「細くて女性の庇護欲を駆り立てる男」しか需要がなく…歌舞伎町で「マッチョバー」がすぐに潰れるワケ | FRIDAYデジタル

「細くて女性の庇護欲を駆り立てる男」しか需要がなく…歌舞伎町で「マッチョバー」がすぐに潰れるワケ

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

ホストにキャバクラ、デリヘルや女性用風俗など、歌舞伎町ではありとあらゆる水商売や風俗店が軒(のき)を連ねる。そんな中、歌舞伎町に唯一ないのが「マッチョバー」だ。マッチョバーといえば、筋骨隆々とした男性たちが、客に酒を振る舞い、カウンター越しに筋肉を触らせる店である。かつては歌舞伎町にも1店舗存在したが、3年と持たずに閉店してしまった。

柑橘系サワーは目の前で果汁を手搾り。客のほとんどが二人組の女性客だという
柑橘系サワーは目の前で果汁を手搾り。客のほとんどが二人組の女性客だという

「歌舞伎町って基本的に色恋を売る街だから、細くて女性の庇護欲を駆り立てる男がモテる。ここではマッチョってほぼギャグとしてしか見られないんです」

そう語るキャバ嬢のミユキ(仮名・23)は歌舞伎町で働き始めて3年になる。しかし、マッチョな男性のエロさやトキメキを買える店には出会っていないという。

「歌舞伎町だとマッチョの居場所はないですよ。強(し)いて言えばサパーかな。サパークラブだと、店内にはステージがあって、ショーでお客様を盛り上げてくれる。店員は男女どちらもいて、客がショーに参加することもあります。太った店員がレオタード姿でシャンパンを一気飲みしたり、BGMに合わせて下半身を露出して、男性器を業務用ドライヤーでブンブン回したり……。芸人の裸芸に近いです」

客層も幅広く、夜職がアフターで行くこともあれば、経営者の接待などで使われたりもする。比較的安価なのも特徴だ。

歌舞伎町を追われたマッチョが行き着いたのは、新宿から電車で15分の中野。

「ハイボールお願いしマッスル?」

繁華街から外れた雑居ビルの一室にあるマッチョバーでは、マッチョと女性客たちがひしめき合い、店の外にも連日行列ができる。カウンター席とボックス席があり、狭い店内を10名ほどのマッチョたちが縦横無尽に動き回っている。

客は30分1500円で飲み放題だが、同席した店員に飲ませる酒は客が別料金で負担する。客は入店時に1000円で10マッスル$のチップを購入。チップを使って、ハグや床ドン、お姫様抱っこなどさまざまなオプションがつけられるという。なかでも一番人気は、15マッスル$の「マッスルお注射」。キャストが客の膝に跨(またが)り、腰を振り、抱きしめながら注射器に入ったドリンクを飲ませる。

「正直言って、売れるには筋肉よりも顔ッスね。指名制度はなく、どのお客さんを接客するかはキャスト個人が決めています。通い詰める女性もいますが、その場限りの盛り上がりを求めて来る人が多い」(キャストのナオ・仮名・22)

元ホス狂で、現在は二次元の推し活にハマっている人妻のアイコ(仮名・27)もマッチョバー利用者の一人だ。

「私は二次元の推しの顔をコピーして、それをマッチョの顔に貼って、写真を撮ってます。好きなキャラが三次元に出てきた感じがして満足です。自分にいろいろやってくるのは別にいらないかな」

アイコ曰(いわ)く、ホストとマッチョバーでは、客層も楽しみ方も相容れないという。

「ホストクラブよりもライトに楽しむ人が多いです。ぴえん系はほぼおらず、OLっぽい人ばかり。ボーイズバーが〝マッチョ〟という皮を被って、距離感の近い接客をしているイメージですかね。ホスト以上に徹底的に外見を売っていて、疑似恋愛ではなく、接触によるドキドキを楽しむ。表面的な付き合いを前提としているので、気兼ねなく推しのイラストを彼らの顔に貼り付けられます」

殴り合いをすれば確実に強いマッチョたちだが、歌舞伎町の原理では華奢なホストたちのほうが圧倒的強者なのだ。

佐々木チワワ
’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中

FRIDAY2023811日号より

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事