加害に関する報道が止まらない。そんな中、「なぜジャニーズのファンは批判しないんだろう」「ジャニーズファンも知っていたはず」「ファンも加害者」といった指摘もSNSなどでは多数見られる。</p>
<p>では、ジャニーズファンはこの問題をどのようにとらえているのか。ジャニーズファンの緊急座談会を行った。</p>
<ul>
<li>Aさん（女）：編集者。事務所の「箱推し」を経て、Jr.ユニット「少年忍者」ファン。</li>
<li>Bさん（女）：メディア関係者。A.B.C-Zの戸塚祥太ファン。</li>
<li>Cさん（女）：メディア関係者。嵐ファンを経てJr.ユニット「少年忍者」ファン。</li>
<li>Dさん（男）：編集者。Hey！Say！JUMPファン。</li>
</ul>
<p><em>注：本文中に実在の人物名が登場しますが、あくまでファンの方個人の見解・認識で、事実を記したものではありません。</em></p>
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<figure id="attachment_324240" aria-describedby="caption-attachment-324240" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="11a1cc6c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/a3c49ca6e8b27d7dec82a6d907f35cda.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-324240" class="wp-caption-text">ジャニーズ事務所の性加害問題は、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の専門家による当事者らへのヒアリングが行われるという事態に…。写真は’19年７月、ジャニー喜多川氏の死去を伝えた街頭テレビ（PHOTO：共同通信）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">知っていたと思うけど、信じない・見ないようにしていた…</span></h3>
<p>A <span class="strongInContent">ジャニーさんの性加害問題をファンは正直、知っていたと思うけど、信じない・見ないようにしていたというのが私自身のスタンスだったなと思います。実名での最初の告発本『光GENJIへ　元フォーリーブス北公次の禁断の半生記』（データハウス/’88年）を読んだ頃は、やばいと笑っていましたし、裁判があったことも知っています。それでも晩年は性加害のようなことはないだろうと思っていたんですね。</span></p>
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<p><span class="strongInContent">それに、ズルいけど、「自担（自分の担当、推し）は大丈夫だろう」と思っていました。ただ、舞台で海パン姿の少年たちが水浴びする演出など、理解を超えた特別な世界を作り出すジャニーさんという人の頭の中に興味があったのは事実です。</span></p>
<p>B 私も当然知っていたし、暴露本も読んでいましたけど、自担（A.B.C-Z　戸塚祥太）がとにかくジャニーさんのことが大好きで、いつもジャニーさんがいかに面白くて素晴らしい人かについて語っていたんですね。初代ジャニーズの軌跡を舞台化した「ジャニーズ伝説」で、A.B.C-Zは『You…』という歌を歌っているんですが、これは、どつよ（堂本剛）さんがジャニーさんのことを思って作った曲なんです。</p>
<p>そんなふうに、私は自担から発信されるジャニーさんへの愛を一身に浴びてきました。ジャニーさんがJr.に性的な行為を…というのは「あるかも…」と思いつつも、ジャニーさんとジャニーさんを称えるアイドルたちの世界が好きだったから、そことは切り離して考えていた感じですね。</p>
<p>だから、こうして性加害問題が表面化して、バッシングされ、「ジャニーズもファンも異様だろ」みたいな声が聞こえてきたときに「本当にそうだよね」としか言えない状態になってしまっています。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="やっぱり「あるだろう」と…"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<p>A <span class="strongInContent">やっぱり「あるだろう」とは思っていましたよね。</span></p>
<p>B そうですね。それに私、’10年代に在籍していた元ジャニーズJr.から、「実際にあった」とか「今もあるだろう」と聞いたこともあって…。でも、自分の中でそれほど問題視していませんでした。その子もそういった行為をされたと言いつつ、「ジャニーさんが大好き」と言っていたので。</p>
<p>C 私がすぐに思ったのは、この話題については考えたくないし、情報もシャットアウトしたいということでした。だから、BBCで取り上げられたときに近年の他事務所で報じられたセクハラ・パワハラの問題なども頭をよぎり、「大変なことになった」感はありましたが、ジュリーさんが出てきてそこで終息するかと思ったんですよね。</p>
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<p>でも、事態が思いのほか大きくなり、考えたくないとか言っている場合じゃない展開になってきちゃったので、本当はそらしたいけど、自分の顔を一生懸命そちら側に向けさせている感じです。</p>
<p>D 向けたくないけど、向けざるを得ない感じですか。</p>
<p>C そう。暗く深い沼に今ずぶずぶ足が沈んでいっている感覚で、立ち上がるためにもちゃんと見て、自分の考えをまとめて、今後どういう風にジャニオタとして進んでいくかを考えないとヤバイと思っています。</p>
<p>私はこれまでアイドルの物語の１つとして、そういう後ろ暗い部分も消費していたと感じています。だから、情けない話ですけど、そうした物語が現実になったらあたふたしちゃって。</p>
<p>A  <span class="strongInContent">最初に実名顔出しで告発したカウアン・オカモトさんも、一時の激推されぶりを思い返すと、妙に腑に落ちるところはありましたが。</span></p>
<h3><span class="strongInContent">さすがに昔みたいなことはしていないだろうと…</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>C 私はまさか性加害がカウアン世代までというのは、大きな衝撃でした。Aさんと同じで、自分の担当しているグループはセーフみたいに都合よく思っちゃっていたから。</p>
<p>B 私は正直、「絶対に何かやられていただろうな」と思っていた子が何人かいます。普通に考えれば、性虐待でしかないんだけど、「ベールに包まれた、その人たちにしかわからない世界がある」と感じていたんですよね。アイドルは、自分とはかけ離れた、素晴らしい才能を持った別世界の人たちだと認識していました。</p>
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<p>しかも、ジャニーズって、親やお姉ちゃんとかに勝手に履歴書を送られた人が多いですよね。私の好きな（嵐の）大野（智）くんも、とっつー（戸塚）もそうなんですよ。彼らはオーディションに参加したり、Jr.としてコンサートに出演する中、最初は「なんでこんなことしなくちゃいけないんだろう」と思っていたそうなんですが、そこで才能が“発掘”されてしまった。</p>
<p>それで私は、彼らのことを“運命に逆らえなかった、選ばれし人たち”“ここでしか生きられない、特別な人たち”として見てしまっていたんです。だから、ジャニーさんと何かあったかもしれないとは思いつつも、一般常識は通用しない、特別な関係みたいに思っちゃっていて。普通に考えたらめちゃめちゃやばいことなんですけど。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="実在の人物というより…"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<p>A <span class="strongInContent">実在の人物というより、フィクションの世界に近いぐらいの距離感というか？</span></p>
<p>B 私は完全にそう。タレントのことを、自分と同じ人間だと思っていなかったんだなと思います。</p>
<p>D 性加害的なことがあることは『光GENJIへ』を読んでいた40代以上の人はもちろん知っているし、文春の裁判もありましたし、10代～20代などの若い人もうっすらとは知っていたと思うんですよね。</p>
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<p>その一方で、ジャニーズを追っかけることとはどこか別ものみたいなところがあって。特に、みんな「ジャニーさん大好き」と口を揃えて言うのは、KinKi Kidsや中居（正広）くんがジャニーさんの真似をして、テレビで面白トークとして披露していたことも影響している気がするんですよね。</p>
<p>『光GENJIへ』で告発された人とは別の、愛すべき面白おじさんというキャラクターが、どこかフィクションの存在のように日本人の間で浸透していった。そうしてお茶の間でも愛されていった土台が20年以上にわたって作られていったところがあるので、過去に性加害の問題があったことに蓋をするわけじゃないけど、別ものとして切り離して歩んでいったのかなと。</p>
<p>その一方で、オキニ（お気に入り）とかスぺオキ（スペシャルお気に入り）と言われる子もずっと存在していて、どういう条件でどう愛されているのかも、うっすら想像もするけれども、「ジャニーさんの膝の上にのっている」といったレベルであって。僕自身、ジャニーさんはご高齢だったから、さすがに昔みたいなことはしていないだろうと、自分を騙すわけじゃないけど、安心感で追っていたところはあります。</p>
<figure id="attachment_324241" aria-describedby="caption-attachment-324241" style="width: 5311px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1bf73824"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/9b6592a44d3e3cb868910d443a044cde.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-324241" class="wp-caption-text">彼らのことを“運命に逆らえなかった、選ばれし人たち”“ここでしか生きられない、特別な人たち”として見てしまっていたんです…（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">グルーミングだと言われるのが一番しんどかった</span></h3>
<p>A <span class="strongInContent">マスコミは自分たちがこの問題をスルーしてきたことについて、「男性同士のことだから」というフレーズを免罪符のように使っていますよね。男性の目から見て思うこと、ありましたか。</span></p>
<p>D 男性同士の恋愛などは当然あるけれど、問題は一方的にされていたことと相手が未成年だということですよね。一連の報道で、若手女優やアイドルに使われがちな「枕営業」という言葉はたぶん１回も出ていないと思うんですね。</p>
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<p>もしかしたらジャニーさんを利用しようと思ったJr.だって、中にはいたかもしれないけど、同性だからということと、少年だからということが、特殊な世界にしてしまっていたことが、一番大きな問題なんだろうなと。</p>
<p>A <span class="strongInContent">私の場合、いわゆるオキニ、スペオキへの露骨な寵愛ぶりを、面白がって見てしまっていたところがありました。それでいて、ジャニーさんの晩年になると、SMAPや嵐のように誰でも知っているグループや個人が生まれなくなっていったのも「ジャニーさんが年を取って、神通力みたいなものがなくなって、世間と合致しなくなった」みたいにとらえてしまう節もあったんですね。特別な力のように見てしまっていたんです。</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="オキニとされる人には独特の光と共に闇の輝きが…"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<p>D やっぱりオキニとされる人には独特の光と共に闇の輝きもあって、ジャニーズが好きな人には、その闇の輝きを美しいと感じてしまう感覚がどうしてもあるんだと思います。</p>
<p>C ジャニーさんに手を出されたことによって生まれる後ろ暗さみたいなものがジャニーズの魅力の一つにあると指摘する人もいますが、私もまさにそこを美化しちゃっていたんだと思います。タレント自身ももしかしたらそういう風にして美化して処理しているのかもしれないですけど。ただ明るいだけでは物足りないと思ってしまう面は否定できないですね。</p>
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<p>B ただ明るいだけだったら、他の事務所のタレントと同じというか。ジャニーズにしかいない男性タレントというのは、確かに存在したと思います。 それがジャニーさんの寵愛を受けることによって生じるものなのかどうなのかは別だとは思うんですが。</p>
<p>A <span class="strongInContent">性被害に遭っている子たちがみんなジャニーさん好きだった、ジャニーさんに感謝していると言いますよね。だから良いというわけじゃないですが。</span></p>
<p>C それは「グルーミング」だと指摘されると、もう何も反論できなくなっちゃうんですよね。事務所を擁護したいわけでもないですけど、ジャニーさんのオキニとか言われ、本人もジャニーさんのことを好きだといつも言っていたタレントのことを他者が「被害者」としてしまうと、本人はジャニーさんに抱いてきた愛情や好意、さらにこれまでの自分自身のジャニーズでの活動をどうとらえたら良いんだろうと。</p>
<p>被害者で、グルーミングされていたからと言われてしまうと、もう気持ちが追いつかないですね。ジャニーズ全体、誰かに向けてきた愛情表現が全部グルーミングゆえなのかとなってしまうんですよね。</p>
<p>B 私はグルーミングだと言われるのが一番しんどかったな。その一言で片付けられないものをずっと感じてきたから。</p>
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<p>その通りのところも実際にあるので、「グルーミングじゃないよ」と言えないのが余計にしんどいところ。その一方で、自担のジャニーさんに対する愛を全て否定してしまうのも辛い。私、この騒動が起こってから、とっつーの精神状態はどうなっているの？　と心配で。</p>
<p>私は「とっつーはジャニーズのことが大好きで、ジャニーズであることに誇りを持っている」と、ずっと感じてきました。しかもとっつーは舞台でジャニーさん役を演じてもいるんです。入所してから20年以上、彼の精神的支柱になっていたであろうものが、全てぐちゃぐちゃになってしまったのではないか？　と思うと……。被害者のことを一番に考えなければいけないのはもちろんだけど、自担のことがすごく心配になってしまう。</p>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-start"></div>
<p><a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/324243" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="strongInContent">■【後編】「『私たちファンは結局どうすべきだったのか…』ジャニーズファンが語る『私たちの贖罪』」</span>に続く</a></p>
<div class="expapp-no-provided-scope expapp-no-provided-scope-end"></div>


田幸和歌子

ジャニー喜多川氏の性加害の報道が止まらない。そんな中、「なぜジャニーズのファンは批判しないんだろう」といった指摘もSNSなどでは多数見られる。ジャニーズファンはこの問題をどのようにとらえているのか。

「私たちも、このままでは前に進めない…」ジャニーズファンが語る「私たちの贖罪」

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